第206話 特設ステージ(2) Castle Forecourt Stage
文字数 2,291文字
3分が経過した。
試合時間は残り半分。時間がない。このままでは判定でも負ける。
サオリは、自分からタンザに攻撃を仕掛けにいった。
素手での戦闘は、体格差がモノをいう。ほとんどの格闘技には階級がある。体重が少なければ、それだけで不利になる。
ボクシングでいえば、1階級は1〜3キロしか変わらない。だが、それだけでも階級が違うと勝てない。また、リーチも重要だ。10センチも違うと、相手の攻撃をほとんどもらわない戦い方ができる。
サオリとタンザの身長差は70センチ。体重差は5倍以上。素手でライオンと戦うようなものだ。サオリの軽さで殴っても、相手にダメージを与えることはできない。反対に殴られれば、一撃で、腕の一本は簡単に折れてしまう。普通だったら話にならない。
だが、サオリはモード・アルキメストを発動させている。リアルの全ての物理的な攻撃を受け付けない。頑丈さに関してはタンザに勝る。
いくら体重が軽くても、サオリの攻撃は、子供が金属バットをフルスイングしているようなものだ。そして耐久力は、40キロの鉄塊を殴りつけているようなものだ。
タンザも何度か攻撃しているうちに、サオリの異常な硬さに気づいた。今では、自分の拳や脛が壊れないように、攻撃の際は、平手打ちや喧嘩キックを多用するようになった。
おかげで、タンザの技は直線的になっている。
ーー捕まって、場外に投げられることだけ気をつければ。
サオリに、攻撃をする余裕が生まれる。
ーー目突きは届かないか。
サオリは、タンザの関節と金的を中心に狙った。
タンザも、そこだけは気をつけて防御している。たまにカスることはあるが、直撃ではないので、ダメージが残らない。
いくら金属バットが硬くても、子供の力では重さを乗せられない。それと同じことだ。
逆に、タンザの攻撃は痛くないが、カスれば重さが乗っているので、サオリは体ごと吹き飛ばされた。
ーー落ちないよーにしなきゃ。
サオリはなるべく、ステージの中央から動かないように戦い、タンザの攻撃のタイミングを見計らって、何度も、ストッピング・ストーンの発動を試してみた。
タンザの攻撃が来た瞬間にストッピング・ストーンが発動できれば、タンザは壁を思い切り殴るようなものだ。手足を破壊することができる。チャタローが考えた通りだ。
ーー今!
ーーここっ!!
何度も発動のタイミングを狙う。
だが、間に合わない。
ストッピング・ストーンは、今のサオリにとって、そこまで難しいものではい。だが、初めて使うので、発動速度が、実戦に使用できるレベルではない。
何度も失敗して飛ばされる。
速度を上げることにも努めているが、どんなに集中しても5秒が限界だ。
ーーダメだ。間に合わない。
残り時間は1分。
追い詰められた。
が、諦めない人間は、切羽詰まると脳が閃く。
サオリは、起死回生の策を思いついた。
タンザがいくら遺伝子改造をしているとはいえ、これだけの激戦だ。疲れが見え始めている。
ーーこのチャンスを狙う。
サオリは、ステージ中央から外れて、タンザの攻撃を誘った。
タンザは漢だ。普段は、リリウス・ヌドリーナの極東支部長として頭を働かせているが、元々は、竹を割ったように真っ直ぐな気性である。悔いは残したくない。
ーーこいつが望むなら、わざと負けるような真似はしねぇ。勝った後、改めてドクロをくれてやりゃあいい。
未来を選択する権利は、勝利者にしか与えられない。
ーー後1分か。全力で動けるな。
タンザはサオリを追った。攻撃を、ますます激しくする。
ドーン。
タンザの前蹴り。
サオリは、ステージの角まで吹き飛ばされた。角なので、左右に逃げることができない。このまま追撃をされたら、サオリは場外に弾き飛ばされる。
もちろん、この好機を逃すようなタンザではない。闘争本能に火がついている。
ーー逃がさねぇ。
タンザは、左右の隙間から逃げられないように両腕を広げ、攻撃した勢いを止めず、サオリに向かって走っていった。
もう逃げられない。
サオリは観念して腰を深く沈め、両手を前に突き出し、迎撃の構えをとった。
ーー思い切り撃って!
ーー受け止めるてことか?
残り10秒もない。これが最後の攻防になるだろう。
正面からのぶつかり合いを希望するサオリ。タンザは判定になれば勝てる。無理に攻める必要はない。だが、気持ちの良い戦い方をする。それが、タンザ・ドゥルベッコという漢だ。サオリの想いに応えない理由はない。
全力。
フルスイング。
ーー俺が勝ってもボルは殺さねぇ。あいつはダメなやつだが、俺たちの仲間だ。だから、安心して飛ばされな。
タンザの右腕から、スーパー・ヴェローチェが発動する。
ーー発動して!
サオリは、両手を突き出すことによって、タンザの攻撃を誘導していた。攻撃される前から、手のひらに意識が集中できている。
ーー時よ止まれ! ストッピング・ストーン!
「ニャー!!!」
サオリの手のひらで気体になっていた賢者の石は、気体から固体へと性質を変えた。
ーーSV!
