第91話 2回戦(5) Second Round
文字数 1,778文字
ーー行っちゃった……。
サオリは、プーさんのハニーハントの地図を思い浮かべた。
ーーローズ団の向かった先……。
次は、第5エリア、ティガーの蜂蜜採りだ。虎のキャラクター、ティガーが飛び跳ねる映像に合わせて、乗っているハニーポットも跳ねる仕掛けがある。部屋は暗く、その映像が終わるまでは入口も出口も閉まる。
ーーもし待ち伏せなんかされちゃったら、一瞬でやられてちゃう。しかもゲラオジサン、アタピが追ってることに気づいてる気がすんだよねー。うーん、どうしよ?
「でも、このままだと、アイちゃん見返すこと出来ないよ?」シロピルが、目的はどうしたの、という目をする。
「だからって行ったら……」アオビルが首に手を当て、ギロチンにかけられる真似をした。
ーー危ない、よなー。
サオリは首をかたむけた。
「沙織ー。ワイなー。思うんやー」明るい声でクマオが発言した。
「うん」
「ワイ、行ったほうがええって思うんやー」
クマオを見ると、ぬいぐるみだというのに目がキラキラしている。
「なんでいいと思うの?」
「だって、その方が、興奮するやんか!! ワイ、100エーカーの森を越えた次のイベント、早う見たいんや! それに、ちょっと入ってみて、相手にバレたら、すぐ出てくればええやん。な?」
「賛成賛成酸性雨ー」キーピルがはしゃぐ。
そういわれると、サオリも本当は、危険を顧みずに次のエリアを見てみたいという気持ちでいっぱいだった。
ーーもー、仕方ないなー。アタピのせいじゃないからねっ。じゃあ、慎重に慎重を重ねてっと。
サオリは深く呼吸を吸った後、今までより更に気配を殺すことを心がけながら、仙術、忍び寄る薄ら影法師をおこなった。流れていくハニーポットには乗らず、ポットの影にしがみつく。もはや誰も、サオリの気配を感じとれない。
ポッドが流れていく。
頭上にいるティガーが、「蜂蜜の取り方を教えてやろう」と偉そうに声をかけてきた。クマオは、「ほな、教えてもらおうか」という顔をした。
流れるままにティガーの部屋に入る。
ーー罠だった!
入った瞬間に分かったが、もう遅い。2人の人影が地面に降りていて、流れているハニーポットの中を見まわっている。
サオリの隠れているポットにもやってくる。
サオリは、影になることに集中した。丸まっているので、もし見つかっても、すぐには鈴をとられない。
ーー今はまず、隠れるんだ。
ガタガタとポットを揺する音がする。クマオも両手を口に当て、楽しくなってしまいそうな心を必至でおさえる。2人が自分の隠れているポッドから離れても、サオリは緊張を少しもとかなかった。
トランポリン床により、ハニーポットは、ティガーの歌に合わせてバウンドし、止まる。
扉が開き、次のエリアへとハニーポットは進む。黄金薔薇十字団の3人はこの場に留まるようだが、サオリは隠れることで精一杯。それを確認する術がなかった。
サオリがしがみついているハニーポットは、第6エリア、スペースプーさんへと流れていった。プーさんが浮かびあがり、「蜂蜜泥棒ー」という声がリフレインしている。
ーーまだ油断できない。
サオリはあまりの緊張で、胃をおさえつけられているかのように気持ちが悪くなってしまった。
そのまま暗い部屋の扉が開き、第7エリア、プーさんの夢の中へと流れていく。
不気味な音楽と照明に変わり、延々とプーさんの見ているシュールな夢の世界が続く。黄金薔薇十字団が、ティガーのトランポリンエリアから出てくる様子はない。検問でも続けているのだろうか。
サオリは、黄金薔薇十字団を見張っていなくてはならない。だが、危険すぎて近寄ることができない。
とはいえ、見つからずに部屋を抜ける事が出来た。誰も追ってこない。鈴を取られないという次善の策は、今のところ成功している。
ーーよかたー。
「沙織。顔色悪いで? ローズ団も見えへん。一度落ち着くまで、すこし蜂蜜壺にはいって休みぃ」
ハニーポットにぶら下がっていたサオリは、クマオの言うことを聞き、素直にポットの中に入った。
ーーフヒー。
自分の緊張が切れたような気がする。想定より上手く、薄ら影法師になることができた。だが、そのぶん精神的に疲労している。
ーーちょと隠れただけなのに……。あ、ダメ……。見張らないと……。
サオリはいつの間にか、ハニーポットの床で倒れていた。
サオリは、プーさんのハニーハントの地図を思い浮かべた。
ーーローズ団の向かった先……。
次は、第5エリア、ティガーの蜂蜜採りだ。虎のキャラクター、ティガーが飛び跳ねる映像に合わせて、乗っているハニーポットも跳ねる仕掛けがある。部屋は暗く、その映像が終わるまでは入口も出口も閉まる。
ーーもし待ち伏せなんかされちゃったら、一瞬でやられてちゃう。しかもゲラオジサン、アタピが追ってることに気づいてる気がすんだよねー。うーん、どうしよ?
