第97話 2回戦(11) Second Round
文字数 1,221文字
「どうしたんだよブラザー。ぼーっとしちゃって」
サオリが去った後も、タンザはボンヤリと行先を眺めていた。が、ビンゴの声で我に返る。
「あ。ああ。なんか……、いや。なんか……、尊敬している恩人と目がそっくりだった気がしたんだ。でも、彼には子供がいるなんて話聞いた事ないし、他人のそら似だろ。まぁ……」タンザは言葉を止めた。
ハニーポットの降り口から、人の気配を感じたからだ。タンザは、ビンゴに合図を送り、急いでオブジェに隠れた。
すぐに2つの人影があらわれる。黄金薔薇十字団のフォーとシザーだ。オポポニーチェを探しているようだ。
ーーよし。ビンゴと挟み撃ちにしよう。
まずはタンザが顔を見せる。
フォーとシザーは、明らかに混乱したような動きで、小さく奇声を上げた。おそらく、オポポニーチェが鈴を奪られたというアナウンスが聞こえていなかったのだろう。混乱と興奮が混ざっているのか、ゾンビのような動きをしている。
ーーもし、オポポニーチェみたいな技を使用してきたらどうする?
だが、タンザは頭を切り替えた。
ーー遺伝子研究所であの人に会ってから、俺は一度も、あらゆる事から逃げなかった。だが、オポポニーチェに、恐ろしいという感情を抱いてしまった。こんなことでは、リリウス・ヌドリーナ818名を守っていくことはできねぇ。男の中の男たらんとしているこの俺様だ。もう逃げん。こいつらがオポポニーチェのように不思議な技を使ってきても、自分の首が切り落とされたとしても、俺はこれ以降、絶対逃げねぇ。俺の背中を見ろ。
タンザは、乾いたままの喉をこくりと鳴らした。
驚いていたフォーとシザーは、互いに顔を見合わせ、うなづくと、生気のない目でタンザを睨んだ。
ゆっくりとした助走。
走り出す。
徐々にスピードを上げ、2人同時に、そこそこの速度で、タンザに向かって襲いかかってくる。
とはいえ、その動きは直線的だ。一般人の域も超えていない。
ーー浮気をした時、ヒステリーをおこして向かってきたアイツみてーだな。
タンザは、なぜか昔の女を思い出した。
フォーとシザーは、ただただ向かってくる。
タンザは、恐怖心を押し殺した。
ーー何があろうが知ったことか。俺は、俺にできる最善を尽くす!
手が届く距離まできた。
2人の鈴に向かい、ジャブのように素早く手を伸ばす。
1発。
2発。
タンザの左手には、それだけで2つの鈴が入っていた。
「35分6秒。ネコチーム。黄金薔薇十字団。フォー。35分7秒。ネコチーム。黄金薔薇十字団。シザー。アウトー!! これで、黄金薔薇十字団は、全滅だよー」
タンザは、拍子抜けするくらいあっけなく、2人の鈴を奪うことに成功した。
フォーとシザーにとっては予想外だったようだ。スイッチが切れたかのように、ガクッとうなだれた。タンザの前に膝をつき、まるで土下座をするように動かなくなる。
すぐに4人のスタッフがやってきて、抱えられながら非常口へと消えていった。
サオリが去った後も、タンザはボンヤリと行先を眺めていた。が、ビンゴの声で我に返る。
「あ。ああ。なんか……、いや。なんか……、尊敬している恩人と目がそっくりだった気がしたんだ。でも、彼には子供がいるなんて話聞いた事ないし、他人のそら似だろ。まぁ……」タンザは言葉を止めた。
ハニーポットの降り口から、人の気配を感じたからだ。タンザは、ビンゴに合図を送り、急いでオブジェに隠れた。
すぐに2つの人影があらわれる。黄金薔薇十字団のフォーとシザーだ。オポポニーチェを探しているようだ。
ーーよし。ビンゴと挟み撃ちにしよう。
まずはタンザが顔を見せる。
フォーとシザーは、明らかに混乱したような動きで、小さく奇声を上げた。おそらく、オポポニーチェが鈴を奪られたというアナウンスが聞こえていなかったのだろう。混乱と興奮が混ざっているのか、ゾンビのような動きをしている。
ーーもし、オポポニーチェみたいな技を使用してきたらどうする?
だが、タンザは頭を切り替えた。
ーー遺伝子研究所であの人に会ってから、俺は一度も、あらゆる事から逃げなかった。だが、オポポニーチェに、恐ろしいという感情を抱いてしまった。こんなことでは、リリウス・ヌドリーナ818名を守っていくことはできねぇ。男の中の男たらんとしているこの俺様だ。もう逃げん。こいつらがオポポニーチェのように不思議な技を使ってきても、自分の首が切り落とされたとしても、俺はこれ以降、絶対逃げねぇ。俺の背中を見ろ。
タンザは、乾いたままの喉をこくりと鳴らした。
驚いていたフォーとシザーは、互いに顔を見合わせ、うなづくと、生気のない目でタンザを睨んだ。
ゆっくりとした助走。
走り出す。
徐々にスピードを上げ、2人同時に、そこそこの速度で、タンザに向かって襲いかかってくる。
とはいえ、その動きは直線的だ。一般人の域も超えていない。
ーー浮気をした時、ヒステリーをおこして向かってきたアイツみてーだな。
タンザは、なぜか昔の女を思い出した。
フォーとシザーは、ただただ向かってくる。
タンザは、恐怖心を押し殺した。
ーー何があろうが知ったことか。俺は、俺にできる最善を尽くす!
手が届く距離まできた。
2人の鈴に向かい、ジャブのように素早く手を伸ばす。
1発。
2発。
タンザの左手には、それだけで2つの鈴が入っていた。
「35分6秒。ネコチーム。黄金薔薇十字団。フォー。35分7秒。ネコチーム。黄金薔薇十字団。シザー。アウトー!! これで、黄金薔薇十字団は、全滅だよー」
タンザは、拍子抜けするくらいあっけなく、2人の鈴を奪うことに成功した。
フォーとシザーにとっては予想外だったようだ。スイッチが切れたかのように、ガクッとうなだれた。タンザの前に膝をつき、まるで土下座をするように動かなくなる。
すぐに4人のスタッフがやってきて、抱えられながら非常口へと消えていった。