第126話 眠れぬ夜に 徒然草29

文字数 408文字

□静かに思えば、なにかにつけて過ぎにし時節の懐かしのは、どうしようもない。人寝静まった後、長き夜に心の赴くままに、何となき道具を片付けだし、残てし置くまいと思う反古など破り捨てる中に、亡き人の手習い、絵かき興じた物を見い出した時は、ただその頃の心地がする。こ近頃、ある人の文ですら、長い時間が経ちて、いかなる折り、いつの年だったろかと思うは、しみじみと情趣が深いものだ。手馴れし道具なども、無心に長くあるというのは、いと悲しい。
※寝静まった秋の夜長に、なんとなく道具を片付けだしていると、いろいろな物が目に入り、手紙や写真をみてしまう。あの時はどうだったかなと思うと、断捨離が出来ず、元の場所へ置き戻し、別の機会に考えようとする。過去を振り返る人の習性というのは、今も昔もかわらない。昨日のことは忘れ、明日のみを考え行動する。忘れがちになる老年者にとって、いいことではないでしょうか。
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