第151話 稚児と宝捜し 徒然草54

文字数 992文字

□御所に素晴らしい稚児がいたのを、どうにかして誘い出して遊ぼうとたくらむ法師どもがいて、才能ある遊び法師どもなども仲間にいれて、風流な折箱のような物を細やかに作り上げて、その中によき物を具合良く入れて、双の岡の都合の良い所に埋めて置き、紅葉を散らしてかけるなど、思いもよらない様子にして、御所へ参り、稚児をそそのかし出てこさせた。
うれしく思い、あちこち遊び廻って、さっきの苔のむしろに並んで座り、「大層つかれたなー」、「ああ!紅葉を焚く人がいるといいのにな」、「効験あらたかな僧達、祈って試みられよ」など言い合い、埋みていた木に向って、数珠を摩り合わせ、手指で印を仰々しく結んで、鋭く振る舞って、木の葉を掻き退けたけれど、いっこうに物も見えなかった。場所が違たのではないかと、掘らぬ所もないくらいに山を捜したが、隠した物が見つからなかった。
埋めていたところを人が見ていて、御所へ参っている間に盗んだのである。法師ども言葉もなくて、聞き難い口喧嘩など始り、腹を立てて帰ってしまった。あまりにも趣向を凝らしすぎる、必ずつまらない結末になるのである。
※御所のかわいらしい稚児をおびき出して遊ぶ法師の心も、なんか、ちょっとどんな感じなのですかね。念を入れ驚かせ喜ばせようと、手間の掛かった物を造り、埋め、「おや、こんな所に、素敵な物があった」と喜ぶ。子供だましの様なことを、兼好先生もされるのですかね。まあ、いろいろありますけれど。しかし古い古語辞典にもないような、難しい言葉がでてきましたね。
※2 仁和寺を訪ねたR4.4.17にはオムロ桜は散っていた。兼行法師も逸話とか遺跡はないという。僧衣の神職に聞くと「徒然草に載っている、この寺の法師を面白おかしくかいたのでしょう」と話してくれた。兼行法師の墓は、山門から向こうを眺め、その山に庵があったといいますと説明してくれた。おむろの町には住んでいたことは、間違いない事実らしい。当時は、今の徒然草の程の名声はなかったようで、ただの法師だったようだ。御所の稚児を誘い出して、双の岡
の場所にとあるが、雙ヶ岡(ならびがおか)とも書き仁和寺の飛び地で現在でも双ヶ丘というのがある。御所から7キロくらい離れている。ちょっと遠い気もする。兼好法師は双ヶ丘に住んでいたと、長生寺の住職(兼行法師の塚のある寺)や仁和寺の神職も語っていた。信憑性がある。
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