第99話 2回戦(13) Second Round

文字数 1,090文字

 鈴を奪られたフォーとシザーは、スタッフによって外へと連れ去られていった。
 タンザは見送りながら、大きな息を吐いた。ビンゴが近づいてくる。
「やったな、ブラザー」
「ああ」2人はハイタッチを交わした。仲間の温もりは心が休まる。
「これからどうするんだ? 残りの2人を追っていくか?」ビンゴが尋ねる。タンザの言うことならば何でもやってやろうという顔だ。タンザは答えた。
「あと、残っているのはKOKの女どもか? 女子供には手を出したくねぇってのに、よりにもよって女の子供か。鈴2個。たった6点。来たら相手をしてやるが、来ねぇのに相手をする必要はあるまい。それが俺たち、ヌドランゲタってもんだ」
「その通りだな、ブラザー。俺もちょっと休みたいと思ってたんだ」ビンゴもホッとして笑顔を返した。
「来い。こっちで休もう」
 タンザは第2エリア、絵本の森へと戻った。
 強者どもの夢の跡。
 子供が散らかしたかのように、たくさんのオブジェが破れて散らばっている。もしも巨人のママがいたら、「お片付けしなさい!」と怒られるくらいだ。
 タンザは、ハニーポットの乗り場がよく見える位置まで下がり、手頃な鉄柵に腰を下ろした。アイゼンもサオリも、ハニーポット乗り場より先のエリアにいる。タンザたちに近づこうとするならば、目の前を通らなければいけない。そして目の前は、先ほどの戦闘で、視線を遮るオブジェが全て倒れている。
 ビンゴも、タンザの隣に来た。鉄の柵に腰を下ろし、いくつかしか残っていないページのオブジェに寄りかかる。鉄の柵がきしんでいる。ページのオブジェが悲鳴をあげている。
「ふぅ。1分ずつ休もう」2人は無言になった。1人が目を瞑って、しっかりと心身ともに休む。もう1人は見張る。張っていた気を休めることは、たった1分でも疲労回復効果が高い。
 機械音と音楽しか聞こえない。しばらく休む。

「40分経過だよー」プーさんのアナウンスだ。
 たった4分ずつの休憩だが、2人の気力と体力は回復してきた。
 ビンゴが口を開く。
「しかしブラザー。オポポニーチェは凄かったな。なんなんだ、ありゃ」
 タンザもずっと、その事を考えていた。ただ、喉が渇いている。唇が貼りつく。喋るのは億劫だ。
 ビンゴは話を続けた。
「だって、あんなことってあるか? ガイコツの兵隊が襲ってきたり、一瞬で一面イバラの森になったり。坊主の周りなんか、気持ち悪ぃ虫が大量発生してたぜ。あんな光景、見たことねー」ビンゴは興奮していた。勢いよく喋ることによって、恐怖を分散させようとしているのだろう。
ーーわかるぞ、お前の気持ちは。
 タンザは、ただ、うなづき続けた。 
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