第128話 笑いこけるひと
文字数 1,441文字
「シャムが大笑いしてるところ観てみたいな」
「いいよ」
第二十九番札所 摩尼山 宝蔵院 国分寺
土佐国分寺といえば有名だよね
「ところでどうしたらシャムは大笑いするの?一発ギャグとか?」
「ううん。簡単。呪文があるんだ」
「呪文?」
「そう。簡単だよ、わたしが言うから繰り返してね。クアロイイシダテイルヤモヲヤオアトイシシタテバルシモョヤカアライトシツテキルトモオヤカアカイケシテテヒルスモイヤヲアヒイロシッテタルカモイヤガアンイマシデテアルルモイヤタアケイドシツテイルゾモミヤツアカイラシズテラルーモメヤンアデイモシタテベルテモカヤエアロイウシカテナルムモナヤシアイイカシラテルモヤ」
「え、ええ?」
「はいっ」
「ええええ?」
突然ガソリン車の排気音がわたしたちの背後から聴こえてきた
「あ!アンタは!」
お遍路をスタートしてほどなくして鉄錫杖をアスファルトにズシとめり込ませて闊歩していた修験者が小さな赤いコルヴェットから降りてきた
相変わらずのロンドンブーツで
「吾れが称えてやろう」
モヤが怒った
「アンタなんかにできるわけない!」
「できる」
修験者は、すぅ、と吸気して呼気した
「クアロイイシダテイルヤモヲヤオアトイシシタテバルシモョヤカアライトシツテキルトモオヤカアカイケシテテヒルスモイヤヲアヒイロシッテタルカシャイムガアンイマシデテアルルモイヤタアケイドシツテイルゾモミヤツアカイラシズテラルーモメヤンアデイモシタテベルテモカヤエアロイウシカテナルムモナヤシアイイカシラテルモヤ!」
「…」
「?????」
モヤは修験者が一気に称えたあとで怒鳴りつけた
「デタラメだ!」
「ならもう一度。クアロイイシダテイルヤモヲヤオアトイシシタテバルシモョヤカアライトシツテキルトモオヤカアカイケシテテヒルスシャイムヲアヒイロシッテタルカモイヤガアンイマシデテアルルモイヤタアケイドシツテイルゾモミヤツアカイラシズテラルーモメヤンアデイモシタテベルテモカヤエアロイウシカテナルムモナヤシアイイカシラテルモヤあっ!!」
「うわーっはっはっはっはっはっ」
「シャ、シャム!?」
「あーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!行者さん!」
「なんだ」
「アンタ、虚空蔵求聞持法、やったんだね!」
「いかにも」
「ええっ!」
わたしは驚かない
モヤは驚く
「ま、まさか!こんなロンドンブーツ履いた埃だらけの怪僧が、そんな!」
「でも完全じゃないでしょう?」
「さすがだな、女子。わかるか」
「二箇所間違えた」
「わざとだと言ったら?」
「非を認めたら?」
修験者はツカツカと歩いてまた小さな赤いコルヴェットの運転シートに滑り込んだ。そうしてロンドンブーツでアクセルワークをする
「また会おう!レディ・キャブ・ドライバーもハイヒールでの運転をもっと練習しておくがいい!」
ヴロォォォン…と5秒かからずにトップスピードに達して走り去って行った
「な、なんなんだろアイツ!」
「でも大したもんだよ。道半ばとはいえ虚空蔵求聞持法を志すとは」
「完全じゃないって?」
「まだ百万遍までは称えられていない。せいぜい八十万遍ほどだろうね」
「!!!…でも、あんな奴、認めたくない!」
モヤがそこまであの修験者に怒る理由…いや、10人いれば10人とも怒ると思うけど、尋常じゃないぐらいにモヤが怒る理由とは
「シャムをココロから腹の底から笑わせたいのはわたしだったのに」
わたしは気休めでなくモヤに言ってあげた
