第83話 再会(2) Meeting Again
文字数 1,815文字
プーさんのハニーハントまでは、歩いて5分もかからない。
道中、サオリは1つ、気になっていることがあった。1回戦が始まる前に、ミッキーマウスの耳カチューシャは買った。だが、ミッキーマウスはネズミだ。ネコチームの役が3回、ネズミチームの役が1回。ということは、最終戦以外では、ミッキーマウスのカチューシャはつけられない。
ーーとなると、必然的にネコ耳が欲しくなるよねー。
「確かにー」ピョーピルも全員同意した。
ーーディズニーで有名な猫といえば?
「おしゃれキャットのマリー!」シロピルが1番に声をあげる。
「不思議の国のアリスのチュシャ猫や!!」負けず嫌いのクマオも声を張る。
ーーなるほどー。
だが、白とピンクシマシマのネコ耳は、今の服装は合わない。今回は、闇に溶け込む星のような生物、をテーマにした服装なので、やはりネコ耳も、つけるならば黒がいい。とはいえ、ディズニーで有名な黒猫なんて思いつかない。
ーーホントは黒がいい。けど、髪の毛のアレンジでなんとかなるかな?
サオリは、自分の髪を指でいじった。
「えっ? さっき黒ネコ耳、売ってたよ!」アオピルが顔を出す。
ーーどこで?
サオリは、目を大きく見開く。
「たしか、ラウンジに向かう車中で見た気がする!」
ーーてことは、この近辺かな?
「歩いてたら見つかるかもしれんなー」クマオも同意する。
サオリは、辺りを注意深く見回しながら、プーさんのハニーハントまでの道のりを歩いていった。遠くに人影を発見する。
ーーあ! 誰かいる。
170センチに満たない身長。白いワイシャツにサスペンダー。細身。顔の特徴としては、白人にしても鼻がやけに高い。金髪のリーゼント。ヒラヒラとした歩き方をしている。リリウス・ヌドリーナのスキニーマン、ボルサリーノだ。ギャングのくせに、やけに気弱そうな顔をしている。
ーーやっぱあの人も、次の試合場を見にきてるのかしらん。
試合中ではないから攻撃はされないだろう。それに、ボルサリーノ1人ならどうとでもなる。気楽な気持ちで歩いていくと、ボルサリーノもサオリを見つけた。
目があう。
ボルサリーノはモジモジと落ち着かなくなり、少しうつむいて迷ったあと、思いきって、大きく両手を振ってきた。
ーーなんだろ?
悪い人ではなさそうだ。けど、少し恥ずかしい。サオリはとりあえず、小さく手を振りかえした。ボルサリーノは気をよくしたのか、サオリに向かって恥ずかしそうに歩いてくる。
「あれ? ほっそいのがやってきたでー」シロピルが、クマオにうつされたかのような関西弁を使う。
「もしかして、好きなんじゃないのー」
「ひゅーひゅー」いつもどおりのアオピルとキーピルだ。
ーーこういう時は、クマオも何か言いそうだけどな。
サオリはクマオを見た。ただのぬいぐるみと化している。
ーー??? あっ、人前だから?
サオリがクマオについて考える暇もなく、ボルサリーノが話しかけてきた。
「エスゼロちゃんでやんすか」
「うん」
日本語だ。サオリは無愛想に答えながら、なぜこんなにも馴れ馴れしいのかと考えた。
ーー最近よく、知らない大人から声をかけられる。
「エスゼロちゃん。アッシのこと、覚えてるでヤンスか?」自信がなさそうだ。
ーーえっ? 知らない。
サオリは少し首を傾けた。
「ほら。武道館でぶつかった」早口で説明する。
ーーあっ!
サオリは、ボルサリーノに言われて思い出した。
ーーあの、体重と気配がまるでなかった人?
ボルサリーノの服装が白いスーツだったこともあり、あの日の派手な服を着た白人と同一人物だとはまったく気がつかなかった。だが、言われると確かにあの時の人だ。異常だったからよく覚えている。
「思い出した」
ボルサリーノは満面の笑みだ。
「まさか、あの時の少女とこうして再び出会うなんて。運命というものはわからないものでヤンスね」
サオリはうなづいた。確かに運命はわからない。だが同時に、だからといって何を話せばいいのかもわからない。ボルサリーノもそれに気づいたのだろう。焦って話を続けた。
「あっ! というのもでやんすね、あの時エスゼロちゃんがいなかったら、今回アッシらがザ・ゲームに参戦することもなかったから、そこに、さらに運命を感じたんでヤンス」
ーーどゆこと?
