第80話 見栄え 徒然草191

文字数 750文字

□「夜に入ると、物が見栄えがしない」と言う人がいるが、残念なことである。あらゆる物のきらびやかさ、装飾、色調も、夜のみこそ喜ばしく祝うべきだ。昼は、質素にして、地味にみえる姿にてもあり得るだろう。夜は綺羅やかに、華やかな装束は、とても良い。人の様子も、灯火に照らされた姿は、よきはよく物言いたる声も、暗い中で聞く、気配りがあるのも心憎し。匂いも物の音も、ひたすら夜がひときは素晴らしいものだ。さして異なることもない夜、夜更けに参上する人が、清らかな格好をしているのは非常に良い。
若い仲間、関心を寄せる人は、季節に関係ないものだから、ことに慣れ親しむ機会である、普段や晴れの日に係わらずゆったり寛いでほしものだ。よき男の、日暮れて髪を洗たり、女も、夜が更ける程に、そっと引き下がり、鏡を取って、顔など整えて出てくることこそ、愛らしいものだ。
※「ことそぎ」=事削ぐ=簡略にする・質素にする。とか「およすく」=地味にみえる。「ゆする」=洗髪。「すべる」=引き下がる。などは角川国語辞典(編者ー大野晋・田中章夫)には出てこない。たまたま娘が学生時代、使っていた例解古語辞典(編者ー佐伯梅友他)にはばっちり解釈が載っていた。辞書は捨てずに取って置くものであります。
装束と言う字も角川国語辞書には見当たらなかった。が明鏡国語辞典には出てくる。若いころにはこの言葉は使われていたはずだが。束帯とかは天皇や貴族が正式の場で着用していたが、装束は身につける衣服のこと。しかし男も衣装には気を使って、昼夜問わず、着用することが、身だしなみ大切であります。男はわりかし、無頓着な人が多いし、これで良しとしている所があるような気がする。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み