第184話 4回戦(27) Final Round
文字数 1,395文字
ボルサリーノがアイゼンに向けて手を伸ばしたことは、タンザにも分かった。首にかかる重みが右に移動したからだ。同時に、アイゼンの足が自分のアゴめがけて飛んできたことにも気づく。
ーー右腕で撃墜する。
ボルサリーノが動いたため、タンザの鈴の防御はおろそかになっている。後0.1秒でも早く気づけば防御を優先したかもしれないが、タンザは反射的に、右拳をアイゼンに撃ち下ろした。アイゼンは足を届かせるために全身を伸ばしている。完全な無防備だ。タンザの右拳が、アイゼンの左腕を巻き込んで、まともに肋骨をぶち抜いた。
ーーカハッ!
息ができないほどの衝撃。だが、アイゼンの伸ばした左足は、目標通り、タンザの首に巻かれているボルサリーノの腕を蹴り上げる。
「ああっ」
ボルサリーノの巻きついた左腕は、蹴飛ばされて離される。
タンザの鈴が無防備になる。
ギンジロウは見逃さない。
本気の一撃を仕掛けにいく。
タンザには、アイゼンを撃ち落とした右腕を戻すほどの時間はない。
しかし、喧嘩の天才だ。殴った勢いを利用して、左肩をギンジロウに突き出した。こうすれば鈴は奪られない。
ボルサリーノは完全にタンザから離れたが、体を伸ばす。
アイゼンの尻尾を掴まえる。
ーー取ったでヤンス。
タンザには竹刀を持ったギンジロウが突撃する。
凄まじい気迫だ。
だが、鈴を守るためだ。タンザは避けずに肩で受け止める。
ギンジロウの90キロの体重の全てが猛スピードの剣先に込められる。もちろん怪我はするだろう。左腕は上がらなくなるかもしれない。だが、それでも仕切り直しにさえなれば、タンザはギンジロウに勝つ自信がある。
ーー耐えて、体勢を整えて、攻撃だ。
ギンジロウが射程距離に飛び込む。
その瞬間、タンザの右拳が勝手に動いた。
ーーSV!
タンザは足でしかスーパー・ヴェローチェを発動できないと騙し続けていたが、実は腕でも発動できる。隠し球として取っておいた腕でのスーパー・ヴェローチェを、思わず発動させてしまう。
ーー殺気!
ギンジロウが思った時には、予備動作のないハンマーのようなタンザの右の一撃が、ギンジロウの胸を強く砕いていた。
そして同時に、防御と引き換えに伸ばしたギンジロウの片手突きは、剣士の魂を乗せ、見事に巨獣の鈴を弾き飛ばしていた。右拳が飛んできたために一瞬だけ開いたタンザの鈴への軌道。そこへ、寸分の狂いもない一撃を突き込んだのだ。
ーー俺の目を狙ってきやがった。
タンザの鈴は、放物線を描いて川の中へと落ちた。
タンザの敗因は、根っからの戦闘マシーンだったことにあった。鈴を奪われまいと策を練ったが、ギンジロウが鈴ではなくタンザの左目を突き抜こうとしてきたので、つい殺気に反応し、体が勝手に攻撃をしてしまっていた。
サオリやアイゼンの攻撃だったら耐えようと思っただろう。だが、何度も死線を超えてきたギンジロウの突きは、タンザに一生残る傷を与える可能性が高かった。ギンジロウの殺気に対して、1ミリも躊躇する余裕がなかった。
殺し合いが当然の社会で生きていた日々が、ゲームを忘れてタンザの体を動かしてしまった敗因となった。
「41分11秒。ネコチーム。リリウス・ヌドリーナ。ビンゴ。13秒。タンザ。同13秒。ネズミチーム。ダビデ王の騎士団。ラーガ・ラージャ。3人同時にアウトだー!」
ジョニー・デップが右拳を突き上げて叫んだ。
ーー右腕で撃墜する。
ボルサリーノが動いたため、タンザの鈴の防御はおろそかになっている。後0.1秒でも早く気づけば防御を優先したかもしれないが、タンザは反射的に、右拳をアイゼンに撃ち下ろした。アイゼンは足を届かせるために全身を伸ばしている。完全な無防備だ。タンザの右拳が、アイゼンの左腕を巻き込んで、まともに肋骨をぶち抜いた。
ーーカハッ!
息ができないほどの衝撃。だが、アイゼンの伸ばした左足は、目標通り、タンザの首に巻かれているボルサリーノの腕を蹴り上げる。
「ああっ」
ボルサリーノの巻きついた左腕は、蹴飛ばされて離される。
タンザの鈴が無防備になる。
ギンジロウは見逃さない。
本気の一撃を仕掛けにいく。
タンザには、アイゼンを撃ち落とした右腕を戻すほどの時間はない。
しかし、喧嘩の天才だ。殴った勢いを利用して、左肩をギンジロウに突き出した。こうすれば鈴は奪られない。
ボルサリーノは完全にタンザから離れたが、体を伸ばす。
アイゼンの尻尾を掴まえる。
ーー取ったでヤンス。
タンザには竹刀を持ったギンジロウが突撃する。
凄まじい気迫だ。
だが、鈴を守るためだ。タンザは避けずに肩で受け止める。
ギンジロウの90キロの体重の全てが猛スピードの剣先に込められる。もちろん怪我はするだろう。左腕は上がらなくなるかもしれない。だが、それでも仕切り直しにさえなれば、タンザはギンジロウに勝つ自信がある。
ーー耐えて、体勢を整えて、攻撃だ。
ギンジロウが射程距離に飛び込む。
その瞬間、タンザの右拳が勝手に動いた。
ーーSV!
タンザは足でしかスーパー・ヴェローチェを発動できないと騙し続けていたが、実は腕でも発動できる。隠し球として取っておいた腕でのスーパー・ヴェローチェを、思わず発動させてしまう。
ーー殺気!
ギンジロウが思った時には、予備動作のないハンマーのようなタンザの右の一撃が、ギンジロウの胸を強く砕いていた。
そして同時に、防御と引き換えに伸ばしたギンジロウの片手突きは、剣士の魂を乗せ、見事に巨獣の鈴を弾き飛ばしていた。右拳が飛んできたために一瞬だけ開いたタンザの鈴への軌道。そこへ、寸分の狂いもない一撃を突き込んだのだ。
ーー俺の目を狙ってきやがった。
タンザの鈴は、放物線を描いて川の中へと落ちた。
タンザの敗因は、根っからの戦闘マシーンだったことにあった。鈴を奪われまいと策を練ったが、ギンジロウが鈴ではなくタンザの左目を突き抜こうとしてきたので、つい殺気に反応し、体が勝手に攻撃をしてしまっていた。
サオリやアイゼンの攻撃だったら耐えようと思っただろう。だが、何度も死線を超えてきたギンジロウの突きは、タンザに一生残る傷を与える可能性が高かった。ギンジロウの殺気に対して、1ミリも躊躇する余裕がなかった。
殺し合いが当然の社会で生きていた日々が、ゲームを忘れてタンザの体を動かしてしまった敗因となった。
「41分11秒。ネコチーム。リリウス・ヌドリーナ。ビンゴ。13秒。タンザ。同13秒。ネズミチーム。ダビデ王の騎士団。ラーガ・ラージャ。3人同時にアウトだー!」
ジョニー・デップが右拳を突き上げて叫んだ。