第153話 話術 徒然草56

文字数 619文字

長いこと年月が経っていて久し振り会った人が、自分の方のあったことを、まずあれこれ残らず話し続けるのは、つまらない物だ。打ち解けた馴れ親しむ人でも、暫くぶりに会うのは、遠慮無しでもよかろう。下層の人は、ちょっと出かけて行ったのでも、今日あったことのように、息つく暇もなく喋り興ずるものである。一流の人が物語するときは、人が大勢でも、一人に向って話すような感じであり、おのずから、他の人も聞くようになるが、下層の人は、誰ともなく、大勢の中に出てきて、いま見ているように話すので、皆同じように大声で笑い騒ぎたてる、いとやかましいものだ。面白いことを言ってもおかしがらないのと、おかしくなことを言ってもよく笑うのと、人品のほども計られるというものだろう。人の外見の善し悪しで、学才のある人の場合、その風采の良し悪しなどを品定めているところに、自分の身をひきあいに出してくちをはさむのは、とてもつまらなく侘しいものだ。
※人と話すとき、一方的に自分の話ばかりをすると、相手はすこしづつうんざりしてくるものである。もうこの話、聞き飽きたとも言えず。困惑しながら聞くのも、たしかにやりきれない思いがする。話しを聞く人に引き込ませる程のテクニックがあれば素晴らしいのだろうが、その中身にもよるだろう。愚ぬもつかないことで、相手に引き込ませる話術、難しいでしょう。文章にしても、相手を引き込ませる文章というのは、プロでもなければ、なかなか難しいでしょう。
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