第162話 4回戦(5) Final Round
文字数 1,477文字
間もなく第5エリアを抜ける。イソギンチャクの化け物のような船長の顔が目の前の霧に大きく投影される。船長は口を開いた。
「我が名はデイビー・ジョーンズ。お前らが勇敢かバカならば歯向かってこい。用意してやろう。海賊の呪いをたんまりと詰め込んだ試練をな」カリブの海賊の仇役、デイビー・ジョーンズだ。
誰も一言も発さない。言われるまでもない。全員が覚悟を決めている。黄金色のバケモノを討伐し、自分たちのチームを勝利に導く。その覚悟を。
霧を突き抜ける。勇ましい音楽に変わる。煉瓦造りの要塞を攻める海賊船たち。
第6エリア。海上戦ステージ。黄金薔薇十字団と雌雄を決するにふさわしい戦場だ。
サオリたちの乗っているバトーの左側に、船の残骸が揺蕩っている。アイゼンとタンザは立ち上がる。エリアに入ったと同時に、最大戦力でオポポニーチェを待ち構える作戦だ。まずはタンザが船の残骸の上に移動する。200キロがいなくなったバトーが大きく傾く。凄い揺れだ。その揺れを利用して、アイゼンは軽々と残骸へ跳んだ。
ーーおっとと。
サオリは手すりを掴んでことなきを得た。トリコーンとカットラスはすでに装着済み。決戦の準備はできている。ギンジロウ、ビンゴ、ボルサリーノは降りない。バトーに乗ったままだ。サオリは、自分がどこまで乗っていていいのか不安になった。でも、今さら作戦について聞くことは恥ずかしい。
ーーポーカーフェイスしよ。
「どこで降りるの?」サオリは、ぶっきらぼうな顔をしてギンジロウに尋ねた。
「ラーガ・ラージャから詳細な策を受け取ってるでしょ? それを実行するだけさ」緊張した面持ちでギンジロウは教えてくれる。
ーー受け取ってない……。
サオリは心の中でうなだれた。
「白ヤギさんから届いたお手紙なら黒ヤギさんが食べちゃったよ!」キーピルが場の雰囲気を読まずに楽しそうだ。
海上戦ステージでは、キャラック型の海賊船が大砲を撃ちながら砦を攻めている。砦からも大砲を撃ち返す。水に跳ねる砲弾の着弾。飛び交う銃弾と怒号。戦いの真っただ中をバトーは進む。
「俺たちはここだな」ビンゴとボルサリーノもバトーから跳び降り、一番目立つ海賊船に登っていった。後はサオリとギンジロウの2人だけだ。策略を貰っていないサオリは自分で考えなくてはならない。
ーーんと、陽動陽動……。
ビンゴとボルサリーノが攻撃をするので、そのタイミングでオポポニーチェの注意をそらせる必要がある。
ーーということは……。
サオリは海賊船の反対を見た。
要塞。
ーーここだ。
サオリはピンときた。海賊船の反対側で囃し立てたら、流石のオポポニーチェもこちらが気になる。ビンゴとボルサリーノに対する警戒心は減少するだろう。
思ったら迷わない。サオリは勢いをつけ、自分の倍以上の高さの要塞を一気によじ登った。
要塞の上から戦場を見渡す。海上戦ステージの入口にはアイゼンとタンザ。真ん中の海賊船にはビンゴとボルサリーノ。ギンジロウはバトーに乗ったまま次のエリアへと進んでいく。
ーーしっかし……。
サオリは要塞の壁の出っ張りに足をかけ、片手を額に当て、遠くを見通す格好をした。高いところから見下ろすと気分が良い。
「沙織。どんな策があんのや?」クマオは興味津々だ。丸い尻尾を振りながら聞いてくる。
「えとね……」
海を挟んで反対側にいるビンゴとボルサリーノは攻撃の準備を始めている。
ーーアタピはアタピができることをしよう。
