第61話 インタビュー Interview
文字数 1,327文字
「それでは、現場にお返しします。クリケット!」クーの呼びかけで、巨大スクリーンの映像はクリケットに変わる。
クリケットの背後には、暗闇にキラキラと光る、宝石箱のように小さな建物があった。サーカス小屋のテントのような形で、中には巨大なティーポットと、たくさんのティーカップ。1回戦の試合場、アリスのティーカップの前だ。
「さー、みなさん。まもなく1回戦が開始いたします。各チームはクラシックカーに乗り、すでにこのアトラクションに集結しております。今、車から降りてまいりました。チームの状況を聞いてみましょう」
艶やかなドレスに身を包んだ4人のディズニープリンセスが、カメラに手を振りながら、各チームの車に向かっていく。
スタートの順番通り、真言立川流からインタビューをしているようだ。遠くて何を言っているのかまでは聞こえない。
サオリは決戦の場所に立ってみて、自分が身震いしていることに気がついた。
ーーあ、アタピ、モエテル?
「メラメラだゼィ」アカピルが激しく手を動かす。
「ぷるぷる」アオピルは震えている。
「人には色々な感情が同時に存在する」ミドピルが丸い顎をなでる。
「言葉で分けなければ1つとも言えるけど」ピョレットは偉そうだ。
ーーいずれこの様々な気持ちが研ぎ澄まされて、たった1つの感情に絞られていくんだ。
今は感情が混乱している状態だ。だが、この感情は集中され、かつて感じたことのある、圧倒的な万能感へと向かっていく。サオリは、自分の成功と成長を確信していた。
「それでは、次にエスゼロです。こんばんは、お嬢様」
いつの間にか自分がインタビューされる番になっている。黄色いシンプルなドレスに、白い上品な宝石で着飾っている白人のお姫様が、少し屈んでサオリにマイクを向ける。
一方サオリは、ミッキーマウスの耳に、黒ジャージにハーフパンツに黒シューズ。左手首にクルクルクラウン。首に鈴をつけ、襷掛けで小さいポシェットという服装に着替えている。
ーーアタピ、ジャージにしてはオシャンティと思うけど、お姫様と並ぶとさすがにキツい。
サオリは微動だにしなかった。
「フタバエンド推薦選手なんですよね?」
サオリは無表情のまま、口の端と端を大きく広げた。誰にも媚びず、ただ、アタピは笑ってあげました、という意思表示。これがサオリの思う可愛い笑顔、通称、サオちゃんスマイルだ。
「今までのフタバエンド推薦選手は、ほとんどが伝説を残すような好ゲームを繰り広げてきたそうです。エスゼロは自信ありますか?」
「アタピ? ガンバリマス」言うことは何も思い浮かばない。
ーー誰に、なんのために、なに言うのが正しんだろ?
「ありがとうございました。エスゼロでした」
暖簾に腕押しとはこのことだと思ったのだろう。黄色いプリンセスはインタビューを途中で打ち切り、アイゼンにマイクを向けた。
「続いて、KOKリーダーのラーガ・ラージャです」
流暢に喋り、プリンセスを楽しませているアイゼンは、同じようなジャージを着ているのに、ハイヒールを履いたプリンセスよりもスタイルが良い。堂々としていてかっこよかった。
ーーマア、マズハ、カツコトデショ。
サオリは見て見ぬ振りをし、柔軟をしながらジャンプを繰り返した。
クリケットの背後には、暗闇にキラキラと光る、宝石箱のように小さな建物があった。サーカス小屋のテントのような形で、中には巨大なティーポットと、たくさんのティーカップ。1回戦の試合場、アリスのティーカップの前だ。
「さー、みなさん。まもなく1回戦が開始いたします。各チームはクラシックカーに乗り、すでにこのアトラクションに集結しております。今、車から降りてまいりました。チームの状況を聞いてみましょう」
艶やかなドレスに身を包んだ4人のディズニープリンセスが、カメラに手を振りながら、各チームの車に向かっていく。
スタートの順番通り、真言立川流からインタビューをしているようだ。遠くて何を言っているのかまでは聞こえない。
サオリは決戦の場所に立ってみて、自分が身震いしていることに気がついた。
ーーあ、アタピ、モエテル?
「メラメラだゼィ」アカピルが激しく手を動かす。
「ぷるぷる」アオピルは震えている。
「人には色々な感情が同時に存在する」ミドピルが丸い顎をなでる。
「言葉で分けなければ1つとも言えるけど」ピョレットは偉そうだ。
ーーいずれこの様々な気持ちが研ぎ澄まされて、たった1つの感情に絞られていくんだ。
今は感情が混乱している状態だ。だが、この感情は集中され、かつて感じたことのある、圧倒的な万能感へと向かっていく。サオリは、自分の成功と成長を確信していた。
「それでは、次にエスゼロです。こんばんは、お嬢様」
いつの間にか自分がインタビューされる番になっている。黄色いシンプルなドレスに、白い上品な宝石で着飾っている白人のお姫様が、少し屈んでサオリにマイクを向ける。
一方サオリは、ミッキーマウスの耳に、黒ジャージにハーフパンツに黒シューズ。左手首にクルクルクラウン。首に鈴をつけ、襷掛けで小さいポシェットという服装に着替えている。
ーーアタピ、ジャージにしてはオシャンティと思うけど、お姫様と並ぶとさすがにキツい。
サオリは微動だにしなかった。
「フタバエンド推薦選手なんですよね?」
サオリは無表情のまま、口の端と端を大きく広げた。誰にも媚びず、ただ、アタピは笑ってあげました、という意思表示。これがサオリの思う可愛い笑顔、通称、サオちゃんスマイルだ。
「今までのフタバエンド推薦選手は、ほとんどが伝説を残すような好ゲームを繰り広げてきたそうです。エスゼロは自信ありますか?」
「アタピ? ガンバリマス」言うことは何も思い浮かばない。
ーー誰に、なんのために、なに言うのが正しんだろ?
「ありがとうございました。エスゼロでした」
暖簾に腕押しとはこのことだと思ったのだろう。黄色いプリンセスはインタビューを途中で打ち切り、アイゼンにマイクを向けた。
「続いて、KOKリーダーのラーガ・ラージャです」
流暢に喋り、プリンセスを楽しませているアイゼンは、同じようなジャージを着ているのに、ハイヒールを履いたプリンセスよりもスタイルが良い。堂々としていてかっこよかった。
ーーマア、マズハ、カツコトデショ。
サオリは見て見ぬ振りをし、柔軟をしながらジャンプを繰り返した。