第46話 1週間(2) One Week

文字数 838文字

 ギンジロウはこの1週間、朝は自衛隊の別班や特殊作戦群の知り合いと汗を流し、昼からは若葉公園でサオリたちと合流し、アイゼンとミハエルの指示のもと、キャッチ・ザ・マウス対策に明け暮れた。
 このキャッチ・ザ・マウス対策は、ギンジロウにとって非常に面白かった。戦闘訓練は汗と泥に塗れた男の世界であり、事実、今までは男としか訓練をしたことがなかった。その世界に、追いかけっことはいえ、自分に肉薄できるような女性がいる。しかも、2人ともがとびっきりの美女だ。もちろんサオリ一筋だが、美女にはどんな男だって心が躍る。
 以前、高難易クエストに挑戦するためにサオリと特訓したことはあった。が、あの時は完全に無謀な挑戦だったので、サオリが死なないように、そして、少しでも自分がうまく教えられるようになることで頭が一杯だった。だが、今回はアイゼンとミハエルが教えてくれる。やらなければできないことを知っているギンジロウは、いつも通り練習をサボらない。それでも、女性と共に練習する楽しさを感じる余裕があった。
 さらに、格闘では誰にも負けないと思っていた自分が、ミハエルにかかると赤子の手をひねるように倒されてしまうことが、ギンジロウの脳みそを覚醒させた。
 練習が楽しい。今までとは違う部分が成長している実感がある。ギンジロウは、こんな幸せな日々がいつまでも続いてくれと願いながら、惜しむように濃密な毎日を過ごした。

 試合の日はやってきた。
 ギンジロウは練習の中で、やはり3人の中では自分が一番強い、ということをはっきりと理解した。
ーー俺がサオリとアイゼンを守る。そして強さを証明し、あわよくばサオリから好きだと思われたい。カッコいいと思われたい。
 男の動機は不純。だが、男が女を追いかけるために作られたのだとしたら、それも仕方のないことだ。
ーー俺は元々Bランク。Cランク戦、何するものぞ。
 ギンジロウは、ザ・ゲームでの勝利を確信し、自分の活躍をイメージしながら、委員会から迎えが来るのを待っていた。
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