第一章①

文字数 2,567文字

あたしの名前は奥中真子!
小学3年生。
千葉県のいすみ市に住んでいて、
第一小に通ってるの。
クラスは3年2組で、先生の名前は
管原綾子先生。
優しくて、スゴイ美人で、良い匂い。
でも、怒ると、怖いんだ。

ママの名前は奥中峯子。
他の人に年齢を言うと怒られるけど、
今は、いないから……、ママは、
30歳です。

それでね、パパは、いないの。
ママは、「真子ちゃんが生まれる前に
死んじゃったのよ。」って、言ってた。

あっ、真子っていう名前はね、
お母さんがつけてくれたんだ。
2年生の時に、赤ちゃんの頃の写真を
もってくる、あと、
自分の名前は誰が決めて、何でその名前に
なったのか調べてくるって
いう宿題があったの。

その時にね、ママに、
あたしの名前のこと訊いてみた。
そうしたら、ママは言ってくれたの。
「真子ちゃんの名前はね、正直な子に
なってほしいと言う願いをこめて
つけたのよ。
真子のマは、真実のシンだから……。
ウソをつかないで、いつも、真実……
本当のことを言える女の子に
育ってほしいなぁって、つけたの。」
そう言って、あたしをギュって
抱きしめてくれたんだ。
あたし、ママを悲しませたくないの。
だから、正直な大人になりたい。

あたしは、優しいママと
一緒に寝て、一緒に起きて、
一緒に歯ブラシして、一緒にご飯食べて、
一緒に出かけるの。

ママは、家の近くのスーパーで
お仕事してるの。
それでね、学校から帰って、宿題やって、
お風呂のお掃除とかが終った頃に、
いつも、ママ帰ってくるの。
ママのご飯は、すごく美味しいんだ。
あとね、ママは、あとで見てみて。
すごくすごく美人だよ!
それに、物知りだしね‼
あたしの一番の自慢は、ママなんだ!
そうだ。
クラシックも聴いたりりするんだよ、
あたしのママは。
クラスの女の子たちのママの中で、
クラシックの音楽を聴いているのは、
あたしのママだけだよ。
「ママは、音楽聞いているとね、
落ち着くのよ。」って言う、
素敵な大人なんだ、ママは。
ママみたいな、大人になりたい!

でも、ママにはおもしろいところが、
3つあるんだ。

ひとつめはね、いつも長袖の洋服を
着てるとこ。
今日みたいに、暑い日でも、
長袖を着てるの。
「暑いね。暑いねぇ。」って
言ってんのに、長袖の洋服なんだから、
変でしょ。
「こういう服だとママは落ち着くの。
真子ちゃんみたいな服だと、
ママは、嫌なのよ。」って、前に言ってた。

ふたつめ。ママはスーパーに行く時も、
何かの用事でおでかけする時も、
いつも、伊達メガネって言うのを
かけていくんだ。
ママは「おしゃれのためよ。」と
言ってるけど、あたしは、残念!
だって、似合ってないんだもん‼
あ、これママには、秘密ね!
こう思ってると、ママが分ったら、
ショック受けちゃうかもだから。

あと、ママはでかける時、
いつもマスクをして行くの、絶対。
病気にかからないように
予防してるんだって。
前ね、「真子ちゃんのために
ママは一生懸命働いて、頑張る。
そのためにね、風邪ひいたらダメなの。
だから、ママは、
いつもマスクしてるのよ。」って、
言ってた。

でも、あたし、スゴイ残念なの‼
ママの自慢が、したいの‼
だって、ママはクラスの子のママたちの中で
本当は一番キレイなの‼
あたし、分かってる。絶対に、一番!

でも、授業参観の時も遠足の時も、
マスクして、それと、あの伊達メガネで
来るでしょ。
だから、クラスの子みんな
おかしく思ってる。
あぁー、ちゃんと、ママの顔を見れれば、
みんな分かるし、あたしも、
どんなもんだいなのにぃ‼

あとねぇ、ママはおでかけが
きらいな人なの。
クラスのみんなは、お休みの日、家族で
遠くに車で遊びに行ったり、
遊園地行ったり、動物園行ったりしてる。
でも、うちは、ママが『でぶしょう。』
だから……。
お休みの日とかは、あたしとママは
いつも家の中で色々やるんだ。
近くのビデオ屋さんに、あたしが行って、
ビデオ借りてきて、それを二人で見たりね。
うん、その時はね、よくピザ食べる!
チーズがとろけて、すごく美味しいピザ!

ママは、〔あいのん〕が大好きなの。
だからね、あたしが、お店に行く時ね、
「あいのんが出てるから、これとこれね。」
って、メモをわたしてくる。
あたしは、そういう〔あいのん〕が出てる
大人向けの映画とかドラマ、
本当は好きじゃないけど、
ママが嬉しそうに、見てるから、
良いんだ。
嬉しそうな、ママの顔を、
ヒョイって見るのが、幸せ。
ママ、本当に、嬉しそうで、
楽しそうだから。

ということで、あたしは、あまり遠くに
行ったことないし、ママと遊園地行ったり、
デパート行ったりしたことはないけど、
別に、あたしは悲しくないし、
幸せだって思うよ。

あっ、そうだ!一度だけね、ママと遠くに
おでかけしたことがあったんだ
1年生の時、ママと一緒に、
飛行機のってね、遠~くに住んでる
雪子おばさんに会いに行ったの。
その時ね、あたし、
はじめて飛行機のったの‼
すごかったぁ、大きかったし、
本当に雲の上を飛ぶんだから、驚き!

それでね、おばさん家で、
美味しいカレーを食べて、
おばさんと一緒に山に行って
キレイなお花とってきたり、
おばさん家の犬と散歩したり、
楽しかった!
あとね、みんなで大きな美術館にも行って、
いろんな絵を見たよ。
あたしは、つまんなかったけど、
おばさんとママは楽しそうだった。
でもね、そのあとに、おばさんが
海の目の前にある遊園地に
連れてってくれたの。
観覧車にも乗せてくれたし、
ママが怖いって言ったから、おばさんが
一緒にジェットコースターに
乗ってくれた。
スッゴイ、楽しかた‼

それとね、帰る日ね、おばさん、
おもちゃ屋さんに連れてってくれて、
いっぱいお人形さんとか、
買ってくれたんだ!
あたし、おばさんが大好き。

1年に何回も、おばさんは、
プレゼントを送ってくれるの。
あたしの誕生日、夏休みの時、
あとは、お正月に、おばさんからの
プレゼントが届くんだよ。 
図鑑もらったり、
きれいな洋服もらったり、
素敵な鉛筆入れとかもあったなぁ。

最近はね、「真子ちゃんの足も
大きくなったでしょうから新しい靴を
送るわね。」って書いてるお手紙と、
すご~いおしゃれな靴をおばさんが
くれたの!

ピンク色の靴で、星とか太陽とか
いろんなマークも素敵!
私の宝物なの‼

みどりちゃんも、この靴が欲しくなって、
同じのをママに買ってきてもらったって。
だから、今、あたしとみどりちゃん、
おそろだよ、靴が!
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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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