サオリは、ますます不審人物をみる目でボルサリーノを見つめた。サオリの目力は、子供っぽい顔の割にかなり強い。追われるように、さらにボルサリーノは話を続けた。
道中、サオリは1つ、気になっていることがあった。1回戦が始まる前に、ミッキーマウスの耳カチューシャは買った。だが、ミッキーマウスはネズミだ。ネコチームの役が3回、ネズミチームの役が1回。ということは、最終戦以外では、ミッキーマウスのカチューシャはつけられない。
ーーとなると、必然的にネコ耳が欲しくなるよねー。
「確かにー」ピョーピルも全員同意した。
ーーディズニーで有名な猫といえば?
「おしゃれキャットのマリー!」シロピルが1番に声をあげる。
「不思議の国のアリスのチュシャ猫や!!」負けず嫌いのクマオも声を張る。
ーーなるほどー。
だが、白とピンクシマシマのネコ耳は、今の服装は合わない。今回は、闇に溶け込む星のような生物、をテーマにした服装なので、やはりネコ耳も、つけるならば黒がいい。とはいえ、ディズニーで有名な黒猫なんて思いつかない。
ーーホントは黒がいい。けど、髪の毛のアレンジでなんとかなるかな?
サオリは、自分の髪を指でいじった。
「えっ? さっき黒ネコ耳、売ってたよ!」アオピルが顔を出す。
ーーどこで?
サオリは、目を大きく見開く。
「たしか、ラウンジに向かう車中で見た気がする!」
ーーてことは、この近辺かな?
「歩いてたら見つかるかもしれんなー」クマオも同意する。
サオリは、辺りを注意深く見回しながら、プーさんのハニーハントまでの道のりを歩いていった。遠くに人影を発見する。
ーーあ! 誰かいる。
170センチに満たない身長。白いワイシャツにサスペンダー。細身。顔の特徴としては、白人にしても鼻がやけに高い。金髪のリーゼント。ヒラヒラとした歩き方をしている。リリウス・ヌドリーナのスキニーマン、ボルサリーノだ。ギャングのくせに、やけに気弱そうな顔をしている。
ーーやっぱあの人も、次の試合場を見にきてるのかしらん。
試合中ではないから攻撃はされないだろう。それに、ボルサリーノ1人ならどうとでもなる。気楽な気持ちで歩いていくと、ボルサリーノもサオリを見つけた。
目があう。
ボルサリーノはモジモジと落ち着かなくなり、少しうつむいて迷ったあと、思いきって、大きく両手を振ってきた。
ーーなんだろ?
悪い人ではなさそうだ。けど、少し恥ずかしい。サオリはとりあえず、小さく手を振りかえした。ボルサリーノは気をよくしたのか、サオリに向かって恥ずかしそうに歩いてくる。
「あれ? ほっそいのがやってきたでー」シロピルが、クマオにうつされたかのような関西弁を使う。
「もしかして、好きなんじゃないのー」
「ひゅーひゅー」いつもどおりのアオピルとキーピルだ。
ーーこういう時は、クマオも何か言いそうだけどな。
サオリはクマオを見た。ただのぬいぐるみと化している。
ーー??? あっ、人前だから?
サオリがクマオについて考える暇もなく、ボルサリーノが話しかけてきた。
「エスゼロちゃんでやんすか」
「うん」
日本語だ。サオリは無愛想に答えながら、なぜこんなにも馴れ馴れしいのかと考えた。
ーー最近よく、知らない大人から声をかけられる。
「エスゼロちゃん。アッシのこと、覚えてるでヤンスか?」自信がなさそうだ。
ーーえっ? 知らない。
サオリは少し首を傾けた。
「ほら。武道館でぶつかった」早口で説明する。
ーーあっ!
サオリは、ボルサリーノに言われて思い出した。
ーーあの、体重と気配がまるでなかった人?
ボルサリーノの服装が白いスーツだったこともあり、あの日の派手な服を着た白人と同一人物だとはまったく気がつかなかった。だが、言われると確かにあの時の人だ。異常だったからよく覚えている。
「思い出した」
ボルサリーノは満面の笑みだ。
「まさか、あの時の少女とこうして再び出会うなんて。運命というものはわからないものでヤンスね」
サオリはうなづいた。確かに運命はわからない。だが同時に、だからといって何を話せばいいのかもわからない。ボルサリーノもそれに気づいたのだろう。焦って話を続けた。
「あっ! というのもでやんすね、あの時エスゼロちゃんがいなかったら、今回アッシらがザ・ゲームに参戦することもなかったから、そこに、さらに運命を感じたんでヤンス」
ーーどゆこと?
サオリは、ますます不審人物をみる目でボルサリーノを見つめた。サオリの目力は、子供っぽい顔の割にかなり強い。追われるように、さらにボルサリーノは話を続けた。