第83話 虚言と達人 徒然草194

文字数 1,038文字

□達人の、人を見る眼は、少しも誤る所はあるはずがない。たとえば、ある人が、世の中に
偽りをたくらみをめぐらして作り出し、人を騙そうとする時に、素直に本当のことだと思い込み、言うままに騙される人がいる。余りに深く信用し、さらに複雑に偽りの言葉を新たに解釈を加える人もいる。また、なんとも思わないで、心配しない人もいる。また、少し、気掛かりに思って、信用できずに、心配する人もおり、また、本当とは思えないけれど、「人が言うことだからさもあらん」とやめる人もいる。また、さまざまに推測し、理解したふりをして、賢そうに頷いて、微笑んでいるけれど、全く分かっていない人もいる。また、推測して、「ああ、さもありなん」と思いながら、なお、誤りもありはしないかと咎める人もいる。また、「違っている様子でもないな」と、手を叩いて笑う人もいる。また、理解したけれど知っている、とも言わず
ハッキリしないことは言わず、知らぬ人と同じようにやり過ごす人もいる。また、虚言の本意を、初めから分かっていて、少しも馬鹿にしないで、虚言を言い出した人と同じ心になって、力を合わせる人もいる。愚者の中の悪ふざけの場合も、分かっている人の前では、この様々な得た事、言葉でも表情でもはっきりそれと知られているに違いない。まして、道理に明るい人は、思い悩む我らを見て、手の平の上の物を見るのと同じである。但し、このような当て推量で
仏道までを同じようにみなし言うべきではない。
※様ざまな現代の情報過多な場合は、いろいろな情報を得て正しいと思える判断を決めることはできそうだが、700年も前は、情報は公開がされてないことが多く、どれが本当のことなのか分からない。悩める人々の対応を、兼好先生の独特の筆法で解き明かしていらしゃる。人物の心理的な描写も教わることが多いように思います。
①素直に虚言を思い込む人②深く信用した人が更に言葉を付け足すこと人③なんとも思わず心配しない人 ④気掛かりであるが信用できず心配する人⑤他の人がそう言うんだからという人⑥分からないに理解したふりし微笑む人⑦そんなこともあろうと思い、なお間違いではないか疑う人⑧間違ってはいないんじゃないかと拍手する人⑨分かっているのだけどハッキリ顔にださない人
⑩虚言の本質を分かっていながら、虚言者に力を貸す人。10タイプの人を表現し、達人は分かりきっていて、掌をみるが如し。仏法ではこんな虚言は通用しないと先生は仰っているのでしょう。
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