「大丈夫、モヤ。わたしの笑いにはもう一段上があるから」
「ええええ!?」
「いいよ」
第二十九番札所 摩尼山 宝蔵院 国分寺
土佐国分寺といえば有名だよね
「ところでどうしたらシャムは大笑いするの?一発ギャグとか?」
「ううん。簡単。呪文があるんだ」
「呪文?」
「そう。簡単だよ、わたしが言うから繰り返してね。クアロイイシダテイルヤモヲヤオアトイシシタテバルシモョヤカアライトシツテキルトモオヤカアカイケシテテヒルスモイヤヲアヒイロシッテタルカモイヤガアンイマシデテアルルモイヤタアケイドシツテイルゾモミヤツアカイラシズテラルーモメヤンアデイモシタテベルテモカヤエアロイウシカテナルムモナヤシアイイカシラテルモヤ」
「え、ええ?」
「はいっ」
「ええええ?」
突然ガソリン車の排気音がわたしたちの背後から聴こえてきた
「あ!アンタは!」
お遍路をスタートしてほどなくして鉄錫杖をアスファルトにズシとめり込ませて闊歩していた修験者が小さな赤いコルヴェットから降りてきた
相変わらずのロンドンブーツで
「吾れが称えてやろう」
モヤが怒った
「アンタなんかにできるわけない!」
「できる」
修験者は、すぅ、と吸気して呼気した
「クアロイイシダテイルヤモヲヤオアトイシシタテバルシモョヤカアライトシツテキルトモオヤカアカイケシテテヒルスモイヤヲアヒイロシッテタルカシャイムガアンイマシデテアルルモイヤタアケイドシツテイルゾモミヤツアカイラシズテラルーモメヤンアデイモシタテベルテモカヤエアロイウシカテナルムモナヤシアイイカシラテルモヤ!」
「…」
「?????」
モヤは修験者が一気に称えたあとで怒鳴りつけた
「デタラメだ!」
「ならもう一度。クアロイイシダテイルヤモヲヤオアトイシシタテバルシモョヤカアライトシツテキルトモオヤカアカイケシテテヒルスシャイムヲアヒイロシッテタルカモイヤガアンイマシデテアルルモイヤタアケイドシツテイルゾモミヤツアカイラシズテラルーモメヤンアデイモシタテベルテモカヤエアロイウシカテナルムモナヤシアイイカシラテルモヤあっ!!」
「うわーっはっはっはっはっはっ」
「シャ、シャム!?」
「あーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!行者さん!」
「なんだ」
「アンタ、虚空蔵求聞持法、やったんだね!」
「いかにも」
「ええっ!」
わたしは驚かない
モヤは驚く
「ま、まさか!こんなロンドンブーツ履いた埃だらけの怪僧が、そんな!」
「でも完全じゃないでしょう?」
「さすがだな、女子。わかるか」
「二箇所間違えた」
「わざとだと言ったら?」
「非を認めたら?」
修験者はツカツカと歩いてまた小さな赤いコルヴェットの運転シートに滑り込んだ。そうしてロンドンブーツでアクセルワークをする
「また会おう!レディ・キャブ・ドライバーもハイヒールでの運転をもっと練習しておくがいい!」
ヴロォォォン…と5秒かからずにトップスピードに達して走り去って行った
「な、なんなんだろアイツ!」
「でも大したもんだよ。道半ばとはいえ虚空蔵求聞持法を志すとは」
「完全じゃないって?」
「まだ百万遍までは称えられていない。せいぜい八十万遍ほどだろうね」
「!!!…でも、あんな奴、認めたくない!」
モヤがそこまであの修験者に怒る理由…いや、10人いれば10人とも怒ると思うけど、尋常じゃないぐらいにモヤが怒る理由とは
「シャムをココロから腹の底から笑わせたいのはわたしだったのに」
わたしは気休めでなくモヤに言ってあげた
「大丈夫、モヤ。わたしの笑いにはもう一段上があるから」
「ええええ!?」