第69話 1回戦(7) First Round
文字数 1,550文字
屋根の上のカンショウは、ビンゴによって掴み落とされた。宙に飛んでいたボルサリーノは、手足をばたつかせて屋根に近づいていく。
だが、カンショウが落とされた瞬間、監視していたジャクジョウが走り込む。
ーーとられた尻尾は仕方がない。すぐに鈴を取り返す。
ジャクジョウは、ボルサリーノの落下予測地点に到着し、万全の構えでボルサリーノを待ち構えた。
「SV」再びタンザがつぶやく
ドンッ!!
爆発音とともに、今度は、タンザの巨体が跳びあがった。人間の身体能力的な動きではない。ロケットのように予備動作のない動きだ。そんなに膝を曲げていないのに、4メートルはある高さの屋根まで、一気に跳躍する。
タンザは、ジャクジョウから3メートルほど離れた位置に降りたった。
ーーそんなバカな!
振り返ったジャクジョウの顔色が青ざめる。思考が停止する。体が止まる。攻撃する機を逸する。あまりにも予想外だったからだ。
「さてと」タンザはゆっくりと向き直った。
「お仕置きの時間だ」
ジャクジョウはタンザに睨まれ、目を離すことができない。
ーーボルサリーノだけでも片付けたかった。だが、目を離したらやられてしまう。
ボルサリーノは屋根の突起にかろうじて掴まり、まるでバネのように潰れて落ちた。3回のバウンド。だが、すぐに立ちあがる。自重が軽いからだろうか。傷を負うどころか、体が痺れてすらいないようだ。
カンレンは屋根の反対側から、この危機にすぐ気がついた。
ーー寂乗が囲まれたか!! これは他のチームの監視をしている場合ではない。全員が上がってきて、バトルロイヤルの相をていしても構わない。寂乗を助けに行かねばならぬ。
機を見るに敏。カンレンはジャクジョウを助けにいくことにした。
ーージャクジョウも強い。自分より大きな者と戦うことが初めてだとはいえ、1対1ならばタンザにも遅れはとるまい。その間に拙僧がボルサリーノの鈴を奪れば、一瞬で攻守交代だ。我々の圧倒的有利な状況に変わる!!
「23分3秒。ネズミチーム。真言立川流。観蓮。アウトー!!」
ーーえっ?
ドーマウスのアナウンスが信じられない。カンレンは振り向いた。
オポポニーチェが柱に捕まりながら、屋根までよじ登ってきている。
左手には、もぎ取ったばかりのカンレンの尻尾を持っている。クルクルと回して得意げだ。
「オーポポポポ。観蓮さん。あなた、油断しすぎですよ」
回している尻尾には赤い蝶ネクタイがついている。オポポニーチェがつけたのだろう。オポポニーチェは、カンレンに尻尾を差し出した。
ーーえっ?
振り返ると、オポポニーチェが屋根に登っている右足の膝から下がかろうじて見えた。サオリは、目の前の光景が信じられなかった。
ーー何が起きたの?
オポポニーチェたちが乗っていたティーカップを見る。フォーとシザーがふざけた格好で乗っている。だが、オポポニーチェはいない。
ーーえー。どーしてー?
「ビッコ引いてたのに、どうやって登ったのー?」キーピルが首をひねる。
「おじさんが柱よじ登ってるの、僕は見たよ!」アカピルが柱を指差す。
ーーなんで教えてくれなかったの?
「みんな見えてると思ってたー」アカピルも首を捻る。
ーー全くわからなかった。手品おじさん凄い。もしアタピのとこに来てたら、アタピ、やられてたかも。
「じゃあ、次にサオリのとこ来たら教えてあげるね!」アカピルが踏んぞりかえって答えた。
「手品にはタネも仕掛けもあるもんだからな」ミドピルは、見えていなかったくせに知ったかぶった。
こうなると屋根の上の様子を見たくなる。邪魔さえされなければ、高いところに登るのは朝飯前だ。
走り、近くの柵を蹴った。
柱を登り、屋根からおりている直垂をつかむ。
クルッと一回転。
サオリは、3秒で屋根の上にあがった。
だが、カンショウが落とされた瞬間、監視していたジャクジョウが走り込む。
ーーとられた尻尾は仕方がない。すぐに鈴を取り返す。
ジャクジョウは、ボルサリーノの落下予測地点に到着し、万全の構えでボルサリーノを待ち構えた。
「SV」再びタンザがつぶやく
ドンッ!!