スピード×体重×精密さ=攻撃力。タンザのスーパー・ヴェローチェは、破壊力がえげつない。20センチの厚さの鉄板ならたやすく貫く。スカイツリーでさえ、3時間あれば全壊させられるだろう。
だが、時の止まった賢者の石にたいし、その高い攻撃力は、仇となった。音速ジェット機が、最高速で地球に向かって突撃するようなものだ。
ブグググッッッ。
タンザの右腕は、紙屑のようにクシャクシャにへし折れた。サオリの小さな手形が、タンザの右拳を抜け、二の腕までを深々と貫いていった。
試合時間は残り半分。時間がない。このままでは判定でも負ける。
サオリは、自分からタンザに攻撃を仕掛けにいった。
素手での戦闘は、体格差がモノをいう。ほとんどの格闘技には階級がある。体重が少なければ、それだけで不利になる。
ボクシングでいえば、1階級は1〜3キロしか変わらない。だが、それだけでも階級が違うと勝てない。また、リーチも重要だ。10センチも違うと、相手の攻撃をほとんどもらわない戦い方ができる。
サオリとタンザの身長差は70センチ。体重差は5倍以上。素手でライオンと戦うようなものだ。サオリの軽さで殴っても、相手にダメージを与えることはできない。反対に殴られれば、一撃で、腕の一本は簡単に折れてしまう。普通だったら話にならない。
だが、サオリはモード・アルキメストを発動させている。リアルの全ての物理的な攻撃を受け付けない。頑丈さに関してはタンザに勝る。
いくら体重が軽くても、サオリの攻撃は、子供が金属バットをフルスイングしているようなものだ。そして耐久力は、40キロの鉄塊を殴りつけているようなものだ。
タンザも何度か攻撃しているうちに、サオリの異常な硬さに気づいた。今では、自分の拳や脛が壊れないように、攻撃の際は、平手打ちや喧嘩キックを多用するようになった。
おかげで、タンザの技は直線的になっている。
ーー捕まって、場外に投げられることだけ気をつければ。
サオリに、攻撃をする余裕が生まれる。
ーー目突きは届かないか。
サオリは、タンザの関節と金的を中心に狙った。
タンザも、そこだけは気をつけて防御している。たまにカスることはあるが、直撃ではないので、ダメージが残らない。
いくら金属バットが硬くても、子供の力では重さを乗せられない。それと同じことだ。
逆に、タンザの攻撃は痛くないが、カスれば重さが乗っているので、サオリは体ごと吹き飛ばされた。
ーー落ちないよーにしなきゃ。
サオリはなるべく、ステージの中央から動かないように戦い、タンザの攻撃のタイミングを見計らって、何度も、ストッピング・ストーンの発動を試してみた。
タンザの攻撃が来た瞬間にストッピング・ストーンが発動できれば、タンザは壁を思い切り殴るようなものだ。手足を破壊することができる。チャタローが考えた通りだ。
ーー今!
ーーここっ!!
何度も発動のタイミングを狙う。
だが、間に合わない。
ストッピング・ストーンは、今のサオリにとって、そこまで難しいものではい。だが、初めて使うので、発動速度が、実戦に使用できるレベルではない。
何度も失敗して飛ばされる。
速度を上げることにも努めているが、どんなに集中しても5秒が限界だ。
ーーダメだ。間に合わない。
残り時間は1分。
追い詰められた。
が、諦めない人間は、切羽詰まると脳が閃く。
サオリは、起死回生の策を思いついた。
タンザがいくら遺伝子改造をしているとはいえ、これだけの激戦だ。疲れが見え始めている。
ーーこのチャンスを狙う。
サオリは、ステージ中央から外れて、タンザの攻撃を誘った。
タンザは漢だ。普段は、リリウス・ヌドリーナの極東支部長として頭を働かせているが、元々は、竹を割ったように真っ直ぐな気性である。悔いは残したくない。
ーーこいつが望むなら、わざと負けるような真似はしねぇ。勝った後、改めてドクロをくれてやりゃあいい。
未来を選択する権利は、勝利者にしか与えられない。
ーー後1分か。全力で動けるな。
タンザはサオリを追った。攻撃を、ますます激しくする。
ドーン。
タンザの前蹴り。
サオリは、ステージの角まで吹き飛ばされた。角なので、左右に逃げることができない。このまま追撃をされたら、サオリは場外に弾き飛ばされる。
もちろん、この好機を逃すようなタンザではない。闘争本能に火がついている。
ーー逃がさねぇ。
タンザは、左右の隙間から逃げられないように両腕を広げ、攻撃した勢いを止めず、サオリに向かって走っていった。
もう逃げられない。
サオリは観念して腰を深く沈め、両手を前に突き出し、迎撃の構えをとった。
ーー思い切り撃って!
ーー受け止めるてことか?
残り10秒もない。これが最後の攻防になるだろう。
正面からのぶつかり合いを希望するサオリ。タンザは判定になれば勝てる。無理に攻める必要はない。だが、気持ちの良い戦い方をする。それが、タンザ・ドゥルベッコという漢だ。サオリの想いに応えない理由はない。
全力。
フルスイング。
ーー俺が勝ってもボルは殺さねぇ。あいつはダメなやつだが、俺たちの仲間だ。だから、安心して飛ばされな。
タンザの右腕から、スーパー・ヴェローチェが発動する。
ーー発動して!
サオリは、両手を突き出すことによって、タンザの攻撃を誘導していた。攻撃される前から、手のひらに意識が集中できている。
ーー時よ止まれ! ストッピング・ストーン!
「ニャー!!!」
サオリの手のひらで気体になっていた賢者の石は、気体から固体へと性質を変えた。
ーーSV!
スピード×体重×精密さ=攻撃力。タンザのスーパー・ヴェローチェは、破壊力がえげつない。20センチの厚さの鉄板ならたやすく貫く。スカイツリーでさえ、3時間あれば全壊させられるだろう。
だが、時の止まった賢者の石にたいし、その高い攻撃力は、仇となった。音速ジェット機が、最高速で地球に向かって突撃するようなものだ。
ブグググッッッ。
タンザの右腕は、紙屑のようにクシャクシャにへし折れた。サオリの小さな手形が、タンザの右拳を抜け、二の腕までを深々と貫いていった。