第40話 ヒナ(2) Hina

文字数 1,238文字

「つづいて2組目は、リリウス・ヌドリーナ。イタリアのヌドランゲタで、現在、極東でも勢力を拡大しています。彼らは、真言立川流と、大麻の取引をしていました。ところが先日、ある事件で日本の警察に見つかり、大麻は没収、取引は失敗してしまいました。原因は真言立川流にある、というのが、彼らの言い分です。ところが真言立川流は、20万ドルは支払わないと言ってきました。これが今回の因縁です。そこで、2つの組織に契約を結ばせました。ザ・ゲームで決着をつける、と。もし、リリウス・ヌドリーナが勝利すると、立川流が大麻代と、お詫び金をプラスした100万ドルを支払うことになります。逆に、立川流が勝てば、全てを水に流して今までどおりに取引を続けることになります。この2組の対決は、因縁のある一戦となるでしょう」
「ふーん」
ーーすごいなー。イタリアからわざわざ日本に行って、違法な大麻取引をおこなってるんだ。そういう悪いことに使う努力を、他のことに使えばいいのに。
 退屈な顔をしているので、急いでページがめくられる。
「メンバーは、組織のヴィーチェ・カポ、極東支部代表、ピッグフット・タンザこと、タンザ・ドゥルベッコ。C+++。タンザの弟分で、イタリア本土でカモッリスタとして名を馳せているロングアーム・ビンゴこと、ビンゴ・カンパネッラ。C++。そして、彼らの通訳として契約しているスキニーマン、ジュゼッペ・ボルサリーノ。Cです」
 タンザとビンゴは2メートルを大きく超える巨体で、体重も200キロ近い。明らかに強そうだ。一方、ボルサリーノは、明らかに弱そうに見える。身長も170センチに届かず、体重なんて30キロもないと書いてある。
 ヒナは不思議に思った。
「クー。この資料の体重は本当に合っておるのか? 27キロとは、あたしの半分近い体重じゃぞ?」教わった言葉遣いでヒナは質問をする。
「はい。私どもの調査でも、それは間違いありませんでした」
「ならばなぜ、このボルサリーノという人は、ザ・ゲームに参加するのじゃ? 一般人より弱いであろう。もしかして特殊能力でも持っておるのか? それとも今回のザ・ゲームは、これほど強そうな参加者が揃っておるのに、武力を競うような試合ではないのかえ?」
「いえ。特殊能力もなく、競技が頭脳戦というわけでもございません。理由はひとつだけ。彼が、今回の因縁の発端だからです」
「発端?」
「はい。彼は、大麻取引の受け渡し役だったそうです。侠気のあるタンザとしては、自分で自分の疑いを晴らせといったところではないでしょうか? ボルサリーノに関しては、もし、ゲームが体力的なものになったとしても気にしないでくれと、あらかじめリリウス・ヌドリーナから言われております。ま、タンザとビンゴといえば、殺戮の巨神兵としてマフィア界ではかなり有名ですし、このくらいのハンデがあったほうが、観客も盛り上がるのではないでしょうかね」
 クーは、顔も上げずに次の資料をめくった。早く次を見せたかったからだ。
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