第56話 試合場(2) Playing Field

文字数 1,459文字

「さあ。それでは最後のチーム。ダビデ王の騎士団の番です。どうぞ、お進みください!」
 クリケットの合図で3人は立ち上がり、弦楽器を持ったカメのディズニーキャラクターの後をついて、外へ出た。
 ピョーピルは、待っている時間に作ったミッキーマウスの耳を全員がつけている。ラッパや太鼓をピーヒャラドンドンと吹き叩き、完全にお祭り騒ぎだ。
ーーうう。気分上がる。
 子供じゃないんだから、はしゃぐのは恰好よくない、と思っているサオリは、ウズウズしながらも、絶対に顔には出さないように我慢していた。それでも、他人から見れば、キョロキョロと辺りを見回して、完全に挙動不審だ。
「どこから行く?」あまり時間がないことを感じているアイゼンは、素早く意見を聞く。
「どこからでもいい。ついていくぜ」ギンジロウはやる気満々だ。
 サオリもパンフレットを見た。
ーーどれも面白そう。
 ニコニコしながら、「うん!」と適当に答える。
「サオリー。ソーダポップコーンが食べたいよー!」アオピルが叫ぶ。
「後、前に本で読んだ、緑の三つ目のお餅も食べたいのぉ」ミドピルが便乗する。
 サオリは、パンフレットに乗っかって指差すピョーピルたちの意見を取り入れ、慌ててアイゼンに付け足した。
「トゥモローランド見てみたい……」
「わかった。トゥモローランドね」
 3人は、出口に横付けされていた金色のクラシックカーに乗り込んだ。キャラクターのカメの運転で、ワールドバザールを抜け、トゥモローランドへと向かう。未来を意識したアトラクションが集まっている地区である。
ーーふぅ。
 アイゼンは、頭の中でため息をついた。
ーー2人とも何も考えてない。私1人で考えよう。
 リーダーが優秀ならば、全員で考えないほうがいい。意見がないのに口出しするより、リーダーの指示に何でも従う方が部下としては優秀だ。
 アイゼンは考えた。
ーーまず、私たちの利点だ。サオリは細かいところに隠れることが出来るから、立体的でごちゃごちゃしたところで、後ろから鈴を取るのに向いている。ギンジロウは、地面のしっかりしたところで棒を持たせたら無敵だ。ちょっとした広いスペースがあれば、棒で引っ掛けて相手の鈴を取ることができる。私は戦略家だから、どんな状況でもうまくやれる。
 次に、初めて本物の対戦相手を見たので、その対策も戦略に取り込む。
ーーリリウス・ヌドリーナ。2人が2メートルを遥かに超えている大男だった。重さは力に比例する。戦闘力も高いだろう。けれども、1人は戦闘力の低そうな小男だった。彼をサオリに抑えてもらえれば、後はギンジロウと2人で大男と戦えばいい。タンザは強者のオーラを醸し出していた。真っ正面から闘えば、ギンジロウより強いかもしれない。けれども巨体なので、動きづらいスペースに追い込んでしまえばいい。ビンゴも同じだ。ということは、ごちゃごちゃして、ちょっと歩きづらいアトラクションを試合場に選ぶべきだ。他の2チームは、どんな相手かまだわからない。対策を立てづらい。だが、一番闘いやすい場所を探して、自分たちの必勝パターンに誘い込めるような作戦を考えよう。
 3人はトゥモローランドに行って、この条件に合いそうなモンスターズ・インクと
バズ・ライトイヤーに乗った。サオリはいつの間にか、ソーダポップコーンとリトルグリーンマンを両手に抱えている。
「次はスペース・マンテンに乗りたい」
 サオリは興奮しながら、小さな声でアイゼンの袖を引っ張ってきた。アイゼンは可愛いと思ったが時間がない。あえて無視して再び車に乗り込んだ。
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