第198話 VIPルームE(2) VIP Room E

文字数 985文字

「以前、お父上に提言した通り、私はタクシス家らしく、裏から世界の情報を支配しようと思っています。この前のビルダーバーグ会議では、FANGAMらビッグテックと連絡先を交換し、現在、密に連絡を取り合っております」
 ビルダーバーグ会議とは、1年に1度、世界中の権力者150人程度が一堂に会して、世界の未来を決める会議のことだ。王族、首相、12貴族、13血流などの高位イルミナティ、そして、巨大企業の社長や開発者が参加者に名を連ねる。その多くは欧米人だ。
 FANGAMとは、フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル、アマゾン、マイクロソフトの、世界で最大の勢力を誇る巨大会社の略称だ。ビルダーバーグ会議は、彼らとイルミナティーの顔合わせの場ともなっている。
「なるほど。ネオコンをおさえるという訳だな」
 ダボス会議やビルダーバーグ会議に参加するような権力者たちは、300人委員会、もしくはオリンピアンズと呼称される。
 13血流がイルミナティを結成した当初、権力は、ロスチャイルド率いる欧米派と、ロックフェラー率いるアメリカ派に分かれていた。だが、インターネットが普及し始めた15年前からは、新しい一派が勢力を拡大している。それがネオコン派だ。
 ネオコンとは、ネオ・コンサバティズム、つまり、新保守主義のことだ。アメリカで勢力を広げている。簡単にいうと、アメリカの国益よりも、自由主義や民主主義といった理想を重視する、政治イデオロギーである。
 世界は、インターネットによって、あっという間に繋がりを強くした。こうなると、自由な世界を目標に掲げているネオコン派の勢力が強くなっていく。
 世界を作る者は、力を持つ者である。
 この事実は今後も変わらない。
 タクシス家は、情報と財力によって、いち早く力を持つ者に貸しを作ることで、その権力を、不動のものにしている。もちろん、これら巨大企業にも金や情報を使用して、互いに巨大な権力を膨らませ続けようとする。これがタクシス家長男、ヨハネスの戦略である。
「ええ。これからは、13血流のいくつかは没落し、彼らが新しい権力者としてのし上がっていくでしょう。彼らはお金では動きません。ですが、自己顕示欲と情を使えば、動かすことは可能だと判断しております。そして、それを与えられるのは、我々貴族しかおりません」ヨハネスは、ワシ鼻を高く掲げた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み