第191話 謝罪(1) Apology

文字数 1,025文字

 試合が終わり、サオリとギンジロウとボルサリーノがカリブの海賊から出てきた。全チームの選手は外で待っていた。夏だ。クーラーの効いたアトラクション内とは違い、朝だというのに蒸せ返るように暑い。
 ギンジロウは胸を押さえ、治療を受けているアイゼンの元へと向かった。自身も治療を受ける必要があるということもあるが、試合が終わればチームの元に合流するのは当たり前のことだ。だが、サオリはアイゼンの元へはいかない。直接、真言立川流の3人の元へと向かう。
 これは最終試合だ。以降は試合がない。そのため、負けたカンレンたちは、画面越しに試合の様子を観戦することができていた。
 真言立川流の3人は、アイゼンがビンゴとタンザを破った時点で勝利を確信した。共に祝いあった。だが、サオリによるまさかの自爆。一気に意気消沈。その雰囲気の中、張本人が自ら、自分たちの元へとやってきた。
 カンレンたちの感情は、怒りと呆れが入り混じっていたが、なぜこちらにサオリが来たのかが分からない。人の脳みそは一定以上のことは考えられない。怒りや呆れは不思議な気持ちによって、ところてんのように外へと押し出されてしまった。どんな態度を取ればいいのかも分からない。
 サオリは、試合が終わってからずっと考えていた。
ーーすぐにお坊さんたちに謝らなくてちゃ。
 そこで足が真言立川流の元へと向ったのである。向かいながら3人の表情を観察する。
「微妙な顔してる」シロピルが囁く。
ーーさっきまで勝ったと思ってたんだろな。
 サオリは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。だが、なんと言っていいのかまでは考えていなかった。3人の前に立ち止まり、黒くて大きな瞳を開き、ただじっと、3人のことを見上げていた。
 3人は、サオリの考えが理解出来ていない。そりゃそうだ。勝てるはずの試合を自らの手で負け、しかも仲間と話すよりも早く自分たちの元に来て、あげくの果てに何も話さないのだから。
「沙織ー。謝るんだよー」シロピルがサオリをつつく。
ーーでも、おぼーさんにとって、信じてた人に裏切られたようなもん。ゴメンね♡じゃ済まされない。
 サオリも心の声で答える。
「許してプリン♡ってのはどーう?」キーピルが言う。
「言い方の問題じゃないんじゃないの?」ピョレットが返す。
 こうしてサオリの頭の中では、全ピョーピルがフル回転で会議をしていた。だが、カンレンをはじめ、オポポニーチェ以外の人にとっては、ただ突っ立っているようにしか見えない。
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