第４１話 ヒナ（３） Ｈｉｎａ
文字数 2,162文字
「ヒナ様。ボルサリーノについては私も驚きました。ですが、それ以上に驚きは3組目です。なんと、あの、フタバエンドの推薦選手です」
ーーフタバエンド?
フタバエンドといえば、若者たちの誰もが悩む時期にその詩集を読む、中二病界きってのカリスマ詩人だ。
ヒナも普通の女の子として生きたいのに、生まれた時からヒナであるという宿命に抗えなくて悩んだことがある。そんな時、フタバの詩集にはまって、「自分自身の素晴らしさ」と「世界の大きさ」について感嘆し、この役職をやり切ろうという覚悟を決めるきっかけになったものだ。
そんなフタバが詩を書かなくなった後で、ダビデ家にお世話になって、人材発掘業をしているという噂は知っていた。ジョットやフルモントン、クリオニックなど、裏社会で有名な者の何人かは、フタバが見つけて紹介したという噂も聞いている。
ヒナがザ・ゲームのシンボルになってからは、まだ一度もフタバ紹介選手が出場したことはなかった。だが、フタバが推薦したチームが参加するザ・ゲームは、いつも伝説のような試合になっていたという話は聞いている。
ーーそのフタバエンドの推薦選手? どんな人たちなんだろう?
一切の記録媒体がないので、フタバ推薦選手を見たことがない。ヒナはワクワクが止まらなかった。
「まず、3組目の組織名は、ダビデ王の騎士団です」
ーーえっ? 世界最大の権力を持つ13血流のひとつ、正統なるダビデの血統、ダビデ王の騎士団? KOK? 噂話かと思ってた! 実在するんだ!
しかし、ヒナには1つ、疑問があった。
「KOKといえば、全員が錬金術の使い手で、見たこともない想像上の生物も所属しているといわれている、伝説の最強集団ではないか。Cランクの者など1人もいないはずじゃぞ?」
「いえ。組織名こそKOKですが、あくまで推薦選手であって、KOKに所属しているものではないそうです」
「どういうことじゃ?」
「今回、賞品で出ている護良親王のドクロ。KOKでは、危険なオーパーツだと思っているそうです。けれども、KOKにはご存知のように、Cランクの団員が1人もいません。そこで、ドクロを手に入れるために、フタバが推薦した選手を送り込んできた、という形です」
「なるほどねぇ」
ーーじゃあ、KOKの団員じゃないってわけか。
理由がわかってスッキリすると、次は早く選手の事が知りたかった。クーに渡されたタブレット端末は、クーがめくらないとヒナの端末ではめくれない。クーもわかっているのだろう。すぐに続きを始めた。
ーーきっと、強い選手なんだろな。
ヒナはワクワクした。
「それでは選手です。1人目はラーガ・ラージャ。C++。19歳。今年の初めまでは女子高生でした。女サムライとして有名です。日本の武道である剣道の試合では一度も負けた事がなく、先日はついに、世界大会でも優勝した事でニュースにもなりました」
データでは181センチと、女性にしてはかなりの高身長だ。だが、写真は、モデルと見紛うようなスタイルで、品行方正な雰囲気がミックスされている。いわゆる大和撫子の見本のような女性だ。キリッとした表情から、しっかりとした性格が窺えるが、とても立川三羽鴉や、殺戮の巨神兵より強いとは思えない。
ーーわ! 美人! 年齢も近いし、この子のファンになっちゃおうかな。
ようやくヒナの心が躍る選手が出てきた。クーは淡々と2枚目をめくる。
「2人目の選手はイノギン。C+++。KOKでシルバーナイトと呼ばれていたのですが、2ヶ月前に規約を破って首になってしまった男です。KOKに入団していたほどの実力なので、弱いということはないでしょう」
身長180センチ。体重80キロ。髪の毛も黒くて短く、あまり身なりに気を遣っているようには見えないが、彼もスタイルがいい。
ーーやーん、イケメン。ちょっと野暮ったいけど、アリかナシかで言ったら、断然アリよりのアリだわ。何? フタバエンドのチームが楽しみって、こういうこと?
クーは男に興味はない。特にイケメンを、長い間ヒナに見せたくはない。すぐに次のページをめくった。
「そして、3人目はエスゼロ。C。16歳です。ただの背の低い女子高生にしか見えませんが、この子こそ、フタバが一番推薦したかった選手だそうです。裏表含めて、特に社会で注目を浴びたという経歴はありません。強いていえば、オーケストラコンクールでパーカッションとして全国大会に出場した経験があります」
ーー何? この子?
身長150センチ。体重40キロ。ヒナにはただの小さな可愛い子供にしか見えなかった。
「この子もボルサリーノみたいに、ハンデとしてチームに入ってるの? それにしては、他の2人も大して強そうな気はしないけど」
「いえ。そういうわけではございません。ただ、フタバ曰く、盛り上がるから期待しててくれとのことです」
フタバからの太鼓判があるというと俄然気になる。もしかしたら彼女こそ、特殊能力を持っている隠し球なのではないだろうか? ダビデ王の騎士団からの推薦ということは、もしかして、本当に錬金術が使えるのかもしれない。
ーーあー、でもこの子、フタバエンドの推薦とは聞かなくても何だか魅力的だわ。応援したくなる。
ヒナは写真の見た目だけで、サオリのファンになることを即決した。
ーーフタバエンド?
