第228話 鯉の料理 徒然草231

文字数 828文字

□園の別当入道は、比べる者もない包丁使いの名人であった。ある人のもとにて、立派な鯉を出したので、人は皆、別当入道の包丁さばきを見たいと思ったけれども、軽々しく言いだすのもいかがと躊躇していたのを、別当入道もさすがの人で、「このほど、百日の間、鯉を切っておりますのを、今日を欠くわけにはいきません。是非とも申し請けましょう」とて切られたのであります。とてもすばらしく相応しい、興趣があったと人々が思っていたと、ある人が、北山太政入道殿に語り申されたところ、「そのようなことは、己には煩わしく思える。『切れる人がいないならば、切りましょう』と言った方が、なほよかったのではないか。何んで、百日もの間、鯉を切っている』といったのだろうか、興趣を覚えたという人が、そのように語られていることが、なにか面白い。大方、殊更に趣向をこらすより、興趣がなくてもいろいろ気を遣わない方が、まさっているものである。客人の饗応にあたっても、この機会に趣があるようなとりなしをするのも、まことに結構であうけれどもただそれとなく、「これを奉らん」と言うのが、まことの志なり。惜しんで欲しがられるようしたり、勝負の負け罰にかこつけたりするのも、煩わしいものである。
※食用にはマゴイの二年ものの活きた物を使用する。コイは死ぬと臭みが出て食べれない。手早く捌くのが大切。料理する前に一晩綺麗な水で泳がせて泥を吐かせておく。鯉は泥や砂ごと餌を食べる。さばく際に苦玉(胆嚢)を潰さない様に注意。潰すと身が緑色に染まり、苦くなる。胆嚢には毒性物質があり、食べてはいけない。「コイコク」とは、正式には鯉濃漿と言う。味噌仕立ての汁で、臭みの強い魚を煮込む料理。鯉の洗いは65度くらいの湯を使います。刺身をさっと湯洗いして冷水にとる。水気を拭き、酢味噌や梅しょう油で頂く。当時は魚といえば鯉だったのでしょう。鯉の料理もなかなか大変なようですね。客人のもてなしにも、何かと気を遣っていたのでしょう。
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