第142話 エリア発表 Area
文字数 1,751文字
3回戦の余韻は冷めやらない。
1回戦終了時と同様、「早く最終戦の試合場を教えろ」という声が大きくなる。インタビューを続けているダイナソンも危険な状態だ。弱々しくて可愛い生物が酔った客にマイクを向ける。文字通り、ただの生贄用の子羊にしか見えない。
参加チームには4時6分より早く発表できない。不公平になる。
だが、客に対して早く発表する分には問題ない。クリケットが映像を撮影している様子を見せてはいけないが、休憩時間にうろつきまわっているのはアイゼンだけだ。そして、外にいる時は、猫のワヲンが委員会に位置を知らせてくれる。バレる心配はない。
ーー発表を早めよう。
クーはザ・ゲーム委員会に合図を送り、クリケットの準備を急がせた。
5分後。
客の興奮がおさまらなくなってきたタイミング。ハイライトや試合結果が流れていた巨大スクリーンの画面が変わる。
「おおっ」待ちに待った試合場所だ。釘付けになる。
「あっ! 4回戦。少し早いですが、最後の試合場も発表されますね」自分で指示したくせに知らぬふり。クーが解説する。
スクリーンには、クリケットが映っていた。
「アドベンチャーランドだ!」客の1人が叫ぶ。地面の色が青緑から緑に変わっている。建物も映っていないというのに、ディズニーファンとは凄いものだ。
「場所はファンタジーランドからアドベンチャーランドへ! 勝利を夢見ていたチームは、今こそ真の冒険へと旅立つ! 最終戦にふさわしい今回の舞台はアドベンチャーランド! 場所はここ!」
カメラが振られる。窓が多い、茶色い巨大洋館が照らしだされる。
「カリブの海賊だー!」
「ほう!」フタバは思わず声をあげた。
剣道世界一のアイゼンと、騎士のギンジロウ。剣士2人を擁するダビデ王の騎士団が、試合場としてカリブの海賊を選択した。剣で闘う海賊たちが活躍するアトラクションだ。
ーーこれは面白い。
マックス・ビーも同じく、面白そうだなという顔で唸る。
「最後のアトラクションツアーは、現地時間の5時6分からおこないます! 皆様、楽しみにお待ちくださいませ」深々とお辞儀をするクリケット。
画面は切り替わり、巨大スクリーンは再び、試合結果やハイライトを流し始めた。
「最後の試合に突入します。お二人はどのように予想されますか?」クーはすかさず解説を始めた。
解説は予想屋と同じく、賭ける目安として大きく左右する。最後の試合だ。客は今まで以上に真剣に耳を傾けている。
「うむ」マックス・ビーはアゴの白髭を捻った。
「とにかくオポポニーチェが強い。強すぎる。なにか対応策を考えなければ、完全に一人勝ちしてしまいそうだな」
フタバもうなづいた。
「オポポニーチェへの対応策は考えつきますか?」
フタバは両手を頭の後ろで組みながら、リラックスして答えた。
「あるよ。ただし、オイラが戦ってたらという話だけど」
マックス・ビーも大きくうなづく。
「同じく。ただ他のチームの目線に立って、奥の手を隠し持っていないのなら、俺にはもう、勝てる算段が思い浮かばんよ」
「オイラは、それでもKOKが勝つと思ってるけどね」
マックス・ビーは驚いた顔をした後で、心から苦笑した。
「ハハハッ。無理だろ。最終戦を前にして24点差だぞ? 勝負はGRCかヌドランゲタ。どちらかに絞られている。これは結果から判断される、完全な決定事項だ」
ーーいやいや。2回戦終了時点では気づかなかったけど、おそらく愛染は、観蓮と何らかの密約を結んでいる。とすれば、真言立川流の9点を丸ごと手に入れる算段を立てているはずだ。今は24点差があるように見えるが、真言立川流から9点もらえれば15点差。1本5点の尻尾を持っているから、6点のアドバンテージがある。結果、差は9点しかない。そして、次のステージを愛染が選択したなら、KOKはきっと勝つ。沙織1人では100パーセント勝てない。だが、運命が味方している。愛染という最強の策士が近くにいる。沙織はこの試合に勝つだろう。運命というのはそういうものだ。
かといって、これは論理的なものではない。直感的なものだ。説明することはできない。
「そう思っておけばいいよ」フタバは、自分の中に溜まり始めた興奮という熱がバレないように、努めて楽観的な顔をして言葉を返した。
