第192話 2nd booster

文字数 964文字

 わたしたちはお遍路を続行する

 ギャランにゲンム、ミコ、わたしが同乗して

 そしてもちろん弘法大師さまと同行ふたり

 のみならず、シャム、と同行する

 それはミコがシャムと一骨分身にして別あるにあらず、という状態だからと断言できる

 それを裏付けるようなことをミコはこともなげにいう言う

「わたし、シャムの過去世から前世・今世までずっと書いてきた小説の原稿をね」

 あ

「ねじ込まれたよ」

 そうか

 そうかあ

 そういうことだったんだ

「ミコ!あなたがシャムの…ううん、捨無菩薩の後継者だよ!」
「ん?」

 捨無が過去世の記憶を引き継ぐ方法は

 その書かれた小説そのものだったと

「『けどシャムの小説が売れた試しはなかったと聴いてたぞ ほんとうにシャムが捨無菩薩なら菩薩の書いた小説がどうして売れないんだ』あ、それわたしも思った」

 ゲンム

 ミコ

 わたしがこの世のどうしようもない現実を言い当ててあげるよ

「ひとは『ほんとうのこと』よりも『心地よいこと』に飛びつく」
「「『あ!』」」

 第七十六番札所 鶏足山 宝導院 金倉寺

 シャムは過去世において不動明王を背に負うた16歳のヒロインを池袋の森の中にある鬼子母神の近くの老反社夫婦の家を訪れさせるエピソードや物心ついた頃からいじめに遭っていじめを根絶させる力を持つロックンロール・バンドのヴォーカリストとして人生を歩み始めた14歳の中学生中退の女子をやはり池袋の鬼子母神近くの反神の巣窟たる雑居ビルへと訪れさせるエピソードを書いて、あまりにもほんとうのことすぎて賞にも載らずPVも伸びず箸にも棒にもかからなかったと言っていた

 そしてこの七十六番には乃木大将の遺品が納められているという

 乃木大将は昭和天皇陛下さまのご養育係であった

 そのために学習院の学長となられた

 学習院はただの学校ではない

 ホンモノの君主を養育するための学校だ

 ホンモノの帝となるべく魂を磨くための研磨の学校だ

 ご学友もただの同級であろうはずがない

 まさしく仏陀の眷属

 仏陀とともに祇園精舎を世に顕現させるその同志たち

 日の女神さまとともに世に平和の高天原を実現させるためのその八百万の神々のご努力と同等の努力を目指す粉骨砕身の正義の同級たち

 ところがかように残念なことには

 『ほんとうのこと』は都合よく世渡りしたい者たちに、葬り去られるのだ
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