第213話 VIPルームB(2) VIP Room B

文字数 1,117文字

ーーザ・ゲームに優勝したことで、百人以上の優良潜在顧客を手に入れることができた、か。
 アルフレッドはマルコを見た。どことなく現世にはいないような美しい所作でラブリオラの相手をしている。
ーーマルコ。美形だけではない。使える男だ。さらに重宝しよう。
 アルフレッドはマルコに、力強く声をかけた。
「マルコ。約束通り、優勝賞金と賞品は君たちのものだ。実力は分かった。信頼に値する。引き続き、武器と資金を提供しよう。ただし、実戦後の実験成果は必ず我々に渡すように」
「ありがとうございます」マルコは立ち上がって頭をさげた。
「うむ。また会える日を楽しみにしている。帰るぞ」アルフレッドは、前室で待たせている執事を呼んだ。支度を整えながら、アントワネットと共に、足早に部屋から出ていく。デュポン家の人間は忙しい。
 扉が閉まると同時に、マルコとラブリオラは顔を上げた。
「さて、私たちも帰ろうか」
「ええ」
 スタッフに車を呼んでもらい、帰り支度を始める。
「それでドクロは……」ラブリオラはマルコにこっそりと聞く。ラブリオラにとって、デュポン家の繁盛はどうでもいい。バチカン市国に護良親王の髑髏を販売すること。これが今回の一番大事なところだ。確認しておかなければならない。
 マルコは、笑みを浮かべて答えた。
「打ち合わせ通り、日本のイタリア大使館に保管してもらいます。タンザたちが撤去した後、ラブリオラ様の方でうまくしていただけると助かります」
 マフィアとローマ法王が手を組んでいるなど、世間に知られたら大問題だ。その為に、間を取り持つ秘密結社、イタリア大東社が活躍する。こうすれば、リリウス・ヌドリーナとバチカン市国の間には、何の繋がりも見つけられない。
 タンザとビンゴは今回、イタリア大使館付きの商人という形で日本に滞在している。だが、もし世間にバレても、「知らなかった」と言えば終わる話だろう。逮捕させても、懲役に課すと言いながら他の国に逃がす。何の問題もない。有能なタンザやビンゴは、どの場面に送っても重宝する。
「うん。分かった。確認だよ、確認。やっとくわ」ラブリオラは嬉しそうな顔をした。
「ありがとうございます。では」
「ああ。またな」
 マルコとラブリオラは、誰も見ていないことを確認し、廊下に出ると、それぞれ反対の方向へと歩いていった。もう、二人の関係性を疑われる心配はない。
 ラブリオラは、上機嫌で帰っていった。
ーーふう。権力を持ったバカの相手は疲れるぜ。
 ラブリオラとは真反対だ。ベンツの後部座席に乱暴に腰を下ろしたマルコは、ネクタイを外して、普段の自分に戻る。
ーーいつか、あいつの地位と名声を全て奪ってやる。
 マルコの目は、獣のように輝いていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み