第６０話　試合予想（３）　Ｐｒｅｄｉｃｔｉｏｎ

「それでは、ベットしている方たちのために、ここで両ゲストの現時点での予想をお聞きしましよう。マックス・ビーはいかがですか?」
「ＣＴＭはネズミチームが圧倒的に有利だ。しかも全員初参加。最初は様子見から入るだろう。以上から、1回戦の勝者は真言立川流。ＭＶＰはリーダーの観蓮だと思う。優勝は、組織名からしか判断できないが、GRCかな?　なぜなら、あれだけ実績のある団体が、弱いメンバーを試合に出すはずがないからね」
「実績があるといえば、ＫＯＫもなかなかのものだと思うけどねぇ」
　フタバの軽口をマックス・ビーは流した。
「ただし、実際の動きを見ていないのでまだわからない。自分の予想が当たってくるのは1回戦が終わった後だよ。まぁ……」言いながらフタバを見る。
「1回戦が終わっても、ＫＯＫが優勝するという予想にはならないでしょうな」
　解説席内ではピリピリとした空気が流れる。クーは汗を拭く。
「なるほど。それでは、ミスター・フタバはどうでしょう?」
「オイラは、1回戦ＫＯＫ。2回戦も3回戦も4回戦もＫＯＫ。ＭＶＰも全てエスゼロ。以上だよ」
　クーは驚いた顔でフタバにたずねた。
「そんなにもエスゼロ選手のことを買っている理由はなんでしょうか?」
「ここ10年間生きてきた中で、一番美しいシーンを見せてくれたのが彼女だからさ」フタバは事もなげに言う。
「美しいシーン、ですか?」
「ああ。人の頭の上を飛んでいる女子高生を見たことがあるかい?　未確認飛行おチビちゃん、UFOの美しい姿を、ぜひみんなにも見ていただきたい。オイラの動機はそれだけさ」
　マックス・ビーは、話にならんという顔をした。クーが手元の画面を見る。
「さあ。それではみなさん。ここで掛け率の中間発表が入りました。早速ご覧いただきましょう。まずは1回戦のチーム予想です」
　巨大スクリーンには、掛け率の一覧表が映る。

1回戦予想
1位　真言立川流　　　　　　２.３倍
2位　リリウス・ヌドリーナ　２.６倍
3位　黄金薔薇十字団　　　　５.６倍
4位　ダビデ王の騎士団　　１２.２倍」

「おー」
　客の感嘆が聞こえる。
「やはりネズミチームや因縁の相手は人気が高いですね。尻尾は正面から奪るのは難しいですもんね」
「ＫＯＫは当然のように断トツで低いな」マックス・ビーが嘲笑う。
「あくまで一般客の予想だからね」フタバは意に介さない。
「続いてＭＶＰ予想です」

1回戦MVP予想
１位　カンレン
２位　タンザ
３位　ビンゴ
４位　オポポニーチェ
５位　イノギン
６位　ジャクジョウ
７位　カンショウ
８位　ラーガ・ラージャ
９位　シザー
１０位フォー
１１位ボルサリーノ
１２位エスゼロ

「やはりカンレンやビンゴ、タンザが高いのは予想通りですが、オポポニーチェの人気が高いのは意外でしたね」
「ＫＯＫの評価が軒並み低いのは予想通りだな」マックス・ビーが皮肉る。
「1回戦が終わったら、この評価がガラリと変わるよ」フタバは相変わらずのんびりと、自信のある口調で答えた。
「それでは最後に、優勝チームの予想です!」
　画面が切り替わる。

最終結果予想
１位　真言立川流
２位　黄金薔薇十字団
３位　リリウス・ヌドリーナ
４位　ダビデ王の騎士団

「GRCがまさかの２位ですね」
「オポポニーチェには誰もが期待させられる」マックス・ビーの言に、フタバも深くうなづいた。
　ここでの言い争いはない。薔薇堕ち、穢れた薔薇なのか。それとも別人なのか。オポポニーチェには、みんなが期待する何かがある。

ーーただのビッコ引いた悪目立ちおじさんにしか見えないけどなー。それよりもエスゼロ、大丈夫かしら?　フタバエンドがゴリ押ししてるけど、本物を見ると華奢すぎて不安に駆られるわ。無事に生きて帰ってほしい。
　ヒナはいつの間にか、すっかり今回のザ・ゲームに引き込まれていた。