第201話 女の人が憚ることがある時分に 徒然草104 

文字数 1,102文字

□荒れたる宿の、人目のない所で、女の人が憚ることがある時分で、所在なく籠って居たのを、ある人が、お見舞いされようと、夕月夜のおぼつかない頃に、忍んで尋ねていらっしゃったところ、犬が騒々しく咎めるので、下女が出て、「いづくよりぞ」と言うに、やがて案内させて、家にお入りなった。心細げなるありさまで、どうやって過しているのだろうかと、いと心苦しく思われる。そまつな板敷にしばし立っておられたが、落ち着いた気配の、若々しい、「こなたへ」と言う人があるので、たて閉め狭そうな遣戸よりお入りになった。室内のさまは、それほど荒れてはおらず、心にくく、火は向こうに仄かであれど、物がきらびやかに見えて、俄に焚いたのではない匂いもし、大層心惹かれるような感じでお住みになっている。「門よくお閉めなさい。雨もぞ降るかもしれない。御車は門の下に入れ、御供の人はそこそこに休ませなさい」と言えば、「今宵ぞ安して寝られそう」と女たちが囁くのも、忍び声でいうけれど、近いので、かすかに聞こえてくる。さて、この頃の出来事などを細やかに話されているのが聞え給うに、夜深いのに鶏も鳴きぬ。来し方行く末かけてまめやかなる御物語に、このたびのは鶏も華やかな声で騒ぐので
夜が明けはなれたのだろうかとお聞きになるが、夜深いうちに急ぎ帰るべき所でもないようなので、少しゆっくりされ給えるに、梢も白んできたので、あなたのことを忘れがたいなど言いて立ち出で給うに、梢も庭もめづらしく青みわたり卯月だからこその曙、艶なまめかしい風情があるを思い出だされて、高い桂の木の大きなのが隠れるまで、今も見送り給うということです。
※当時は風流とう心があったのでしょう。現代にはかけている気がしますが。上流階級のやんごとなきお方と位の高い女性とのお話でしょう。この場だけではなく、以前にお二人の何らかの出会いがあり、心にくからず、お互い思われていたのでしょう。源氏物語は読んだことはありませんが、優雅ななかの人間関係というますか、ま美化された所もあるのでしょうが。あとは読者の想像に任せますと言うことなのでしょうか。はっきりこうなんだよと話して貰ったほうが、現代人には分かり易いですね。いまや、何でもカンでも、マスコミにあばかれ、散々な目に遭っている高貴なかたも、いらっしゃる。真子様も、昔なら、あのようなバッシングを受けなかったでしょう。昔の天皇も側女などを侍らせ、皇位継承者がいなくなる危険はなかったでしょう。時代によってルールは違ってきて当然です。これが悪かったと過去に遡ってまでは、罰を下すことは出来ません。既に亡くなった方を鞭打つことは不可能です。
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