第267話 負けるが勝ちを通し尽くす

文字数 950文字

 常不軽菩薩 じょうふきょうぼさつ

 シャムの過去世からこの菩薩さまをなぞらえたようなエピソードも伝わってきたよ

「ゲンム ほんとうに強いひとってどんなひとだろうね」
『シャムみたいな奴のことだろうな』
「確かに じゃあほんとうに勝つ人ってどんなひとだろうね」
『…近い概念はあるぞ』

 おどろいたことにね

 ゲンムも 常不軽菩薩さまの御名前をあげたよ



 あなたさまは尊いひとです

 遭うひとすべてにそうおっしゃって
 不審がるひとたちから阿呆とも気ちがいと言われる中で

 杖もて打たれ

 石もて打たれ

 それでもやめない

 ひたすらへりくだり人を礼拝なさる

「ゲンム シャムはこんなことも言ってる」
『教えて』

 ゲンムの手話が突然かわいらしい女の子の手話になる いや もちろんゲンムはかわいらしい女の子だけどさ。

『早くおしえて?』

 ゲンムの多分シャムのことを思い出して潤んだ眼に迫られながらわたしは大いなる安心感を味わいながら告げたよ

「ひとをも拝めば神となる」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 わたしが言わんとすることを汲んでくださる方もおられるでしょう

 もちろんこの言葉はわたしに向かって聴こえるようにおっしゃってくださった言葉でしょう

 常不軽菩薩さま

 そして恩人の和紙に書かれた言葉

 南無阿弥陀仏とゆうことは
 まことのこころとよめるなり
 まことのこころとよむうえは
 ぼんぶのめい心にあらず
 まったく仏心なり

 そうして神様のお示しにあるように

『ひとを尊べばそのひとも神となる』

 今こうしてこのエピソードを書いている最中に思い出しました

 舅・姑の背中を拝むことを

 実家の両親の背中を拝むことを

 夫婦相拝むこと

 子を拝むこと

 天を地を山を川を草木鳥獣虫を拝むこと

 わたしにとって拝むのがとても難しいと感じる相手は多々います

 けれども常不軽菩薩さまはそうなさった

 恩人はお六字でもってならばそのならぬかんにんを出来るとそれこそ常不軽菩薩さまが打たれても蹴られても忘るなとわたしに教えてくれた

 神さまはものごとの奥の奥のそのまた奥のとことん奥のキの部分を動かしなさるからこそ人だけでなく草木を拝み素直に神さまの天地自然の大きな理を実践せよと

 そういうことを日々のドロドロの中で忘れてしまっていました

 やらせていただこうと思います
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