第212話 雨乞い

文字数 1,141文字

 人間の為す政治には必ずや瑕疵がある

 完璧ではない

 でももしも神が行う政治ならば…?

「モヤ このお寺の由来は?」
「天神さま」

 第八十七番札所 補陀落山 観音院 長尾寺


 讃岐国の国司として菅原道真公が赴任なさっていた折、ものすごい旱魃になったという

 雨乞いは人間の我欲で行ってよいものではない

 神様がとても深いご思慮を持って、後々の末代のことまでお考えになって日照りの状況を必要なこととして為しておられる場合もあろうかと思うがその際の状況が神様のご意向に叶うものかどうかは自分自身が神様のように自らの身魂を磨き固めてきているひとでないと容易には理解し難い

 菅原道真公は自らが神前で七日七晩の雨乞いの祈願をお立てなさった

 そうしておそらくは公ご自身が神意をお汲みになった上で実際の雨乞いの祈願に踏み切ったのであろう

「さてここで問題です ゲンム、雨乞いの時にご活躍なさるのは白馬でしょうか?黒馬でしょうか?『なんとなく黒馬』はい!正解でっす!」

 わたしがシャムの持っているイメージとして観た黒馬は実際には菅原道真公が雨の祈願のために七日七晩祈願なされたその祭に居られた時のものではなく、シャムがわたしたちの街の神の絵が奉納される神社の境内で参拝した、正月朔日には敷台の上に山盛りの人参が積み上げられてご供養とお受けになるその白馬と黒馬の神馬のことなんだけれども実際日本じゅうの黒馬が応援なさったろう

 菅原道真公という真の大和魂を持つ偉大な政治家のために



 どんなに官位あるひとであろうとも臣下なんだ

 大きな臣下だから大臣って言うだけの話だ

 けれども真実誠のホンモノの日本人たる菅原道真公がさすが現世の娑婆で官僚としてのお勤めをなされた際、忖度などで上官のご機嫌を取る我よしの出世処世術などではなく

 ホンキで神前に向かい、心底民のために

 いいえ

 民のみならず草木のため

 虫のため

 鳥のため

 獣のためにも

 雨を

 何卒雨をとご祈願なさった

 そうしてその後の卑怯なる政敵どもの陰謀で左遷の艱難辛苦の最期にお亡くなりになられるまで 身魂を磨かれた

 自己実現のための努力は身魂磨きとしては不十分

 我よしの我欲があるから

 言われなき讒言にてご苦労にご苦労を重ねていかれたそのご心痛お身体の苦しみこそが菅原道真公の身魂磨きでおわしたのでしょう

 娑婆をおいとまなされた後に天神様として臣民からご尊敬をお受けになられるのは決して学の才にあらず

 まごころ

 誠実

 果断なる実行

 そうしてひとのみならず梅の樹をも慈しむそのおやさしいおココロが 娑婆に生きながらにして既にして神さまでおわしたのでしょう

 さあみなみなさま

 われらも身魂磨きましょう

 さすればこの世にありながら

 われらも神心呑めますぞ

 高天原を為せますぞ
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