第219話 電話(2) Telephone

文字数 983文字

「よし。落ち着き次第、リリウス・ヌドリーナに謝罪と感謝を申し入れに行こう。その後で、KOKと再度、しっかりとした契約を結ぼう」
「はい!! ありがとうございます!!
ーー拙僧もそうしたいと思っておりました。心を汲んでくださって本当に嬉しいです。
 カンレンは、深々とお礼を言った。モクレンもうなづいている。他の信者たちは、そこまで頭は良くない。だが、レンネンの素晴らしい人格に触れた気がして嬉しかった。
ーー汚い心を持っていたのは私だけだったのか。
 センジュマルは、自分の心を恥じた。
 だが実際、レンネンとモクレンの思惑は違うところにあった。
ーーKOKは、Aランクの秘密結社。彼らとより強い信頼関係を結んでおけば、真言立川流の世界ランクも上がる。
 そういう政治的な打算からの計画だった。
ーー人の心を操る、か。レンネン。お前も成長したな。そしてカンレン。次世代の宗主として、頼れる存在になってきておるぞ。
 人間には、操る側と操られる側がいる。だが、操られることは悪いことではない。操る側が、操られる側に、「幸せを与えたい」と真に願うのであらば。
 モクレンは笑いながら話した。
「ほっほっほ。負けはした。だが、髑髏本尊は返してもらえた。リリウスさんたちも、賞金を大麻代にすると言って、全てをチャラにしてくれた。これぞ、陰陽全て揃った完璧な状態。まさに、大日如来の御加護じゃ。日本に帰ったら、今回稼いだ賞金を使い、今までにない大規模な儀式をおこなうぞ!!
「今回ばかりは、大日如来ではなく、ラーガ・ラージャ、愛染明王に感謝を捧げる儀式、というのもいいですな」
「我々は良いが、日本にいる他の信者には意味がわからんじゃろう。愛染明王に捧げる簡易的な儀式は、この後ホテルで寝た後に、のう」モクレンは、信者たちに声をかけた。
「はい!!」みんな嬉しそうだ。 
 真言立川流の儀式とは、精神を解放させて動物的になることだ。
 快楽香が高濃度で焚かれた部屋で、心臓のリズムに合わせた読経を流し続ける。裸になった信者たちが、それぞれに執着をなくし、許しあい、まぐわいあい、美味しい食事を食べ、酒を飲みながら、何日間も動物のように過ごす。
ーー本当の酒池肉林を知らないでこの世を過ごす大半の人たちは、まっこと可哀想な生き物じゃわい。
 真言立川流の一行は、全員が楽しみな気分でホテルまでの道を歩いていった。
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