第33話 人の価値(3) Human Value

文字数 1,608文字

「えっと、どこまで話したっけな」
「KOKの団員には参加資格がないというところまでです」
 フタバは本当に忘れていた。ついサオリとの話に夢中になっていたようだ。
「そうだった。その理由はね、今回のゲームに参加できるのは、人間価値ランキングC+++以下の人だけ、という制限があるからなんだ」
「人間価値ランキングってどんなランク付けなんですか?」
「A+++からCまでの12ランクだよ」
「てことは、KOKにはB以上の人しかいないってこと?」アイゼンは計算が速い。
「そうなんだよ。KOKの団員だってこたぁ、強くて資金力もあって、権力もあるってことだろ? 入団できると、それだけで自動的にBランクになっちゃうんだ」
「私の価値はいくつなんですか?」アイゼンは、何かに気づいたように質問をした。フタバもそのことに気づいている。
「愛染は、今日の大会で優勝してしまったからねぇ」
ーー気になってることをズバリ言う。
 今日の活躍で人間価値が上がりすぎると、ゲームに参加する資格を有さなくなる。アイゼンは緊張した。
「なんてね。おめでとう。C++だよ」
ーー自己診断より価値が低いと言われて嬉しいとはね。でも参加資格は満たせた。
 アイゼンの顔が明るくなった。
「そしてイノギン」
「はい」
 ギンジロウは謹慎中とはいえ、ダビデ王の騎士団の一員だ。
ーーもしかして……
 緊張する。
ーーサオリと一緒にゲームに参加したい。
 フタバは、憐れんだ顔でギンジロウを見た。
「はぁ。残念。KOKの団員は全員Bなんだ……。なんてね。前回の事件で罰則を受けたからね。よかったなぁ。めでたく1ランク落ちて、C+++だ」
「めでたく、ではないですけどね」
 ギンジロウは苦笑した。
ーーアタピ、アタピは?
 頭良くて、運動神経抜群で、可愛くて、錬金術師。こんなになんでもできちゃうんじゃ、もしかしたらAランクでもおかしくはない。
 フタバは、サオリの視線に気づいた。
「サオリ?」
 サオリはうなづいた。
「サオリ……。当たり前ながらCだよ」
「ズコーッ」
「よわー」全ピョーピルがこけた。
「いやいや。人間の90パーセントは全員Cだからね。まだ実績が何もないんだから仕方ないよ。この半径1キロ以内にCでない人なんて、多分5人もいないと思うよ」
ーーそーなの?
 サオリは少しだけ自信を取り戻した。サオリの目を見ていけると思ったフタバは、そのまま続けた。
「それにそうじゃなきゃ、このゲームに参加してもらえなかったしね」
ーーえ? アタピ、参加したいことになってる?
 サオリは驚いたが、元来、新規探索欲求が強い。
ーーま、いーか。面白そうだし。
 思い直してじっくり話を聞くことにした。
「実はオイラ、KOKにこんな提案をしたんだ。3人にこのゲームに挑戦してもらい、トマスを取り戻してもらったらどうか、って。そして成功したら、刑期を早めてPSとPカードを返し、同時にKOKに入団させるのはどうか、と。つまり、今回のゲームは、入団試験みたいなもんだね」
 賢者の石とPカードを返してもらえる。おまけにダビデ王の騎士団にも入団できる。この申し出に、3人は興奮した。
「ま。腕に自信がなければ断ってもいいけど」
「やる!」先ほど激闘を終えたばかりのアイゼンが吠える。すでに目が滾っている。
「やらないわけ、ないだろ」ギンジロウも同様だ。自分の拳を叩いた。
 サオリは……当然だ。この時を待っていたのだ。
「沙織。目に炎、宿ってる」シロピルが指摘する。
ーー当たり前。絶対やる。
 モフフローゼンやミドリにも会いたい。クマオにも自由にリアルカディアを歩かせてやりたい。それに何より、新しいクエストを次々とこなして、世界の広さを実感したい。自分にとって、何が幸せなことかを知るために。
ーー詳細も聞かずにやるなんて、血気盛んな3人組だな。でも、ま、それでこそ、オイラが紹介した甲斐があるってもんだけどね。
 フタバはあいかわらずニコニコとしていた。
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