第216話 VIPルームC VIP Room C

文字数 580文字

 ホムンクルスについての詳しい説明も終わった。客の反応を見るに、特に問題はないようだ。
ーーこれで私の仕事も終わりだ。
 ハリー・バンディは、一息ついた。
ーーしかし。
 先ほどの代表戦を思い返す。
ーーマクジョージは、ラーガ・ラージャを使いたがっていた。だったら、代表戦は絶対に見ておくべきだったな。
 ハリーが見ている視線の先には、眠そうな顔をしているサオリの姿があった。
ーーこの女児は使える。甘さ。弱さ。愛され具合。ラーガ・ラージャもメロメロだ。
 ハリーは、自分が考えた策略を練っていくにつれ、ゾクゾクとした嗜虐的な快感を感じた。
ーー純粋すぎるがゆえ、騙すことも簡単。この、エスゼロという女児を手元に置いておけば、ラーガ・ラージャを自由に動かせる。人質としては最適だ。マクジョージがこの事実を知れば、眉毛を上げて喜ぶだろう。
 だが、ハリーは、この見解をマクジョージに話すつもりはなかった。なぜなら、いざという時に、この策略を提案すれば、マクジョージに恩を売ることが出来るからだ。
 権力の世界では、常時、自分が有利になる方法を考えなくてはならない。のんべんだらりと暮らしている一般人とは違う価値観だ。
ーーバラ十字会の表を私が、裏をオポが支配する。オセロの石は、裏返しても白であり、黒でもある。これが神秘学の真髄だ。
 ハリーは、血のように黒い赤ワインを一息に飲み干した。
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