第122話 3回戦(3) Third Round

文字数 1,211文字

 背の低い、ハスキー声のメイドの後に続いて暗い通路を歩いていく。
 すぐに、円形の、直径6mに満たない部屋に辿り着いた。壁は石造りだ。不気味な音楽が聞こえてくる。
「こちらへどうぞ。お入りになりましたら、正面奥までお進みください」
 メイドにうながされて、タンザとビンゴとボルサリーノ、サオリとギンジロウ、アイゼンとカンレン、カンショウの順番で部屋に入る。
 部屋の中は暗く、壁に飾られた蝋燭の鈍い光だけがあたりを照らしている。赤いベールで装飾された一枚の肖像画が飾ってある。それ以外は何もない。
 肖像画は油絵で、オポポニーチェが描かれていた。
「あ! オポポノコ!!
「オポポー」アカピルとキーピルが騒ぐ。
ーーあれ? 元々ここに、オポポノコの肖像が置かれてたの? こんな短期間じゃ描けないよねー?
 どう考えてもおかしい。絵の具の乾き具合を確かめたかったので、サオリは絵に向かって手を伸ばしてみた。手を伸ばせばギリギリ届きそうだ。
「絵にお手を触れないでください」メイドにたしなめられる。
ーーあっ、ダメか。
 サオリは急いで手を引っ込めた。メイドの機嫌が少し悪くなったようだが、ただ仕事に忠実なだけだ。段取り通りに部屋の扉を閉める。
 すぐに天井から、低くて渋い声が聞こえてきた。
「窓一つない部屋で、身の毛もよだつ不気味な響きが館の中に広がる。ろうそくの炎が風もないのに揺れ動く。ほら、そこにもここにも亡霊達が」
「わー、ボーレーに襲われるー」アカピルが楽しそうに地面に転がる。 
 その時、サオリとは反対側の壁にもたれかかっていたビンゴが声を上げた。
「おい。あれはなんだ? ブラザー」ビンゴが見ているのは、オポポニーチェが描かれている肖像だ。絵で描かれたオポポニーチェがだんだん年寄りになり、やがて骸骨になっていく。
「手長マン、仕掛け絵、見たことないのかなぁ」アオピルが毒づく。
「常識だってのにね」シロピルが、自分も見た事がないくせに同意する。
「でも、大足マンと手長マンが楽しそうにディズニーにいる絵は見たくない」ミドピルが皮肉る。サオリも想像したが、可愛くていーなと思った。ミッキーの耳が似合いそうだ。
 天井から響いてくる渋くて低い声は続く。
「諸君の恐れおののく姿を見て、亡霊達は喜びの笑みを浮かべているのだ。紳士、ならびに淑女の諸君。ホーンデットマンションへようこそ。私はこの館の主、オポポニーチェ・フラテルニタティスである。オーポッポッポッポ」
ーーずっと渋い声でがんばってたのに、最後の笑い声だけは高い声になった!
 サオリが無表情のままニヤニヤしかけた時、天井から無機質な、先ほどとは違う声が響いた。
「4時13分51秒。ネコチーム。リリウス・ヌドリーナ。ビンゴ。アウトー」
「オポポ。幽霊はそこかしこにいる。お気をつけあれ」オポポニーチェの声が響き渡る中、ビンゴはいつ取られたのか分からないという不思議な顔をして、自分の喉を触っていた。
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