爆発音とともに、今度は、タンザの巨体が跳びあがった。人間の身体能力的な動きではない。ロケットのように予備動作のない動きだ。そんなに膝を曲げていないのに、4メートルはある高さの屋根まで、一気に跳躍する。
タンザは、ジャクジョウから3メートルほど離れた位置に降りたった。
ーーそんなバカな!
振り返ったジャクジョウの顔色が青ざめる。思考が停止する。体が止まる。攻撃する機を逸する。あまりにも予想外だったからだ。
「さてと」タンザはゆっくりと向き直った。
「お仕置きの時間だ」
ジャクジョウはタンザに睨まれ、目を離すことができない。
ーーボルサリーノだけでも片付けたかった。だが、目を離したらやられてしまう。
ボルサリーノは屋根の突起にかろうじて掴まり、まるでバネのように潰れて落ちた。3回のバウンド。だが、すぐに立ちあがる。自重が軽いからだろうか。傷を負うどころか、体が痺れてすらいないようだ。
カンレンは屋根の反対側から、この危機にすぐ気がついた。
ーー寂乗が囲まれたか!! これは他のチームの監視をしている場合ではない。全員が上がってきて、バトルロイヤルの相をていしても構わない。寂乗を助けに行かねばならぬ。
機を見るに敏。カンレンはジャクジョウを助けにいくことにした。
ーージャクジョウも強い。自分より大きな者と戦うことが初めてだとはいえ、1対1ならばタンザにも遅れはとるまい。その間に拙僧がボルサリーノの鈴を奪れば、一瞬で攻守交代だ。我々の圧倒的有利な状況に変わる!!
「23分3秒。ネズミチーム。真言立川流。観蓮。アウトー!!」
ーーえっ?
ドーマウスのアナウンスが信じられない。カンレンは振り向いた。
オポポニーチェが柱に捕まりながら、屋根までよじ登ってきている。
左手には、もぎ取ったばかりのカンレンの尻尾を持っている。クルクルと回して得意げだ。
「オーポポポポ。観蓮さん。あなた、油断しすぎですよ」
回している尻尾には赤い蝶ネクタイがついている。オポポニーチェがつけたのだろう。オポポニーチェは、カンレンに尻尾を差し出した。
ーーえっ?
振り返ると、オポポニーチェが屋根に登っている右足の膝から下がかろうじて見えた。サオリは、目の前の光景が信じられなかった。
ーー何が起きたの?
オポポニーチェたちが乗っていたティーカップを見る。フォーとシザーがふざけた格好で乗っている。だが、オポポニーチェはいない。
ーーえー。どーしてー?
「ビッコ引いてたのに、どうやって登ったのー?」キーピルが首をひねる。
「おじさんが柱よじ登ってるの、僕は見たよ!」アカピルが柱を指差す。
ーーなんで教えてくれなかったの?
「みんな見えてると思ってたー」アカピルも首を捻る。
ーー全くわからなかった。手品おじさん凄い。もしアタピのとこに来てたら、アタピ、やられてたかも。
「じゃあ、次にサオリのとこ来たら教えてあげるね!」アカピルが踏んぞりかえって答えた。
「手品にはタネも仕掛けもあるもんだからな」ミドピルは、見えていなかったくせに知ったかぶった。
こうなると屋根の上の様子を見たくなる。邪魔さえされなければ、高いところに登るのは朝飯前だ。
走り、近くの柵を蹴った。
柱を登り、屋根からおりている直垂をつかむ。
クルッと一回転。
サオリは、3秒で屋根の上にあがった。