第70話 スロー・マインド

文字数 1,030文字

 考えずに語ることができればそれはほんとうに幸せなことでもっと言えば考えずにというか考えたことを検証も躊躇もせずにできることはほんとうに幸せなことでそんな風にして運が味方して世を挙げて努力を讃えてもらえるひとは本当に幸せでどうしたってわたしはそういう事柄とは全く縁が無いのは過去世の業であるっていう風に白日夢の中で解析してくださった牛蒡じゃない、御坊が言ったことは多分ほんとうのことなんだけどそれをまともに心が動いてないのではなくてココロの動揺が激しすぎるためにかえってその動きがスローモーションに見えてしまうのはある偉大なギタリストの速弾きが速すぎて手がスローモーに見える状態とまったく同じでつまりそれというのは心拍数が速いために心臓の筋肉が疲労して早くに限界を迎えるのと同じようなもので決してそのひとが怠けているんじゃないってことをなんとかして証明したいんだよ!

 証明するのは誰かというとそれはわたし自身だと一瞬おもったけど実はそういうことを言うとココロを余りにも速く動かしすぎている子たちが絶望してしまうから言えないんだよ!

 ココロを速く動かし過ぎているのはたとえばいじめに遭う子、虐待に遭う子、災害で命が尽きようとしている子、自分の街が戦場となって空爆から逃げている子、全員なんだよ!

 その子らは防御のためにココロを止めているんじゃなくって、なんとかして救われたいって一心でどうすればこの地獄から逃れられるんだろうって知恵を絞って絞って絞り抜いて生きてるんだよ!

 でもどうして解決につながる知恵が出て来ないんだって?

 じゃあ訊くけどもし至近距離で撃鉄を既に起こした状態でリボルバーの銃口を鼻の辺りに照準されてるとしたら、あなたならそこでどういう知恵が出るっていうの?

 人体を壊死させるか細胞レベルで微細に死滅させ尽くす爆弾を搭載したAI爆撃機があなたの頭上からもうそれを投下してしまっていてその爆発のエネルギーが数十キロ四方で致死の能力を持っているとしたらそこでどういう知恵をあなたは出せる?

 いじめに遭うということは
 虐待に遭うということは
 被災するということは
 被爆するということは

 そういうことなんだよ!

 せめて小さな甲虫の薄羽の振動数ぐらいには繰り返し繰り返し繰り返し思考してから『やられる側にも責任がある』なんてことを言えるモンなら言ってみなよ。

 でももしほんとうにそう言うひとがいたならばわたしはこう言うしかない。

『全責任は虐げる側にある』
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