サオリは決心すると要塞を見回し、何かいい案が思い浮かぶか確かめてみた。ミハエルに教わっている環境利用闘法がここで生きる。
「我が名はデイビー・ジョーンズ。お前らが勇敢かバカならば歯向かってこい。用意してやろう。海賊の呪いをたんまりと詰め込んだ試練をな」カリブの海賊の仇役、デイビー・ジョーンズだ。
誰も一言も発さない。言われるまでもない。全員が覚悟を決めている。黄金色のバケモノを討伐し、自分たちのチームを勝利に導く。その覚悟を。
霧を突き抜ける。勇ましい音楽に変わる。煉瓦造りの要塞を攻める海賊船たち。
第6エリア。海上戦ステージ。黄金薔薇十字団と雌雄を決するにふさわしい戦場だ。
サオリたちの乗っているバトーの左側に、船の残骸が揺蕩っている。アイゼンとタンザは立ち上がる。エリアに入ったと同時に、最大戦力でオポポニーチェを待ち構える作戦だ。まずはタンザが船の残骸の上に移動する。200キロがいなくなったバトーが大きく傾く。凄い揺れだ。その揺れを利用して、アイゼンは軽々と残骸へ跳んだ。
ーーおっとと。
サオリは手すりを掴んでことなきを得た。トリコーンとカットラスはすでに装着済み。決戦の準備はできている。ギンジロウ、ビンゴ、ボルサリーノは降りない。バトーに乗ったままだ。サオリは、自分がどこまで乗っていていいのか不安になった。でも、今さら作戦について聞くことは恥ずかしい。
ーーポーカーフェイスしよ。
「どこで降りるの?」サオリは、ぶっきらぼうな顔をしてギンジロウに尋ねた。
「ラーガ・ラージャから詳細な策を受け取ってるでしょ? それを実行するだけさ」緊張した面持ちでギンジロウは教えてくれる。
ーー受け取ってない……。
サオリは心の中でうなだれた。
「白ヤギさんから届いたお手紙なら黒ヤギさんが食べちゃったよ!」キーピルが場の雰囲気を読まずに楽しそうだ。
海上戦ステージでは、キャラック型の海賊船が大砲を撃ちながら砦を攻めている。砦からも大砲を撃ち返す。水に跳ねる砲弾の着弾。飛び交う銃弾と怒号。戦いの真っただ中をバトーは進む。
「俺たちはここだな」ビンゴとボルサリーノもバトーから跳び降り、一番目立つ海賊船に登っていった。後はサオリとギンジロウの2人だけだ。策略を貰っていないサオリは自分で考えなくてはならない。
ーーんと、陽動陽動……。
ビンゴとボルサリーノが攻撃をするので、そのタイミングでオポポニーチェの注意をそらせる必要がある。
ーーということは……。
サオリは海賊船の反対を見た。
要塞。
ーーここだ。
サオリはピンときた。海賊船の反対側で囃し立てたら、流石のオポポニーチェもこちらが気になる。ビンゴとボルサリーノに対する警戒心は減少するだろう。
思ったら迷わない。サオリは勢いをつけ、自分の倍以上の高さの要塞を一気によじ登った。
要塞の上から戦場を見渡す。海上戦ステージの入口にはアイゼンとタンザ。真ん中の海賊船にはビンゴとボルサリーノ。ギンジロウはバトーに乗ったまま次のエリアへと進んでいく。
ーーしっかし……。
サオリは要塞の壁の出っ張りに足をかけ、片手を額に当て、遠くを見通す格好をした。高いところから見下ろすと気分が良い。
「沙織。どんな策があんのや?」クマオは興味津々だ。丸い尻尾を振りながら聞いてくる。
「えとね……」
海を挟んで反対側にいるビンゴとボルサリーノは攻撃の準備を始めている。
ーーアタピはアタピができることをしよう。
サオリは決心すると要塞を見回し、何かいい案が思い浮かぶか確かめてみた。ミハエルに教わっている環境利用闘法がここで生きる。