フタバエンドといえば、若者たちの誰もが悩む時期にその詩集を読む、中二病界きってのカリスマ詩人だ。
ヒナも普通の女の子として生きたいのに、生まれた時からヒナであるという宿命に抗えなくて悩んだことがある。そんな時、フタバの詩集にはまって、「自分自身の素晴らしさ」と「世界の大きさ」について感嘆し、この役職をやり切ろうという覚悟を決めるきっかけになったものだ。
そんなフタバが詩を書かなくなった後で、ダビデ家にお世話になって、人材発掘業をしているという噂は知っていた。ジョットやフルモントン、クリオニックなど、裏社会で有名な者の何人かは、フタバが見つけて紹介したという噂も聞いている。
ヒナがザ・ゲームのシンボルになってからは、まだ一度もフタバ紹介選手が出場したことはなかった。だが、フタバが推薦したチームが参加するザ・ゲームは、いつも伝説のような試合になっていたという話は聞いている。
ーーそのフタバエンドの推薦選手? どんな人たちなんだろう?
一切の記録媒体がないので、フタバ推薦選手を見たことがない。ヒナはワクワクが止まらなかった。
「まず、3組目の組織名は、ダビデ王の騎士団です」
ーーえっ? 世界最大の権力を持つ13血流のひとつ、正統なるダビデの血統、ダビデ王の騎士団? KOK? 噂話かと思ってた! 実在するんだ!
しかし、ヒナには1つ、疑問があった。
「KOKといえば、全員が錬金術の使い手で、見たこともない想像上の生物も所属しているといわれている、伝説の最強集団ではないか。Cランクの者など1人もいないはずじゃぞ?」
「いえ。組織名こそKOKですが、あくまで推薦選手であって、KOKに所属しているものではないそうです」
「どういうことじゃ?」
「今回、賞品で出ている護良親王のドクロ。KOKでは、危険なオーパーツだと思っているそうです。けれども、KOKにはご存知のように、Cランクの団員が1人もいません。そこで、ドクロを手に入れるために、フタバが推薦した選手を送り込んできた、という形です」
「なるほどねぇ」
ーーじゃあ、KOKの団員じゃないってわけか。
理由がわかってスッキリすると、次は早く選手の事が知りたかった。クーに渡されたタブレット端末は、クーがめくらないとヒナの端末ではめくれない。クーもわかっているのだろう。すぐに続きを始めた。
ーーきっと、強い選手なんだろな。
ヒナはワクワクした。
「それでは選手です。1人目はラーガ・ラージャ。C++。19歳。今年の初めまでは女子高生でした。女サムライとして有名です。日本の武道である剣道の試合では一度も負けた事がなく、先日はついに、世界大会でも優勝した事でニュースにもなりました」
データでは181センチと、女性にしてはかなりの高身長だ。だが、写真は、モデルと見紛うようなスタイルで、品行方正な雰囲気がミックスされている。いわゆる大和撫子の見本のような女性だ。キリッとした表情から、しっかりとした性格が窺えるが、とても立川三羽鴉や、殺戮の巨神兵より強いとは思えない。
ーーわ! 美人! 年齢も近いし、この子のファンになっちゃおうかな。
ようやくヒナの心が躍る選手が出てきた。クーは淡々と2枚目をめくる。
「2人目の選手はイノギン。C+++。KOKでシルバーナイトと呼ばれていたのですが、2ヶ月前に規約を破って首になってしまった男です。KOKに入団していたほどの実力なので、弱いということはないでしょう」
身長180センチ。体重80キロ。髪の毛も黒くて短く、あまり身なりに気を遣っているようには見えないが、彼もスタイルがいい。
ーーやーん、イケメン。ちょっと野暮ったいけど、アリかナシかで言ったら、断然アリよりのアリだわ。何? フタバエンドのチームが楽しみって、こういうこと?
クーは男に興味はない。特にイケメンを、長い間ヒナに見せたくはない。すぐに次のページをめくった。
「そして、3人目はエスゼロ。C。16歳です。ただの背の低い女子高生にしか見えませんが、この子こそ、フタバが一番推薦したかった選手だそうです。裏表含めて、特に社会で注目を浴びたという経歴はありません。強いていえば、オーケストラコンクールでパーカッションとして全国大会に出場した経験があります」
ーー何? この子?
身長150センチ。体重40キロ。ヒナにはただの小さな可愛い子供にしか見えなかった。
「この子もボルサリーノみたいに、ハンデとしてチームに入ってるの? それにしては、他の2人も大して強そうな気はしないけど」
「いえ。そういうわけではございません。ただ、フタバ曰く、盛り上がるから期待しててくれとのことです」
フタバからの太鼓判があるというと俄然気になる。もしかしたら彼女こそ、特殊能力を持っている隠し球なのではないだろうか? ダビデ王の騎士団からの推薦ということは、もしかして、本当に錬金術が使えるのかもしれない。
ーーあー、でもこの子、フタバエンドの推薦とは聞かなくても何だか魅力的だわ。応援したくなる。
ヒナは写真の見た目だけで、サオリのファンになることを即決した。
