第190話 結果発表(2) Result

文字数 1,541文字

「CTMで引き分けになったのは初めて見たぞ!」
「こういう時はどうするんだっけ?」
「賞金か賞品かを選んで2チームで分けますか?」
「引き分けにするなら、賭けは成立するのか?」
「ルールを参照しろ!」
「ルールブックにはありませんでした!」
 クーにとって、同時優勝という選択はしたくない。優勝者を2チーム出してしまうと、2チーム分の勝ち金を支払わなければならない。その分、委員会に入る儲けは少なくなる。客の盛り上がりにも欠ける。
ーーくだらない終わり方をさせてしまいたくないな。
 ここまでが好試合だっただけに、最後がスッキリしないと画龍点睛を欠く。
「こうなる可能性は考えなかったのか?」クーが怒鳴る。
「4回戦開始時点では、引き分けになる可能性はなかったんです!」カイナル副委員長が責任転嫁する。だが、この時間帯での責任追及には全く意味がない。結論を一刻でも早く客に発表する。これが1番の優先事項だ。
「過去の判例は?」
「今、探しています!!
 東京ディズニーランドの営業時間は10時からだ。追加試合をしたくても、撤収時間を含めて8時までしか借りることはできない。追加ステージの用意も勿論ない。今から用意することも時間的に不可能だ。
 更に、フォースダルマーズを使用する賢者や、現地スタッフの労働時間もある。観覧会場としているワイアヌエヌエや、世界中のフリーメイソンリー・グランドロッジの使用時間も決まっている。
 だが、ザ・ゲーム委員会が混乱している姿は見せたくない。クーは緊急対応を取ることにした。とりあえず対応が決まるまでは、選手に結果を知らせない。「発表は表彰式の会場でおこなう」とだけ告げ、選手にはシンデレラ城まで移動してもらう。
 だが、これは単なる時間稼ぎに過ぎない。クーは焦った。他の委員の話を聞くことが重要な時もある。が、現在は危急存亡の時。独裁的に考えた方がいい。フルスロットルで考えをまとめる。
 真言立川流とリリウス・ヌドリーナの交渉決裂による対立。眉唾物だった伝説の錬金術師であるオポポニーチェの復活。そして最後に、フタバ推薦チーム、ダビデ王の騎士団の大どんでん返し。
ーー私のお披露目式として、ここまではうまくいっている。大成功までは後少しだ。
 しかし、この先どういう展開を考えれば高評価を得られるのだろう。先代のクーより評価をもらえるのだろう。最悪、金銭的な儲けは度外視しても良い。評価さえ上がれば、後で赤字は取り戻せる。
ーーだが、引き分け同時優勝はな……。
 これから何かあると思っている客の盛り上がった空気をぶち壊してしまう気がする。階下で声を上げる客の意見は、次の5つに割れていた。
 同時優勝でいいという声が1割。
 同時優勝でいいが、後日また、別競技で再戦させろという声が2割。
 フォーの鈴の点数は近くにいたボルサリーノのものだから、リリウス・ヌドリーナを優勝させろという声が2割。
 最後に2対1になった時点で勝負はついていたので、ダビデ王の騎士団を優勝させろという声が1割。
 残りの4割は、延長戦を希望している。
 これら全ての客の声は、ザ・ゲームのルール内で適用可能だ。
 同時優勝にすれば引き分けに。
 黄金薔薇十字団の自爆だという判定に変えればリリウス・ヌドリーナが優勝に。
 残酷なシーンを避けたという判定ならダビデ王の騎士団に。
 延長戦にするなら、ビンゴ以外は無傷のリリウス・ヌドリーナが圧倒的に有利だ。
ーー儲けをとるなら賭け率の少ないダビデ王の騎士団を優勝にしたい。だが、どれを採用しても客は納得しないだろう。
 クーは、解説席で場繋ぎをしているマックス・ビーとフタバに助けを求めるような目つきをした。部屋はマジックミラーになっている。もちろん2人は全く気づかなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み