第77話 休息(2) Rest
文字数 1,562文字
他のチームのクラシックカーも、Club33には戻らない。それぞれの控室へと向かっていく。
黄金薔薇十字団は、ビッグサンダーマウンテンのあるウエスタンランド・エリアへ。
真言立川流は簡単な治療が施された後、スペースマウンテンのあるトゥモローランド・エリアへ。
だが、身体検査を終えたリリウス・ヌドリーナだけは、残されているダークグリーンのクラシックカーに案内されなかった。
「こちらです」ピンクのドレスを着たお姫様が先導して歩く。
ーーんーだ? 俺たちには、車が用意されてねーのか?
疑問はすぐに解決した。
お姫様は、イッツ・ア・スモールワールドにある、ハートが描かれた大きな扉へと一行を案内したのだ。
徒歩1分もいらない。まさに目の前。
近いので、車に乗るまでもなかったのだ。
ーー気がきいてんじゃん。
タンザたちは 紫色のウサギのキャラクターが立っている扉に向かった。
だが、扉の先には3階までの長い階段が続いているということを、まだタンザとビンゴは知らなかった。
「試合よりも辛ぇな」
文句を言いながら3人は階段を上りきる。目の前にはガラス扉。タンザたちにとっては狭い扉を抜けると、カウンターがあり、ドリンクが置いてある。気を利かせてくれたのだろう。赤ワインや、ピザやパスタが並んでいる。
ーーこいつぁ、退屈しねぇですみそうだな。
タンザはワイン1瓶とピザを手に取り、先へ進んだ。
奥は、白を基調とした広めの応接間になっている。デパートの商談ルームに置かれているような応接セットが3セット用意されているが、椅子が一般人向けだ。小さすぎる。日本では、大体のものが170センチの人間を基準として作られている。2メートルを超えているタンザとビンゴは座れない。
「ホスピタリティってもんがわかってねーな」
2人は文句を言いながら休める場所を探した。
テレビには、時間とカウンターが流れている。
現在の時刻は、0時41分だ。
隣にはスケジュールも映し出されている。1時06分に次の試合会場が発表され、1時45分に係が迎えにくる予定らしい。
「ぷふぁ」
タンザは大きくため息をつき、5人は座れる長椅子を占領した。ビンゴはクッションをかき集めて机に並べ、その上に腰掛けた。手足が異常に長い。スタイルがよく見えるが、こういう時は邪魔だ。
「やったな、兄弟」ビンゴは、パスタを一皿、フォークも使わず口に放り込み、嬉しそうに言った。
部屋の端と端。離れた距離にも関わらず、2人は声も態度も大きい。
ボルサリーノは、所在なく立っていた。
「おい。ボル」タンザが低い声で呼ぶ。
「な、なんでやんしょ?」
「やるじゃねーか」
「あ、ありがとうでやんす」ボルサリーノは、まさか褒められるとは思わなかったので驚いた。
「次もよろしく頼むぞ」
「は、はいでやんす!」
「少し休んどけ」
ボルサリーノは、タンザに認められているようで嬉しかった。が、ビンゴが水を差す。
「万が一、お前のせいで負けるようなことがあれば、紳士の国に連れ帰り、紳士らしくオシャレに、コロンビアンネクタイを締めてやるからな」
コロンビアンネクタイとは、人の喉元を切り裂き、その傷口から舌を引っ張り出して殺すという残酷な処刑方法である。
ーーひ、ひい……。
ボルサリーノは、肛門括約筋がゆるむほどの恐怖を感じた。
「と、トイレに行ってくるでやんす」
ボルサリーノは、ここにいることでさえ恐ろしくなり、トイレを口実にラウンジを飛び出した。
「ま、万が一にもそんなことはねー! 安心しとけ! はーっはっは」
「ふーっふっふ」
ビンゴとタンザが笑っている声など耳に入らない。ボルサリーノは夜のディズニーランドを、気持ちが落ち着くまで歩き続けることにした。人間は肉体を休ませることよりも、精神を安らげることが体力を回復させる。
黄金薔薇十字団は、ビッグサンダーマウンテンのあるウエスタンランド・エリアへ。
真言立川流は簡単な治療が施された後、スペースマウンテンのあるトゥモローランド・エリアへ。
だが、身体検査を終えたリリウス・ヌドリーナだけは、残されているダークグリーンのクラシックカーに案内されなかった。
「こちらです」ピンクのドレスを着たお姫様が先導して歩く。
ーーんーだ? 俺たちには、車が用意されてねーのか?
