第164話 4回戦(7) Final Round

文字数 1,344文字

 アイゼンとタンザが黄金薔薇十字団と戦っている。サオリは要塞の城壁に隠れて見下ろしていた。アイゼンとタンザは誰もいないバトーの真ん中目掛けて攻撃を仕掛けている。後ろのバトーにいるオポポニーチェとシザーには気づいていない。
ーー幻覚。今夜は君に決まりだぜ!
 サオリは、幻覚が本当に存在することを認識した。クマオやピョーピルと共に作戦は練ってある。要塞内を漁って用意も万端。あとはやるだけだ。ウズウズして仕方ない。
「エスゼロちゃーん! 今はクライマックスよーん。主役が出てこないでどうすんのー?」オポポニーチェはアイゼンとタンザに構わずサオリを呼んでいる。
ーーアタピ、オポさんに呼ばれてる。
 敵とはいえ実力者に認められることは嬉しい。
ーーアイちゃん。オポさんは後ろのバトーにいるよ。
 サオリは海賊船長の帽子をかぶり、城壁の上に足をかけ、湾曲した長刀をオポポニーチェに向けた。こうすることによって、サオリから見えているオポポニーチェの位置をアイゼンに知らせる。
 いよいよ作戦開始だ。
「大海賊オポポニーチェ! アタピはこ、こ!!」いつもの小さな声ではない。BGMを切り裂き、はっきりとオポポニーチェの耳に届く。腹式呼吸を応用して、声を槍のように目標へと突き刺す仙術、寒月を仰ぐ鶴の一声だ。
「ワーワー」ピョーピルたちも要塞から突き出てている4門の砲台の上に乗り、それぞれが鬨の声を上げる。
「ヤンスヤンスー」キーピルはボルサリーノの真似だ。
「やってやる」一番声の太いミドピルがビンゴ役を買ってでた。
「ワイはイノギンやでー」クマオも頭にバンダナを巻いて意気揚々としている。
 オポポニーチェ以外には見聞きできないピョーピルたちを利用した陽動作戦だ。 参加者のモノマネをさせることで、誰がいるのかを分からなくさせる効果もある。
ーーあら楽しい。そうよ。芸術を分かっているのは沙織ちゃん、貴方だけよ。
「そうこなくてはいけません。オーッポッポッポッポッポ」あまりに嬉しくなりすぎて、オポポニーチェは自然と大声で笑っていた。
 幻影を相手に踊っていたアイゼンは、オポポニーチェの正確な位置を知る。ただし、サオリも幻術にかけられている可能性がある。もしくは、自分が見ているサオリが幻術である可能性も否定できない。
ーーただ奪られなければいい。
 アイゼンは深追いをせず、その場でしっかりと自分の尻尾を守ることにした。
 オポポニーチェにとって、アイゼンやタンザは安全圏だ。今のところどうでもいい。それよりも要塞の上にいるサオリにもエリクシール・ポワゾンを発動させなければならない。
ーーサオリちゃん以外、誰がいるのかしら。
 声はすれども姿は見えず。
ーー一応みんなの声はしましたけど。どうなのでしょう。
 エリクシール・ポワゾンは相手を認識できないと発動できない。見えているのはサオリだけ。あとは普通に考えたら、同じチームのギンジロウは一緒にいる可能性が高い。ただ、白手袋をつけた細腕が城壁の隙間から見える。ボルサリーノがいるのかもしれない。
ーー見えたらその都度修正しましょう。
 オポポニーチェはとりあえず、サオリとアイゼンとタンザの幻覚を同期した。アイゼンとタンザは、突然、オポポニーチェが後方のバトーに瞬間移動したように感じた。
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