第51話 ルール説明(3) Game Rules

文字数 1,640文字

 クリケットが続ける。
「みなさん、前に来られましたね。それではただいまから、競技内容とルール説明をさせていただきます。内容に同意いたしましたら、それぞれネコの首輪についている月のマークに指を当ててください」
 サオリはチャタローの首輪を確認した。以前パートナー契約をした黄色ではない。鮮やかな青色で、三日月のマークが光っている。
 それぞれが確認をしている間にも説明は続いていた。サオリは事前にフタバやウルから聞いてはいたが、何か新しい発見があるかもしれないので、他の参加者と同じように耳をすませて聞いた。
「キャッチ・ザ・ミッキーは、ネコ役3チームとネズミ役1チームに分かれておこなわれる、チーム戦の追いかけっこです。ネコチームは鈴をつけ、ネズミチームは尻尾をつけます」
 ウェイターが、お盆に乗せた鈴と尻尾の見本を、大事なものを扱うようにして参加者に見せた。ウルが説明の時に見せてくれた鈴と尻尾と同じだ。大きさはリンゴとネギ相当。
ーーアタピ、鈴も尻尾も似合っちゃうだろなー。
 サオリは可愛いものが大好きなので、テンションが上がった。クリケットの説明は続く。
「相手チームの鈴を取ると3点。尻尾を取ると5点がチームに入ります。もちろん、ネコチームがネズミチームを狩るだけではなく、ネズミチームがネコチームを狩ることも、また、ネコチームが他のネコチームを狩ることも可能です」
「さっきみたいに、ネコとネズミの全面戦争だーって叫ばないね」アカピルが楽しそうだ。
ーーどこかのグルメリポーターみたい。ねっ。
 サオリもワクワクしてきた。クリケットの説明は続く。
「試合場は、ネズミチームが選ぶことができます。入場の順番は必ずネズミチームから。その後、これから決める順番の通りに、5分おきで試合場に入場することになります。1回の闘いは、1時間が経過するか、ネズミチームの全滅、もしくはネコチームの全滅によって終了いたします。終了時に、もともと持っていた鈴と尻尾は3点に換算されます。各チーム一度ずつがネズミチームになり、4回戦を戦った合計点で決着がつきます」
ーーあ。相手から奪うと、鈴が3点、尻尾が5点。なのに、ネズミチームが逃げ回って終わると、尻尾も3点になっちゃうんだ。
「てことは、てことは」キーピルが首を傾げながら指を折る。
「わかんないー」アカピルがお手上げという顔だ。
「ネズミチームは最後まで逃げきると損をする。けれども、ネズミチームを捕まえた方が得点が高いので、みんながネズミを狙いにいく。ネズミは逃げられない。そういうことだね」ピョレットは、作り物のメガネをクイっと持ち上げた。
「つまり、えっと……、複雑ってこと!」シロピルが偉そうに当然のことを言う。
 パン!
 突然の破裂音。みんなが振り返る。2メートルを遥かに超える巨漢、白いスーツのタンザが手を叩いたのだ。背が高い人間特有の横柄な態度だ。
「面倒くせーな。そんなこまけーことはどーでもいい。逃げ切ろうが何しようが、鈴は3点、尻尾は5点。それでいーじゃねーか。なー、みんな」タンザが出場者を見下ろす。
「拙僧は構わん」一番偉そうな坊主、観蓮もうなづく。
ーー逃げる気は毛頭ないんだ。
「坊主だけに」アカピルが手をたたく。
「私もいいわ」アイゼンだ。サオリやギンジロウに相談もない。だが、納得だ。
ーーアタピもアタピもー。
「オーポポポポポ」オシャレ紳士、オポポニーチェも了解する。
「かっこ笑」キーピルが喜ぶ。
「と、いうことだ」タンザはクロケットを見た。
「そ、それでは協議をさせてください」
 クリケットはクーに連絡する。
「こっちでもお客さまが、その方が単純で良いと言っておられる。逃げ腰の出場者もいないようだ。変更を許可する」クーは素早く結論を出した。
「わかりました! それではみなさん。出場者からの要請により、今回のキャッチ・ザ・ミッキー! 得点のルールを、一律、鈴3点、尻尾5点と変えさせていただきます!!

「わー」スクリーン越しに歓声が鳴り止まない。
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