第229話 無知無能なることを心得よ 徒然草232

文字数 529文字

□すべて人は無知無能なるべきものである。ある人の子が、容貌などは悪くないが、父の前で、人と物を言うといって、歴史書の文を引用したりして、賢そうには聞えたけれど、尊者の前ではそんなにしなくてもよいように思える。またある人のもとでは、琵琶法師の物語を聞こうと琵琶を取り寄せたところ、柱の一つが落ちていたので、「作ってつけよ」と言うと、ある男が、それほど悪くは見えない者が、「古い柄杓の柄はありませんか」など言っているのを見ると、爪を長くしている。琵琶などを弾くのだろう。盲法師の琵琶は、その処置方を充分しっていないのだろう。道を心得ている由を見せようとしたのだろうかと、はたで見ていて心が痛む。「柄杓の柄は、檜物木とか言って、柱にはよからぬ物なのに」とぞある人仰せられた。若い人は、少しのことでも、よく見えたり、悪く見えたるするものである。
※子供はまだ未熟なのに、親の前で良いところを見せようとする。未熟者はわきまえることを知らねばならない。大人でも未熟なひとは多いけれど。琵琶の柱は、プロであれば懐に糊とスペアーを
携帯し、慌てず騒がずだが、盲目の法師はそこまでしてないのだろう。知ったかぶりの若者が、柱の材質もわきまえないで、ものを言うのは、いけない事だ。
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