疑問はすぐに解決した。
お姫様は、イッツ・ア・スモールワールドにある、ハートが描かれた大きな扉へと一行を案内したのだ。
徒歩1分もいらない。まさに目の前。
近いので、車に乗るまでもなかったのだ。
ーー気がきいてんじゃん。
タンザたちは 紫色のウサギのキャラクターが立っている扉に向かった。
だが、扉の先には3階までの長い階段が続いているということを、まだタンザとビンゴは知らなかった。
「試合よりも辛ぇな」
文句を言いながら3人は階段を上りきる。目の前にはガラス扉。タンザたちにとっては狭い扉を抜けると、カウンターがあり、ドリンクが置いてある。気を利かせてくれたのだろう。赤ワインや、ピザやパスタが並んでいる。
ーーこいつぁ、退屈しねぇですみそうだな。
タンザはワイン1瓶とピザを手に取り、先へ進んだ。
奥は、白を基調とした広めの応接間になっている。デパートの商談ルームに置かれているような応接セットが3セット用意されているが、椅子が一般人向けだ。小さすぎる。日本では、大体のものが170センチの人間を基準として作られている。2メートルを超えているタンザとビンゴは座れない。
「ホスピタリティってもんがわかってねーな」
2人は文句を言いながら休める場所を探した。
テレビには、時間とカウンターが流れている。
現在の時刻は、0時41分だ。
隣にはスケジュールも映し出されている。1時06分に次の試合会場が発表され、1時45分に係が迎えにくる予定らしい。
「ぷふぁ」
タンザは大きくため息をつき、5人は座れる長椅子を占領した。ビンゴはクッションをかき集めて机に並べ、その上に腰掛けた。手足が異常に長い。スタイルがよく見えるが、こういう時は邪魔だ。
「やったな、兄弟」ビンゴは、パスタを一皿、フォークも使わず口に放り込み、嬉しそうに言った。
部屋の端と端。離れた距離にも関わらず、2人は声も態度も大きい。
ボルサリーノは、所在なく立っていた。
「おい。ボル」タンザが低い声で呼ぶ。
「な、なんでやんしょ?」
「やるじゃねーか」
「あ、ありがとうでやんす」ボルサリーノは、まさか褒められるとは思わなかったので驚いた。
「次もよろしく頼むぞ」
「は、はいでやんす!」
「少し休んどけ」
ボルサリーノは、タンザに認められているようで嬉しかった。が、ビンゴが水を差す。
「万が一、お前のせいで負けるようなことがあれば、紳士の国に連れ帰り、紳士らしくオシャレに、コロンビアンネクタイを締めてやるからな」
コロンビアンネクタイとは、人の喉元を切り裂き、その傷口から舌を引っ張り出して殺すという残酷な処刑方法である。
ーーひ、ひい……。
ボルサリーノは、肛門括約筋がゆるむほどの恐怖を感じた。
「と、トイレに行ってくるでやんす」
ボルサリーノは、ここにいることでさえ恐ろしくなり、トイレを口実にラウンジを飛び出した。
「ま、万が一にもそんなことはねー! 安心しとけ! はーっはっは」
「ふーっふっふ」
ビンゴとタンザが笑っている声など耳に入らない。ボルサリーノは夜のディズニーランドを、気持ちが落ち着くまで歩き続けることにした。人間は肉体を休ませることよりも、精神を安らげることが体力を回復させる。