第86話 試合予想 Prediction

文字数 1,536文字

 「さあ。日本の現地時間で午前2時になりました! 2回戦の開始まで残り6分。ここで、倍率を確認しておきましょう!」クーの言葉で、カジノ内全ての映像はオッズ一覧に変わった。

2回戦予想
1リリウス・ヌドリーナ 1.8倍
2黄金薔薇十字団    3.3倍
4ダビデ王の騎士団   6.8倍
3真言立川流      5.6倍

MVP予想
1タンザ     (リリウス・ヌドリーナ)
2ビンゴ     (リリウス・ヌドリーナ)
3オポポニーチェ (黄金薔薇十字団)
4イノギン    (ダビデ王の騎士団)
5ラーガ・ラージャ(ダビデ王の騎士団)
6ボルサリーノ  (リリウス・ヌドリーナ)
7カンレン    (真言立川流)
8エスゼロ    (ダビデ王の騎士団)
9カンショウ   (真言立川流)
10フォー    (黄金薔薇十字団)
11ジャクジョウ (真言立川流)
12シザー    (黄金薔薇十字団)

最終結果予想
1リリウス・ヌドリーナ
2黄金薔薇十字団
3真言立川流
4ダビデ王の騎士団

 客は興奮して周りと話をしている。声帯の震えは空気を揺らし、ワイアヌエヌエ・カジノ内に言葉を作り出す。人々の震わせた空気と熱が、細波のようにフタバの耳に届く。言葉ではなく振動として自分に迫ってくる感覚。立ち上がって手をあげたいくらいに心地よい。
「さてマックス・ビー。いかがでしょう?」
 休憩から戻ってきたマックス・ビーは、仕事モードに入る。
「リリウス・ヌドリーナの倍率が下がったのは予想通りだ。だが、こんなにも低くなるとは思わなかったな」
 ザ・ゲームは良心的な賭けだ。集まったお金の6割6部6厘をゲストに還元する。普通の賭け事だと多くて5割。中には3割還元なんて遊戯もざらにある。ザ・ゲームは大掛かりではあるが、その分、賭けられる金額も他とはケタが違う。だからこそ、このシステムでも十分に儲けが出る。
 還元率が高いと倍率は高くなりやすい。4チームいるにも関わらず、勝っても2倍にすらならないというのは異常だ。それだけ、1回戦のリリウス・ヌドリーナの勝ち方は衝撃的だったのだろう。
 マックス・ビーは続ける。
「ただ、私は今回、黄金薔薇十字団と真言立川流を中心に見てみようと思う。まったく実力を見せずにカンレンから尻尾を奪ったオポポニーチェ。それから1回戦、どこか甘い思いを抱いて油断していたように見えた真言立川流。この2チームが2回戦でどういう動きをしてくるのかは、見どころのひとつだろう」
「なるほど」クーはうなづいた。フタバにも話を振る。
「フタバは、やはりKOK一択ですか?」
「いやいや。最初から一択ではないんだよ。イタリアの白い悪魔たちのSVは凄かったし、立川流の立居振る舞いも美しい。穢れた薔薇の不思議な感じも好きだ。試合としては面白いと思ってる。ただ、やっぱり」
 どうせサオリは聞いていない。フタバは思い切り、サオリにたいする、美に対する尊敬の気持ちをこめた。
「エスゼロの、純粋無垢な美しさには期待しちゃうんだよねー」
「そうなんですね?」クーは、どうもまだ納得できていない。1回戦でも休憩中でも、サオリはただ遊んでいるだけのような気がしてならなかったからだ。とはいえ、間もなく2回戦が開始される。解説をまとめなくてはならない。
「それでは、今回の勝敗予想は?」クーは、2人に最終予想を尋ねた。
「色々言ったが、それでも本命は、ヌドランゲタとタンザだ。間違いない」
「オイラは変わらず、KOKとエスゼロだね」
「推薦者はブレず、といったところでしょうか。さあ、試合までは後1分。スクリーンには会場が映っております! 果たして2回戦は、どのチームが勝つのでしょう。注目です!! クリケット!!」クーは、試合場にいるクリケットに声をかけた。
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