第163話 紅梅の枝に鳥一双 徒然草66

文字数 941文字

□岡本 関白殿、盛りの紅梅の枝に、鳥一双を添えて、この枝に付けて君に進呈申し上げるよう、御鷹飼 下毛野武勝にお命じなされたのだが、「花に鳥を付けるというのは、まったく知り候いません。一枝に二つ鳥を付けることも、存知あげません」と申しあげたので、関白は膳部係にも尋ねられ、また他の人々に問わされたうえで、また武勝に、「さらば、おのれが思うように付けて進上してみろ」と仰せられたので、花もない梅の枝に鳥一つを付け進上させられたのである。武勝が申しますには、「柴の枝、梅の枝、蕾のあるものと散ったものに付ける。五葉松などにも付けてもいい。枝の長さは七尺、返し刀五分に切る。枝の半分位の所に鳥を付ける。付ける枝、踏ませる枝がある。つる性の藤の割れのないもので、二か所に付けるべきである。藤の先端は、鷹の羽の長さに合わせて切って、牛の角のようにたわめておく。初雪の朝、枝を肩に懸けて、中門より厳かに振舞って参上する。大雨垂れ石を伝って、雪に跡を付けず鷹の風切り羽の付け根を覆う短い毛を少しむしって庭に散らし、二棟の御所の高欄に寄せ掛ける。祝儀を出されたならば、肩に懸けて、拝礼して退く。初雪といへども、沓の先が隠れないほどの雪では参上しない。鷹の短い毛を散らすのは、鷹は弱腰を獲るので、飼育している御鷹が取ったという趣向である」と申したのである。「花に鳥付けず」とは、どんな理由があるのだろうか、九月という時期に梅の作り枝に雉を付けて、「君がためにと折る花は時をも分からないのでしょう」と言うのは、伊勢物語に見ることができる。造花で差し支えないのだろうか。
※飛ぶ鳥落とす勢いの関白殿の命令に、背いてまで、従来のやり方はこうであると主張する武勝はまさに名前の通り、関白だろうが負けてなるかという気概があるのであろうか。梅の花は雪の降るときはまだ咲かない。蕾くらいは付いているだろう。武勝は梅の蕾ならありうるという。何しろ花の付かない木の枝に雉を括り付け、さも御所も飼っている鷹が捕まえた鳥で御座いますと君に思わせるよう、芸が細かいですね昔の人は兼好先生は雪降るときであれば梅の造花でもいいのかと皮肉っておられるのでしょうか。関白殿と武勝のこのやり取りは、史実に基づいているのでしょうか先生。
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