第213話 結願(けちがん)

文字数 1,266文字

 第八十八番札所 医王山 遍照光院 大窪寺

 けちがん

 とうとうやってきたよシャム

 どこまでがうつつでどこまでがまぼろしかなんてそんなこと問わない

 すべてゆめまぼろし

 ただまことの心のみが

 ほんとうのこと

「モヤお疲れさま」
「ありがとう。ミコもカラダは5歳だから疲れたろう」
「え。なんだかカラダ以外はかわいくないみたい『実際そうじゃねえか』あ・ひどいゲンム。でもゲンムも汚い言葉遣いが戻ってきたから立ち直ったんだねよかったね」

 そんなわけねえだろ

「ゲンム、ミコ。今となってはふたりがわたしの雇い主だよ。これで八十八ヶ所すべてをお参りさせていただいて満願した…ことになると思うけど」
「『高野山へ』」
「うん」
「『連れてって』」
「わかった」

 モヤがギャランのアクセルを踏み込む

 口元がほんの少し、くっ、て上がったからきっとわたしたちとまだ同行できることが嬉しいんだと思う

 わたしの思うらくは

 シャムのココロは満ちたのか?

「これはもうミコに訊くしかないんだけど」
「わぁー、モヤのハイヒールってほんとにヒールがツクツクだねぇー」
「急に幼女ぶらないで。ねえミコ。シャムは思うところ遂げられたの?逝けるところへ逝けたの?」
「『モヤ』」
「な、なに?ゲンム」
「『シャムと仲良くしてくれてありがとう』」
「そんな…わたしの方こそ彼女に遭えてほんとうによかったって思ってる」
「『シャムは今わたしのカラダの中に居る』」
「ああ。うん、そうね」
「『モヤ。比喩やものの例えを言ってるんじゃねえ。ほんとに居るんだよ』うん、ほんとそう。わたしもそう」
「?ゲンム、ミコ。ふたりともの中に?」
「『そうだぞ。わかんねえのか』ねえモヤ。ほんの少しだけ体重増えなかった?」
「えっ?観、観たのか?昨日の宿の風呂場で」
「あ、やっぱり。体重計で測って微かに分かるぐらいだろうけどその分がシャムの魂の重量。きちんとみんなに分け与えてくれたんだね」
「?どういうことだい?」
「『モヤ。わたしはそういうことをストレートに納得できるクチじゃなかったがここまではっきりとこの…観た目は5歳の幼女に言い切られたらしょうがないし体感できた。モヤ。わたしたちは与えられたんだよ。最高に磨かれた身魂を』」

 ゲンムも断言した

 その断言によると今生の最期に神仏を感得して即座に毛虫に変化し護国のツバメに我が肉を与えたシャムは人間では決して成し遂げられぬ自然界の摂理に則った大功徳をなした。のみならずその後で隣国まで音速で飛行し日本を撃たんとしていた核兵器を悉く消し尽くしたツバメの大功徳をも根こそぎシャムは受けた

 その結果 シャムの身魂はこの上ない研磨がなされたのだという

 最高純度に磨かれた身魂となったのだという

 そのおさがりをわたしたちが相応に平等にいただくことができたのだという

「だからね『だからモヤ 連れて行ってくれ 報謝の道中高野山へ それに白状すると…』え?ゲンム、自分で言いなよ〜」

 わかるよ

「『まだ3人でいたい』わたしもっ!あっ!」

 そうだよ

「「『弘法大師さまとモヤとで同行五人!』」」

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