「でも、このままだと、アイちゃん見返すこと出来ないよ?」シロピルが、目的はどうしたの、という目をする。
「だからって行ったら……」アオビルが首に手を当て、ギロチンにかけられる真似をした。
ーー危ない、よなー。
サオリは首をかたむけた。
「沙織ー。ワイなー。思うんやー」明るい声でクマオが発言した。
「うん」
「ワイ、行ったほうがええって思うんやー」
クマオを見ると、ぬいぐるみだというのに目がキラキラしている。
「なんでいいと思うの?」
「だって、その方が、興奮するやんか!! ワイ、100エーカーの森を越えた次のイベント、早う見たいんや! それに、ちょっと入ってみて、相手にバレたら、すぐ出てくればええやん。な?」
「賛成賛成酸性雨ー」キーピルがはしゃぐ。
そういわれると、サオリも本当は、危険を顧みずに次のエリアを見てみたいという気持ちでいっぱいだった。
ーーもー、仕方ないなー。アタピのせいじゃないからねっ。じゃあ、慎重に慎重を重ねてっと。
サオリは深く呼吸を吸った後、今までより更に気配を殺すことを心がけながら、仙術、忍び寄る薄ら影法師をおこなった。流れていくハニーポットには乗らず、ポットの影にしがみつく。もはや誰も、サオリの気配を感じとれない。
ポッドが流れていく。
頭上にいるティガーが、「蜂蜜の取り方を教えてやろう」と偉そうに声をかけてきた。クマオは、「ほな、教えてもらおうか」という顔をした。
流れるままにティガーの部屋に入る。
ーー罠だった!
入った瞬間に分かったが、もう遅い。2人の人影が地面に降りていて、流れているハニーポットの中を見まわっている。
サオリの隠れているポットにもやってくる。
サオリは、影になることに集中した。丸まっているので、もし見つかっても、すぐには鈴をとられない。
ーー今はまず、隠れるんだ。
ガタガタとポットを揺する音がする。クマオも両手を口に当て、楽しくなってしまいそうな心を必至でおさえる。2人が自分の隠れているポッドから離れても、サオリは緊張を少しもとかなかった。
トランポリン床により、ハニーポットは、ティガーの歌に合わせてバウンドし、止まる。
扉が開き、次のエリアへとハニーポットは進む。黄金薔薇十字団の3人はこの場に留まるようだが、サオリは隠れることで精一杯。それを確認する術がなかった。
サオリがしがみついているハニーポットは、第6エリア、スペースプーさんへと流れていった。プーさんが浮かびあがり、「蜂蜜泥棒ー」という声がリフレインしている。
ーーまだ油断できない。
サオリはあまりの緊張で、胃をおさえつけられているかのように気持ちが悪くなってしまった。
そのまま暗い部屋の扉が開き、第7エリア、プーさんの夢の中へと流れていく。
不気味な音楽と照明に変わり、延々とプーさんの見ているシュールな夢の世界が続く。黄金薔薇十字団が、ティガーのトランポリンエリアから出てくる様子はない。検問でも続けているのだろうか。
サオリは、黄金薔薇十字団を見張っていなくてはならない。だが、危険すぎて近寄ることができない。
とはいえ、見つからずに部屋を抜ける事が出来た。誰も追ってこない。鈴を取られないという次善の策は、今のところ成功している。
ーーよかたー。
「沙織。顔色悪いで? ローズ団も見えへん。一度落ち着くまで、すこし蜂蜜壺にはいって休みぃ」
ハニーポットにぶら下がっていたサオリは、クマオの言うことを聞き、素直にポットの中に入った。
ーーフヒー。
自分の緊張が切れたような気がする。想定より上手く、薄ら影法師になることができた。だが、そのぶん精神的に疲労している。
ーーちょと隠れただけなのに……。あ、ダメ……。見張らないと……。
サオリはいつの間にか、ハニーポットの床で倒れていた。