第121話 3回戦(2) Third Round

文字数 1,264文字

 「The Haunted Mansion」と書かれた門をくぐると、屋根のある細い通路が続く。ツタの絡まった門の石柱には、「NIGHTMARE FROM OPOPONICHE」と書かれていた。
ーーいつの間にかオポポノコの名前が書いてある!!
「面白おじさん!」シロビルが指差す。 
 サオリは一瞬身震いした。頭上からアナウンスが流れてくる。
「4時11分48秒。ネコチーム。真言立川流。寂乗。アウトー」
ーーえっ!
 振り向くと、鈴を片手でお手玉しながら、ギンジロウがサオリに向かってきた。
「鈴」サオリが指差すと、ギンジロウは嬉しそうに小声で言う。前を歩くタンザたちには聞かれたくないからだ。
「愛染が、さっきの休憩時間中、観蓮と話し合いにいっていたんだ。怪我して闘えない寂乗の鈴を他のチームに奪られたくないから、俺たちにくれるんだって。ほら」
 サオリは、ギンジロウがさしだしてきた鈴を見ながら感動した。
ーーアタピが、どしたらオポポノコやデカデカブラザーズに勝てるか考えてた時に、アイちゃんは闘わないで鈴を取る方法を考えてたのか。
 サオリは感心した。アイゼンはまだ、カンレン、カンショウと話をしている。
「アイちゃんは?」
 ギンジロウは頭をかいた。
「まだ、交渉を続けているよ」
「何の?」
「立川流は今、リリウス・ヌドリーナと凄い得点が離れているでしょ? だから、鈴をくれることで俺たちを勝たせて、代わりに賞品のドクロを貸し続けるという盟約を結んだんだって。でも、立川流はまだ1点も取れてないじゃない。それはさすがに沽券に関わるから、なんとか今回の試合で1周して、20点とって、それから鈴を渡したいんだって」勝利に対して意味のないことだとは思ったが、バカだとは思わない。サオリもギンジロウもプライドが高い。たとえ負けそうでも一矢報いたい。そんな気持ちはよく分かる。
「けどそうすると、観蓮と観照が他のチームに鈴を奪られる可能性も上がる。それを防ぐために、愛染が彼らと同行する。それでも他のチームに鈴を奪られそうだったら、奪られる前に愛染に渡すようにするんだって」
ーーアイちゃんは色々考えてるなー。
「アイちゃん、あったまいー」アカピルが目をクルクルする。
「アカと違ってなー」シロピルがアカピルの肩を叩いた。
「一文字違いー」キーピルだ。アカピルは頭の良さに高い価値を感じていない。ケロッとしたものだ。情熱が足りないとでも言われたら、烈火のごとく怒るのかもしれないが。
 サオリがピョーピルとの話に夢中になっていると、ギンジロウが心配そうな顔をしていた。頭の中で会話しすぎて、いつものように歩みを止めていたからだ。
「さ、沙織さんは、俺が守ります。安心してください」たどたどしい。
ーー守って欲しいなんて言っていないのに。
 動きを止めると、他人は勝手に自分を心配する。道を歩いている最中も、眠くなって転がるだけで、すぐに誰かに起こされる。
ーーアタピもシャキッとしなきゃ。
 サオリはピョーピルと共に、両手両足をまっすぐ上げて、まるで行進のように堂々と歩いてみた。
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