第72話 勝敗予想 Prediction

文字数 1,863文字

 クーは、前屈みになっていた体を起こした。
「どうでしたか? お2人とも。どこのチームに有利だと思いますか?」
「ふむう」
 背もたれに寄りかかっていたマックス・ビーは、そのままのゆったりとした姿勢で質問に返す。
「戦略によって有利不利は大きく変わるな」
「うんうん」フタバも椅子の上で体育座りをしながらうなづく。
「それでは、順番にお伺いいたしましょう。マックス・ビーの今回の試合展開はいかがですか? 予想する勝利チームとMVPとと共にお答えください」客は解説席ではどのような予想がなされるのか、楽しみにして2階を見ている。マックス・ビーは、観客の視線を楽しみながらゆっくりと答えた。
「うん。そうだな。2回戦もリリウス・ヌドリーナが勝つと予想しよう」
「それはなぜですか?」
「やはり1回戦のあの戦闘力だ。しかも今回は複雑とはいえ、10エリアの出口付近で敵を待てば、背後から奇襲を受ける心配もない。GRCも気にはなっているが、まだ実力が全く分からないからな。勝てるかどうかは分からない」
「他の2チームはどうですか?」
「KOKは女子供のチームだ。話にならない。ケガしないことを祈るだけだ。真言立川流はダメージと戦略次第かな。気配を消せるのならば、エリア4の森や、7の夢の中で敵を待ち伏せすれば、後ろから1人ずつ狩っていけるかもしれないな」
「ということは、勝敗予測は?」
「ヌドランゲタ、GRC、真言立川流、KOK。MVPは今回もタンザかな」
 客がざわめく。書き込みをしたり、執事に何かを持たせたりと様々だ。
「なるほど。それでは、フタバさんはいかがですか?」
「おいら?」フタバは驚いたような顔をした後、ニコニコとして話を続けた。
「聞くまでもない。終始一貫して、KOKが勝つと思ってるよ」
 客がざわつく。
「しかし、KOKは1回戦で何もできませんでしたよ? 必ず勝つと言い切る根拠はなんですか?」
 ヒナも、なぜフタバがそこまで自信を持っているのか分からない。身を乗り出して話を聞いてみたい。階下の客に笑顔で手を振りながら、ヒナは解説に耳をそば立てた。
「そりゃ、オイラの紹介だからね。みんなの目で確かめてもらいたい」フタバは、細い目でお茶目にウインクした。
「俺はお前に賭けるぞー!」階下で客がフタバに拳を突き上げる。
ーー私もエスゼロちゃんたちに賭ける。
 ヒナはグッと拳を握りしめた。
「ありがと」フタバは、客に手をふり返した。
「ただ1つだけ。もし2回戦もリリウス・ヌドリーナが快勝したら、もう流れは変えられないかもしれないけどね」
「ということは、2回戦が天王山と言っても過言ではない。そういうことですね」
 フタバがうなづく。
「他の2チームはどうですか?」
「マックス・ビーの言う通りだと思う。実力未知数のGRCは分からない。真言立川流は優勝に黄色信号が灯り始めたが、いってもまだ19点差。これから十分取り返せる点差だよ。倍率はかなり落ちるだろうから、大穴狙いとして賭けてみてもいいと思う」
「ということは、予想順位は?」
「KOK、ヌドランゲタ、GRC、真言立川流かな」
「KOK以外の順位は全て一緒ですね」
「現状だとこうならざるを得ない、な。誰かが子供を猛プッシュしているが、彼には何らかの裏取引や儲けが存在しているんだろうね」マックス・ビーが手を広げて皮肉を言う。
「とんでもない。おいら、ただ、彼らのファンてだけさ。金なんてこれ以上いらない。美しい光景をひとつでも多く網膜に焼き付けたい。そのために生きているんだ。そしてKOKは絶対やってくれる。そう信じている」
ーーうんうん。
 ヒナも同じ気持ちになってうなづいた。
 ダイナソンが1階で、客の声を聞いて回っている。
 クーは、下の様子を見ながら、解説を一度締める事にした。
「なるほど。1回戦で真言立川流を完膚なきまでに叩きつぶしたリリウス・ヌドリーナが、2回戦ではさらに他チームを蹂躙し、ダニエレ・ヌドリーナここにありと知らしめるというわけですね。それを押さえるのは果たしてどのチームなのか? 真言立川流の逆襲はあるのか? 不気味な黄金薔薇十字団がいよいよベールを脱ぐのか? それとも、フタバが推薦するダビデ王の騎士団が活躍するのか? さあ。注目の2回戦が始まるのは、日本現地時間の午前2時6分から。最終ベットは2時までです。みなさん。月の女神ヒナのご加護がありますように」
 クーは大きく手を広げ、お客さんに向けてアピールをした。ヒナも慌てて、心の中に月の女神らしさを取り戻し、優しい顔で優雅に小さく手を振った。
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