第129話 月を見て見舞い 徒然草32

文字数 463文字

□九月廿日の頃、ある人からお誘い頂きて、夜が明くるまで月見歩くことを致したのですが、思い出された所がありて、案内させてお入りになった。荒れた庭には夜露が多く、わざとらしくない匂いが、しめやか香り、人目を避ける雰囲気もあり、いかにもしみじみとした情感がありました。よきほどにて出てこられたのですが、なほ上品で優雅な様子に思え、物隠げからしばし見ていますと、妻戸を、いま少し押し開けて、月を見るご様子でしたが、帰る客を送り出してすぐに戸を閉め鍵をかけるようだったら、嫌な事でありましょう。跡まで見る人がいるなど、知るよしもないでしょう。このようなことは、ただ朝夕の心づかいによるものであります。その人は、ほどなく亡くなられたと聞いています。
※人への心遣いは朝夕の態度で身に着けていくものでありましょう。人が帰ったあとも、人影を見て、また奇麗な月を見遣るという情趣ある仕草を身に着けるのも大切なことでしょう。もうこれで、貴方とも会えないかもしれない。何も言わずに、心では分かっているという情景なのかもしれません。
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