1回戦終了時と同様、「早く最終戦の試合場を教えろ」という声が大きくなる。インタビューを続けているダイナソンも危険な状態だ。弱々しくて可愛い生物が酔った客にマイクを向ける。文字通り、ただの生贄用の子羊にしか見えない。
参加チームには4時6分より早く発表できない。不公平になる。
だが、客に対して早く発表する分には問題ない。クリケットが映像を撮影している様子を見せてはいけないが、休憩時間にうろつきまわっているのはアイゼンだけだ。そして、外にいる時は、猫のワヲンが委員会に位置を知らせてくれる。バレる心配はない。
ーー発表を早めよう。
クーはザ・ゲーム委員会に合図を送り、クリケットの準備を急がせた。
5分後。
客の興奮がおさまらなくなってきたタイミング。ハイライトや試合結果が流れていた巨大スクリーンの画面が変わる。
「おおっ」待ちに待った試合場所だ。釘付けになる。
「あっ! 4回戦。少し早いですが、最後の試合場も発表されますね」自分で指示したくせに知らぬふり。クーが解説する。
スクリーンには、クリケットが映っていた。
「アドベンチャーランドだ!」客の1人が叫ぶ。地面の色が青緑から緑に変わっている。建物も映っていないというのに、ディズニーファンとは凄いものだ。
「場所はファンタジーランドからアドベンチャーランドへ! 勝利を夢見ていたチームは、今こそ真の冒険へと旅立つ! 最終戦にふさわしい今回の舞台はアドベンチャーランド! 場所はここ!」
カメラが振られる。窓が多い、茶色い巨大洋館が照らしだされる。
「カリブの海賊だー!」
「ほう!」フタバは思わず声をあげた。
剣道世界一のアイゼンと、騎士のギンジロウ。剣士2人を擁するダビデ王の騎士団が、試合場としてカリブの海賊を選択した。剣で闘う海賊たちが活躍するアトラクションだ。
ーーこれは面白い。
マックス・ビーも同じく、面白そうだなという顔で唸る。
「最後のアトラクションツアーは、現地時間の5時6分からおこないます! 皆様、楽しみにお待ちくださいませ」深々とお辞儀をするクリケット。
画面は切り替わり、巨大スクリーンは再び、試合結果やハイライトを流し始めた。
「最後の試合に突入します。お二人はどのように予想されますか?」クーはすかさず解説を始めた。
解説は予想屋と同じく、賭ける目安として大きく左右する。最後の試合だ。客は今まで以上に真剣に耳を傾けている。
「うむ」マックス・ビーはアゴの白髭を捻った。
「とにかくオポポニーチェが強い。強すぎる。なにか対応策を考えなければ、完全に一人勝ちしてしまいそうだな」
フタバもうなづいた。
「オポポニーチェへの対応策は考えつきますか?」
フタバは両手を頭の後ろで組みながら、リラックスして答えた。
「あるよ。ただし、オイラが戦ってたらという話だけど」
マックス・ビーも大きくうなづく。
「同じく。ただ他のチームの目線に立って、奥の手を隠し持っていないのなら、俺にはもう、勝てる算段が思い浮かばんよ」
「オイラは、それでもKOKが勝つと思ってるけどね」
マックス・ビーは驚いた顔をした後で、心から苦笑した。
「ハハハッ。無理だろ。最終戦を前にして24点差だぞ? 勝負はGRCかヌドランゲタ。どちらかに絞られている。これは結果から判断される、完全な決定事項だ」
ーーいやいや。2回戦終了時点では気づかなかったけど、おそらく愛染は、観蓮と何らかの密約を結んでいる。とすれば、真言立川流の9点を丸ごと手に入れる算段を立てているはずだ。今は24点差があるように見えるが、真言立川流から9点もらえれば15点差。1本5点の尻尾を持っているから、6点のアドバンテージがある。結果、差は9点しかない。そして、次のステージを愛染が選択したなら、KOKはきっと勝つ。沙織1人では100パーセント勝てない。だが、運命が味方している。愛染という最強の策士が近くにいる。沙織はこの試合に勝つだろう。運命というのはそういうものだ。
かといって、これは論理的なものではない。直感的なものだ。説明することはできない。
「そう思っておけばいいよ」フタバは、自分の中に溜まり始めた興奮という熱がバレないように、努めて楽観的な顔をして言葉を返した。