第54話 抽選(2) Draw

文字数 1,160文字

ーーこれから順番を決めた後で、それぞれのチームが、試合場を決める作戦タイムに入る。インタビューはその時だな。
 VIPラウンジや、個室のベランダからスクリーンを見ている有名人、1階にもいる有名な団体をチェックしながら、ダイナソンはインタビューの順番を考えていた。画面には、クリケットがアップで映しだされている。

「それではこれを」
 クリケットの合図で、ウェイターがお盆を持ってきた。上には4枚のカードが、裏返されて乗っている。
「さて、あなた方リーダーには、チームの命運を握るカードを引いていただきます。どうぞ、お好きなカードに手を置いてください」
 アイゼンとカンレンが、それぞれ別のカードに手を置いた。
 オポポニーチェは、2人がカードに手を置いたことを確認して、まだ誰も手を置いていないカードに筋張った手を置く。
 タンザはニヤリと笑い、ゆっくりと、カンレンの手の上に、分厚い自分の手を重ね合わせた。
 空気がピリつく。

「そうこなくっちゃな」観客の誰かの声が、ざわめきとともに聞こえる。

 カンレンはゆっくりと顔を上げ、タンザの顔を見た。
 絡みつく視線。
 タンザの交戦的な目。
 カンレンは澄み切った目で見上げた後、ため息をつき、ゆっくり一度、目を瞑った。
「随分と大きな子供であるな」
 カンレンは、タンザの目を見ながら日本語でつぶやいた後、カードから手を離し、残ったカードに手を置いた。

 試合前から早くもピリつくこの因縁。観客は大喜びだ。

 クリケットもテンションが高い。
「それではみなさん、一斉にカードをお見せください! 一番は……」
 位置的に、カードはクリケットにしか見えない。

 観客は、固唾を飲んで見守った。

「真言立川流!」

「一番は真言立川流だ!」
「幻の仏教!」観客は口々に叫んだ。

「残り物には徳がある、だな」カンレンはカードを掲げ、仏のような笑みを浮かべた。
「続いて2番目は、」

 カジノ内は一気に静まり返る。唾を飲み込む音でさえ聞こえそうだ。

「リリウス・ヌドリーナ!」

 歓声は一層大きくなり、「ヤーッ」と叫びながら拳を突き上げる人もいた。
ーー因縁の対決が早くも1、2回戦で繰り広げられるのか。これは、この試合の目玉の1つだな。要チェックだ。
 ダイナソンは、後でインタビューをとるためのメモ帳に、「因縁の対決についてどう思うか?」と走り書きをした。

「3番目、黄金薔薇十字団!」

「おおーっ」
ーー謎の多い組織の公式試合。チェックチェック。そして……。

「最後は、ダビデ王の騎士団となります!」

 観客たちは一斉に、それぞれのテーブルで話し合ったり、紙に何かを殴り書きしながら髪をかきむしったりした。
ーーあ。思ったよりインタビューしづらい雰囲気。
 メリルスコープ・ダイナソンは目算が外れたので、持っていた鉛筆で一つ、自分の鼻の頭をかいた。
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