第201話 時にはあそぼうよ

文字数 1,038文字

 閑話休題というものがいったいなにを指すのかわたしにはわからないけど5歳の未就学児だからあそぶのはだいかんげいだよ

「ねえ なにしてあそぶ?」
「なにがはやってんの?」
「『ミコは一般女子と違うだろう』ってゲンム!失礼だねぇ!」

 結局わたしに合わせてくれることになったよ

「石取り?」
「うん 保育園のブランコでよくやってたんだ」

 モヤもゲンムも児童公園のちっこいブランコに窮屈そうに乗ってくれてね

「じゃんけんせーのせーのぽっ」
「なにそれ」
「んん?わたしの保育園ではやってるやつ」

 うそだけどね

 わたしがそっきょうでかんがえたんだけどね

「じゃあわたしからいくね」

 じゃんけんにかったから先攻で
 わたしはブランコを座ってこぎながら横にいるモヤのブランコの陣地の一番隅っこのところギリギリを狙って石を放った

「ナイス!」

 わたしは自画自賛するよ

 だってゲンムがスニーカーのつま先でしゅーって引いてくれたラインのその厚みの一番外側ギリギリに石を置けたから

「うわー これまた難問を」

 モヤがこのフィジカルなやりとりをパズルみたいに言ってくれるのがなんだか好き

「せ、っと」
「わー ずるいー」

 モヤのながくて細い四肢を存分に活かしてたった一漕ぎで余裕で石を拾った

「ずるくないよ 大人の特権!じゃ、ミコ いくよ!」

 モヤはヒールを履いたそのながーい脚を地面スレスレに持ち上げてブランコが一番高くなった位置でいったんおりたたむ

 そうしてまた、くん、て脚を伸ばして推進力を確保して石をわたしの陣地に投げた

 背面投げで

 しかも投げる時にね

「フリッスビー」

 え?

「ぷははははは!」

 わたしが大笑いするとゲンムも声を出さずに顔が崩れるほどに笑ってる

「フ、フ、フ、『フリッスビー』だって!」
「なあによ おかしい?」
「うん おもいきりおかしい」

 とはいいながらモヤはアクロバティックな投げ方をしたのに正確にわたしの左側の斜め後ろにあるブランコのポールにぴったりとくっつけて石を置いた

 天才だよね

「モヤ やっぱりずるい」
「ずるくないよー リーチをいかしたなんて言われたく無いからわざわざ『フリッスビー』で投げたのに」
「おまけに笑わせて失敗させるつもり!?」

 ゲンムが手話でわたしのフォローをしてくれた

「『モヤ 大人げないよ』ってそうだよ!そのとおりだよ! だから今から泳ぐ練習しよ?ねえモヤはさ、わたしと遊んでて楽しい?」

 モヤがわたしにきちんと答えてくれた

「うん 楽しいよ」

 モヤは子供なんかじゃない

 おとなだよね 
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