第168話 4回戦(11) Final Round

文字数 1,353文字

 ワイアヌエヌエ・カジノは大騒ぎだ。解説席も観客の熱気に押され、更なる盛り上がりをみせている。仕事に徹するとはいえ、やはりクーもこういう戦いが純粋に好きなのだ。
「カリブの海賊大決戦! なんと、大本命とみられていたオポポニーチェが、ビンゴの巨大バリスタによって撃沈しましたーっ!!
「わーっ!!」コールアンドレスポンス。客が一斉に声を上げる。
「さあ。総合ポイント52点の黄金薔薇十字団も残りはフォーただ1人。ピンチです! 逃げ切ることはできるのでしょうか?」クーはマックス・ビーとフタバに話を振る。
「まぁ……無理だな」マックス・ビーは苦い顔をする。
「ということは、黄金薔薇十字団はここで脱落。勝負は鈴3個を丸ごと残している、総合ポイント44点のリリウス・ヌドリーナと、尻尾3本を丸ごと残している、ポイント40点のダビデ王の騎士団の一騎打ち。そういうことでよろしいでしょうか?」
「うむ」マックス・ビーは額に血管を膨張させて悔しがっている。フタバの予想が当たっていたからだ。だが、表情はプロらしく平静を装っている。
「さあ。いよいよ一騎打ちになりましたね。この展開を誰が予想したでしょうか? ダビデ王の騎士団が優勝すると予想した方。当たれば大穴ですね!」
「まさに大穴、だな。俺には予想できなかった。だが、今どちらかに賭けろと言われたら、今でもまだ、躊躇なくリリウス・ヌドリーナに賭ける」マックス・ビーが予想する。
「やはりタンザの壁は厚いですか?」
「うむ。タンザだけじゃない。ビンゴも強いし、ボルサリーノもただのお荷物かと思いきや、なかなかの結果を残している。対してKOK。ラーガ・ラージャの策略がハマりまくってはいるが、イノギンとエスゼロの活躍はほとんど見られない。真言立川流から得た12点は闘いで勝ち取ったものではない。これがなかったら実際はリリウス・ヌドリーナの圧勝だったはずだ」
「でも、その点数があるからなー。実際は」フタバは煽るように、ゆっくりとした口調で口を挟んだ。
「ということは、やはりフタバさんはダビデ王の騎士団が勝利するとお思いですか?」
「一貫して、ね」フタバはゆるーく返事をしてウインクした。
「あ、画面をご覧ください! フォーが、負けたオポポニーチェに向かっていきます!!
「バカだな」マックス・ビーが思うのも当然だ。心配してオポポニーチェに近づくのは優しい行為だが、彼の足元にはボルサリーノがいる。近寄れば簡単に鈴を奪られてしまう。
「もしかしたら、ボルサリーノの鈴を狙いに行ったのかもしれま」
「ないだろ」マックス・ビーは、クーに最後まで言わせなかった。おそらく正しい。今までの試合で、フォーが活躍した場面はない。
「優しいやつだけどね」軽口を叩きながら、フタバも真剣な表情を崩さない。現在点差はたったの4点。簡単に3点が手に入るこの局面は試合を左右する。
 アイゼンはそのことに気づいていた。だが、同じく気づいていたタンザが、アイゼンに手段を講じさせなかった。アイゼンも混じった攻防になるよりも、ボルサリーノに任せた方が鈴を奪える可能性が高いと踏んだのだ。だが、まだ近くにはサオリがいる。
ーー気づけ、沙織。
 アイゼンとフタバの願いも虚しく、サオリは未だ城壁の上で恥ずかしさを回復する作業をしていた。
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