第261話 あけましてめでためでた

文字数 1,011文字

 明けまして っていうことばはなんだかやさしいよね

 締めるとか閉じるとかいうことばよりもとってもやさしくてあたたかいよね

「ミコちゃん はい」
「え ありがとう!」

 ゲンムのお父さんお母さんからお年玉をもらった

『いくら入ってた』
「ゲンムはやらしいよね」

 今はゲンム家はお父さんお母さんゲンムと居候のわたしの4人家族…まあわたしも家族に数えてもらえてるからね

 最初に全員で神棚とお仏壇の前で神さま仏さまごせんぞさまに新年のご挨拶をした

「「「『本年もよろしくお願いいたします』」」」

 そうして神さまと仏様におせちとお雑煮とお酒と鏡餅と果物と…

「このお菓子は?」
「ああ これはね」

 ゲンムのお母さんが説明してくれたのはね

 ご先祖の中には生まれたくても生まれてこれなかったひとたちがいるからそのひとたち…子たちへの…お供え

「ミコちゃん 死産だった子も祭らせていただくんだよ 死産ってわかるかい?」
「うんわかるよ お父さん」

 ゲンムがとてもココロに残ることを言ってくれたよ

『生きたくても生きられなかったひと 生まれたくても生まれなかったひと…そういうひとたちを大切にすることが生きているひとを大切にすることにつながるんだ』

 ああ

 なるほどなあ…

「さ では人間同士の年始の挨拶を」

 わたしはいちいちゲンムのおとうさんとおかあさんのココロ配りに感心するよ…ってえらそうだけどでもほんと

 神さまや

 大往生のごせんぞや夭逝なさったごせんぞを先にお祭りして

 先に食べ物や飲み物を捧げさせていただいて

 ごあいさつもまず先に申し上げて

 それからわたしたちの番

『順番大事』
「それはしがらみじゃないの?」
「ミコちゃん 順番ていうのはね 時がちょうど‘今だ!’ っていうそのタイミングのことをいうんだよ」
「?」
『ミコ ミコは今何歳だ』
「しってるでしょ 5歳」
『わたしは何歳だ』
「16歳」
『母さんは何歳?』
「ゲンムはいやなこと訊くわねえ…ン!歳よ」
『…もし今ミコとわたしが母さんよりも先に死んだら…それは順番が合ってるのか』
「…ほんとだ…ほんとだね」

 逆さまだよ

 おとうさんと同じようにやさしいことばでおかあさんもおしえてくれたよ

「ミコちゃん もちろん生きているひとは大切 だけどね もういないひとも 特に順番がとても悲しいことになったひとたちもね」

 わたしがしらないおかあさんのかなしみがあるってことが おかあさんのふるえる声でわかったよ

「とても大切なの」
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